18
園庭には何故だか王族生徒が集まった。
ノエル、レックス、サン、エイラ、そしてオーレリア。
エイラはサンと話している。
ノエルがオーレリアに気付いて、軽く手を振る。オーレリアは会釈した。
横目でその様子を見ていたレックス。
義兄といつのまに知り合いに?
オーレリアがグレイスを呼び出す。
「おぉ、どうした主人よ?」
グレイスは片手にクッキーを持っている。
お茶してたのかな?
「あの船を木から取りたいのです。かけた魔法の効力を、落とせないかなって思いまして!」
「ふむ。できるぞ。だが、船が落ちぬようにどうにか出来るのか?」
手に持っていたクッキーを口に入れるグレイス。
「そこは私にお任せください」
太陽の国 王子、サンが答える。
「エネルギーを船に注ぎ込みます。動力が回復したら、船の固定を緩めていただければ、また船は空に飛び立てるでしょう」
「承知した」
先生とサン達が話し合う。
グレイスは、どこからともなく菓子の袋を取り出す。
「主人よ食べるか?」
「いいのですか? なら遠慮なく」
こちらはお菓子タイムである。
それを見て吹き出すレックス。
「レックスも食べる?」
オーレリアがクッキーを差し出す。
「いや、ありがとう」
ノエルは驚いた。
レックスが楽しそうに笑っている。あんな顔を見るのは小さい頃以来だ。いつも一線引いているような義弟なのに……
「グレイス様、そろそろお願いしても?」
先生達がおずおずと訊ねる。
「おぉ、時間か」
杖を振ると、船を止めている木全体が揺れて見えた。
木が船から離れて、空へ浮かんでいく。
船には、太陽の国の使者が乗っているようで、そのまま帰国するのである。
サン王子は、地上でエイラとお別れしていた。二人は両手を握りあっている。
「エイラ様、また」
「はい……」
俯くエイラ。
「そんな顔しないでください。また会いにきます」
「はい、お待ちしております」
見つめ合って笑い合う二人。周りは蚊帳の外である。
「主人よ。あの二人はどういう関係だ?」
グレイスがオーレリアに質問する。
「婚約者同士だよ。エイラがこの前、嬉しそうに話してた。もうすぐ婚約パーティーして、正式にお披露目するって」
気乗りしない様子だったエイラが嘘のようである。政略結婚でも、好き同士ならいい話だ。
オーレリアは微笑みながら、二人を見守った。
船が片付き、木も揺れながらまあまあの大きさになった。それでも巨木に変わりはないが。
「すごいねグレイス様は、私がいなくても良かったんじゃないかな……?」
オーレリアは感心している。
「何を言ってるのだ? オーレリアがいるから我がいるのだぞ? そなた、自分がどれだけ優秀か分かってないな」
「私が優秀?」
「そもそも我と対等に話している事が凄いことなのだぞ?」
んーー、それはグレイスが凄いって事にならないか?
ピンときてない様子のオーレリアに苦笑する妖精王。
レックスに耳打ちする。
「早く正式に婚約してしまえ! 妖精の国が出張ってきたら厄介だぞ?」
「んな! そんな事……」
焦るレックス。
やれやれ、二人とも分かってないというか、子どもというか。
「まぁ、頑張れよ」
そう言うとグレイスは光の中に消えた。
「レックスはオーレリア姫と氷の妖精王と、仲が良いんだね?」
レックスに話しかけてきたのは、ノエルである。
「ノエル様、オーレリアとは同じクラスなので」
「お兄ちゃんって呼んでって言ってるのに……姫を呼び捨てなんて、羨ましいな。僕も呼び捨てにしてもいいかい?」
ノエルに話を振られて驚くオーレリア。
「はい。お好きなように呼んでください」
「やった!」
レックスは何だかムカムカした。
「兄さん、そんな事したら婚約者様が怒るのではないですか?」
「ふふ、心配してくれているのかい? それは大丈夫だよ。この国は一夫多妻だからね?」
最後のセリフだけ小さい声で話すノエル。
それは、どういう……?
「レックスがいいなら、オーレリアも僕の婚約者候補にしてもいいって事だよ?」
レックスにだけ聞こえる声でノエルが囁く。
「何を!」
「熱くならないで、例えばの話だから。じゃあね、オーレリア」
颯爽と去っていくノエル。
レックスは後ろ姿を睨んでいた。
義兄は何を考えている?
既に、この国に婚約者がいるというのに。
それに氷の国の気候を変えるには、俺がオーレリアと結婚しないといけないんじゃなかったか?
でも、エイラがサン王子を婿に取れば済む話なのか?
そしたら、義兄はオーレリアを第二王女に……?
レックスは下を向いて、何やら黙り込んでいる。
「レックスどうしたの?」
オーレリアが話しかけても気付かない。
「ねぇ?」服の裾を引っ張る。
「うわっ! なんだよ、びっくりした……」
「ずっとここにいたけど?」
睨むオーレリア。
「ちょっと考え事を……」
「温室の鍵ちょうだい。エイラとヤシの実食べに行くの!」
エイラはまだ船を見送っている。
「はいはい。俺も行っていい?」
「いいけど、レックスって暇なの?」
毎回付いてくるが、そんなに植物が好きなのだろうか?
「暇じゃな……いや、暇なんだ」
暇という事にしておこう。……まだ。
「エイラ、行こう〜」
三人は連れ立って歩いて行った。




