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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第一部

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20/23

20

 図書室で借りた本を返すオーレリア。

 エイラとカイルはお城だ。一人でいるのは苦でないが、


 つまらない。

 こんな事を感じるようになったのは成長なんだろうか?


 ノエルが勉強しているのが見えた。

「こんにちは」

 話しかけるオーレリア。

「ドレスの件ありがとうございます。何とかなりそうです」

「そう? リリアはやっぱり頼りになるね。隣座る?」

「いえ、私、今日は本を返しに来ただけなので」

 お礼を言うと、席から離れるオーレリア。


 レックスはもやもやしたまま、図書室に向かっていた。昨夜見かけた事が思い出される。


 ノエル様とオーレリアが一緒にいる姿は見たくない。


 しかし、図書室でまた見かけたら……なのに、図書室へ向かっているのは、ノックのせいである。

 レックスの従者であるノックは婚約パーティーの準備で城へ向かった。

「本借りてて! 今日返却日なの忘れてました! レックス様、代わりに返しておいて下さい!」


 従者が主人に自分の用事をさせるとは……まあ、従者というより友達の方が近いしな。


 そして、また見てしまった。

 ノエルとオーレリアが親しげに話している。今日はリリアもいない。

 本を持っているのも忘れて、周り右するレックス。


 何でこうタイミングが悪いんだ。


「レックス?」

 後ろから呼び止められた。振り向くと図書室から出てきたオーレリアが追いかけてきた。

「レックス、良いところに!」

 ニコニコしながら走ってくるオーレリア。

「温室だろ? あと、走らないほうがいい」

 レックスはちょっと不機嫌な顔で先に立って歩き出す。

 彼女は気付いていないのか、気にしていないのか分からないが、周りの男子生徒はオーレリアを見ている。

 他国の姫は注目されるのが定石だし、彼女は美しい。自然と目がいってしまう。


 自覚が足りない。


「待ってよ! 怒ってるの?」

 追いつくオーレリア。

「怒ってない。ただ、呆れてるだけ」

「……」

 終始無言である。連れ立って温室へ入る。


 オーレリアが立ち止まる。

「……レックスは何だかんだ言いながら付いてきてくれるから、勝手に嫌じゃないって思ってたの、温室通い付き合わせてごめんなさい」

 頭を下げて謝るオーレリア。


 レックスがはっとした顔でオーレリアを見る。

「オーレリア、違うんだ。温室に一緒に行くのが嫌なわけじゃない。顔をあげて?」

 オーレリアは顔を上げない。

「私、ずっと一人だったから、友達付き合いが上手くなくて……」

 声が震えている。

「ごめん。俺、そんなつもりじゃ」

 レックスが両手でオーレリアの肩を掴む。

 オーレリアが驚いて顔を上げる。涙がうっすら溜まっている。

「ごめん。泣かせた」

 レックスが手で涙を拭う。なぜかレックスの方も泣きそうである。

「呆れたって言うのは、オーレリアが男子生徒に見られてるの気付いてなくて、スカートのまま走ったりするから……ちょっとムッとしたっていうか、何で俺が? って話なんだけど」

 しどろもどろで伝えるレックス。

「じゃあ、一緒にここに来るのが嫌なわけじゃない?」

「違うよ。ずっと付き合うよ」

「ふふ、よかった」

 笑うオーレリア。つられてレックスも笑う。

 ちょっと照れ臭くなって、二人とも見つめ合ったまま笑った。


ーーーー


 ドレスの採寸は、プロの仕事だった。

 その日は、オーレリアの部屋にリリア様ご紹介のドレス職人達が集まった。

「オーレリア姫、それでは測らせていただきます!」

 いうが早いか、どんどん測られていく。とても手際がいい集団である。そして、オーレリアは思い知った。パーティーの準備の大変さを。

「ドレスだけ仕立ててもダメです! それに合う髪飾り、アクセサリー、靴! 全て必要です!」

「はっはい!」

 圧に押しつぶされそうになりながら、そしてほぼ言われるがままである。


 私は押しに弱いのかもしれない。


 新たな自分を発見するオーレリアだった。


 やっと採寸やら、アクセサリーやらが決まり、食堂へ行く。

「オーレリア様、ドレスの採寸はいかがでしたか?」

 リリアがいた。隣にノエルも。

「大変でした。あんな大変な事をリリア様も、エイラも毎回されているのですね……」

「うふふ。私はそれが好きですので全く苦ではないですわ。オーレリア様はあまり好きではないのですね?」

 成り行きで一緒に夕飯を食べる三人。

「そうですね。あまりウキウキはしないです。夕飯を食べている今の方が楽しいです」

「オーレリア様は面白いですね!」

 微笑むリリア。笑い方も食べ方もお上品である。

「そうだね。レックスが気になるのが分かるな」

 ノエルはよく分からないことを言って、一人で納得している。

「ダメですよ、ノエル様。レックス様が気になる娘にちょっかいをかけるのは」

 リリアが微笑みながらノエルに注意している。

「リリアには叶わないな」

 そう言うノエルは嬉しそうである。

 リリアがオーレリアへ目線を移す。

「ノエル様は義弟が好きすぎて構ってるんです。オーレリア様も迷惑だったらそう言ってくださいね」

「いや、けしかけてるのは当たってるかな! 何もしないと取られちゃうって危機感持ってくれないとね!」

 ノエルがリリアを見て微笑んでいる。

「お二人は仲良しなんですね」

 オーレリアも何だかほっこりする。

「リリアは小さい時から知っているからね」

「お互い大変な立場だからね、協力していかないと」

 既に国王と王妃の器である。頭が下がるオーレリアである。

「ただ、レックス様が私を気に掛けるのは、おかしな姫だからです。そんな深い意味はないと思いますが」

 オーレリアが口にすると、二人は顔を見合わせた。

「レックスは、幼い頃から王族なんてやっているから、何て言うか達観しているんだ。でも、君の前じゃ普通の青年のようになる。きっと心を開いているんだよ。兄として、そんな関係になっている君を妖精の国に返したくないんだ」

「ノエル様それは……」

 リリアが口を挟むが、ノエルが手で制する。

「これからもレックスを頼みたい。返事はしなくていいよ、ただの兄の我儘だ」

「……はい」

 オーレリアはどうしたらいいか分からなかった。ノエルはレックスを本気で心配しているのであろう。

 リリアは少し心配した表情でオーレリアを見ている。

「あなたは好きにしていいのよ」

 彼女はオーレリアを心配してくれているようだ。

「ありがとうございます」

 オーレリアはお礼を伝えるのであった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。


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