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図書室で借りた本を返すオーレリア。
エイラとカイルはお城だ。一人でいるのは苦でないが、
つまらない。
こんな事を感じるようになったのは成長なんだろうか?
ノエルが勉強しているのが見えた。
「こんにちは」
話しかけるオーレリア。
「ドレスの件ありがとうございます。何とかなりそうです」
「そう? リリアはやっぱり頼りになるね。隣座る?」
「いえ、私、今日は本を返しに来ただけなので」
お礼を言うと、席から離れるオーレリア。
レックスはもやもやしたまま、図書室に向かっていた。昨夜見かけた事が思い出される。
ノエル様とオーレリアが一緒にいる姿は見たくない。
しかし、図書室でまた見かけたら……なのに、図書室へ向かっているのは、ノックのせいである。
レックスの従者であるノックは婚約パーティーの準備で城へ向かった。
「本借りてて! 今日返却日なの忘れてました! レックス様、代わりに返しておいて下さい!」
従者が主人に自分の用事をさせるとは……まあ、従者というより友達の方が近いしな。
そして、また見てしまった。
ノエルとオーレリアが親しげに話している。今日はリリアもいない。
本を持っているのも忘れて、周り右するレックス。
何でこうタイミングが悪いんだ。
「レックス?」
後ろから呼び止められた。振り向くと図書室から出てきたオーレリアが追いかけてきた。
「レックス、良いところに!」
ニコニコしながら走ってくるオーレリア。
「温室だろ? あと、走らないほうがいい」
レックスはちょっと不機嫌な顔で先に立って歩き出す。
彼女は気付いていないのか、気にしていないのか分からないが、周りの男子生徒はオーレリアを見ている。
他国の姫は注目されるのが定石だし、彼女は美しい。自然と目がいってしまう。
自覚が足りない。
「待ってよ! 怒ってるの?」
追いつくオーレリア。
「怒ってない。ただ、呆れてるだけ」
「……」
終始無言である。連れ立って温室へ入る。
オーレリアが立ち止まる。
「……レックスは何だかんだ言いながら付いてきてくれるから、勝手に嫌じゃないって思ってたの、温室通い付き合わせてごめんなさい」
頭を下げて謝るオーレリア。
レックスがはっとした顔でオーレリアを見る。
「オーレリア、違うんだ。温室に一緒に行くのが嫌なわけじゃない。顔をあげて?」
オーレリアは顔を上げない。
「私、ずっと一人だったから、友達付き合いが上手くなくて……」
声が震えている。
「ごめん。俺、そんなつもりじゃ」
レックスが両手でオーレリアの肩を掴む。
オーレリアが驚いて顔を上げる。涙がうっすら溜まっている。
「ごめん。泣かせた」
レックスが手で涙を拭う。なぜかレックスの方も泣きそうである。
「呆れたって言うのは、オーレリアが男子生徒に見られてるの気付いてなくて、スカートのまま走ったりするから……ちょっとムッとしたっていうか、何で俺が? って話なんだけど」
しどろもどろで伝えるレックス。
「じゃあ、一緒にここに来るのが嫌なわけじゃない?」
「違うよ。ずっと付き合うよ」
「ふふ、よかった」
笑うオーレリア。つられてレックスも笑う。
ちょっと照れ臭くなって、二人とも見つめ合ったまま笑った。
ーーーー
ドレスの採寸は、プロの仕事だった。
その日は、オーレリアの部屋にリリア様ご紹介のドレス職人達が集まった。
「オーレリア姫、それでは測らせていただきます!」
いうが早いか、どんどん測られていく。とても手際がいい集団である。そして、オーレリアは思い知った。パーティーの準備の大変さを。
「ドレスだけ仕立ててもダメです! それに合う髪飾り、アクセサリー、靴! 全て必要です!」
「はっはい!」
圧に押しつぶされそうになりながら、そしてほぼ言われるがままである。
私は押しに弱いのかもしれない。
新たな自分を発見するオーレリアだった。
やっと採寸やら、アクセサリーやらが決まり、食堂へ行く。
「オーレリア様、ドレスの採寸はいかがでしたか?」
リリアがいた。隣にノエルも。
「大変でした。あんな大変な事をリリア様も、エイラも毎回されているのですね……」
「うふふ。私はそれが好きですので全く苦ではないですわ。オーレリア様はあまり好きではないのですね?」
成り行きで一緒に夕飯を食べる三人。
「そうですね。あまりウキウキはしないです。夕飯を食べている今の方が楽しいです」
「オーレリア様は面白いですね!」
微笑むリリア。笑い方も食べ方もお上品である。
「そうだね。レックスが気になるのが分かるな」
ノエルはよく分からないことを言って、一人で納得している。
「ダメですよ、ノエル様。レックス様が気になる娘にちょっかいをかけるのは」
リリアが微笑みながらノエルに注意している。
「リリアには叶わないな」
そう言うノエルは嬉しそうである。
リリアがオーレリアへ目線を移す。
「ノエル様は義弟が好きすぎて構ってるんです。オーレリア様も迷惑だったらそう言ってくださいね」
「いや、けしかけてるのは当たってるかな! 何もしないと取られちゃうって危機感持ってくれないとね!」
ノエルがリリアを見て微笑んでいる。
「お二人は仲良しなんですね」
オーレリアも何だかほっこりする。
「リリアは小さい時から知っているからね」
「お互い大変な立場だからね、協力していかないと」
既に国王と王妃の器である。頭が下がるオーレリアである。
「ただ、レックス様が私を気に掛けるのは、おかしな姫だからです。そんな深い意味はないと思いますが」
オーレリアが口にすると、二人は顔を見合わせた。
「レックスは、幼い頃から王族なんてやっているから、何て言うか達観しているんだ。でも、君の前じゃ普通の青年のようになる。きっと心を開いているんだよ。兄として、そんな関係になっている君を妖精の国に返したくないんだ」
「ノエル様それは……」
リリアが口を挟むが、ノエルが手で制する。
「これからもレックスを頼みたい。返事はしなくていいよ、ただの兄の我儘だ」
「……はい」
オーレリアはどうしたらいいか分からなかった。ノエルはレックスを本気で心配しているのであろう。
リリアは少し心配した表情でオーレリアを見ている。
「あなたは好きにしていいのよ」
彼女はオーレリアを心配してくれているようだ。
「ありがとうございます」
オーレリアはお礼を伝えるのであった。
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