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翌日の朝、オーレリアは温室にいた。
エイラから種を貰ってすぐ、足の速い先生(名前は未だ不明)に、太陽の国の植物を育てたいとお願いすると、すんなりと使用許可がおりたのだ。
授業でたまに使う程度なので、手入れをしてくれるなら、むしろ歓迎との事。
これから毎朝ここに来れる!
もっと早く頼めばよかった!
オーレリアはすこぶるご機嫌、鼻歌混じりである。
太陽の国の植物は、熱い土地に相応しい植物が多かった。「プルメリア」「ココヤシ」「サボテン」……
ココヤシは実があるから、放課後取りにこよう! どんな味だろう? サボテンは花が咲いた。花は初めて見た!
これは楽しい。
「オーレリア、そろそろ授業の時間だぞ?」
レックスが呼んでいる。
「うんーー、もうちょっと……」
「いやいや、間に合わなくなる!」
渋々立ち上がるオーレリア。
「やっぱり、鍵、私が預かるって、少しでも長くここに居たいし、毎回レックスに頼むのもめんど……悪いし」
「今面倒って言おうとしただろ? ダメ、俺が管理するって決まったんだから。それに、オーレリアに持たせたら温室から出てこなくなるだろ?」
「そんなこと……」
あるかも知れない。
「ほら行くぞ」
レックスがオーレリアの手を掴む。
「でもレックスはいいの? 私とここに入り浸ってたら、またコソコソ言われるよ?」
「そんなの言わせとけばいい」
前を向いたまま、手は離さない。
予鈴が鳴る。
「やばい!」「走ろう!」
二人は教室へと駆け出した。
ーーーー
授業終わり、エイラと共に図書室へと向かう。エイラは本が好きらしい。
「どんな本が好きなの?」
オーレリアが訊ねると、エイラは水を得た魚の如く話し始めた。
「私、何でも読むんだけどね、今一番好きなのはホラーなの! あのゾクゾクする感じがいいのよね! 絶対にそんな事ないって思うんだけど、ぶわって鳥肌が立つ感じとか、後ろが気になる感じが、もう楽しくて……」
「ほぇ〜」
よく話すと思っていたけど、いつも以上だ。そして、ホラーの楽しさはよく伝わってきた。
「私、呪文の本でも借りようかな!」
エイラと別れて本棚を見上げる。
あの、上にある本、気になるな……取れるかな?
オーレリアは背伸びして手を伸ばす。足が吊りそうだが……
「無理、か」
膝に手を置き、息をつく。
「この本が欲しかったの?」
上から声が降ってきた。
顔を上げると、長身の銀髪姿の男子生徒が本を持っている。
「どうぞ」
わざわざ取ってくれたらしい。
「ありがとうございます」
お礼を言うオーレリア。
どこかで見た事あるような……?
「お兄様? どうしたの?」
エイラが男子生徒に話しかける。
お兄様?
「届かない本を取っただけさ。この方がオーレリア姫か」
エイラの兄って、第一王子!
「しっ失礼しました。私はオーレリア・セイブル、妖精の国から参りました。エイラ様とは仲良くさせていただいております」
急いで挨拶をする。この国の第一王子ということは、将来の国王という事だ。
「僕はノエル・ラグーナ、この国の王子であり、エイラの兄です。オーレリア姫、そんなに気を遣わなくて大丈夫ですよ」
ノエルはそう言うと、少し垂れ目な優しい微笑みを浮かべた。
うむ、エイラに似ている。
「この前の、太陽の船を止めた魔法は凄かった! ぜひこの国で、その力を発揮してほしいね!」
それ、国王も言ってなかったっけ? やはり家族である。
「お褒めいただき、光栄です」
オーレリアは軽く頭を下げて下げる。
「そんなに固くならないでほしいな。僕の事は、友達のお兄ちゃん的位置付けでお願いしたい」
ノエルがオーレリアを覗き込む。
「そうですか? 分かりました」
「よかった! それじゃあ、また」
手を振って去っていく。案外フレンドリーなタイプらしい。
「エイラと似てるね!」
「うふふ、よく言われるわ」
図書室から出た所で、オーレリアは思い出した。
「そいえば、ヤシの実食べてみようと思ってたんだ! エイラも食べる?」
「いいの! 食べてみたい」
「鍵借りに行こう! レックスどこかな?」
「レックスが鍵管理してるの?」
「うん。決めたんだから自分がやるって」
「ふぅーん?」何でも達観しているレックスが?
廊下を歩いていると、職員室の入り口でレース先生に遭った。
「オーレリアさん、丁度いい所に。ちょっといい? お願いがあるんだけど」
レース先生が声をかけて来た。
「はい。何でしょう……?」
初日にもレース先生の呼び出しを受けて、大変な緊張をしたオーレリアは警戒している。
「そんなに身構えなくても大丈夫よ? 林の辺りをね、ちょっと直してほしくて……」
そういえば……
太陽の国の船を木で捕まえた後、オーレリアも力を使い果たしてしまったし、あの船はエネルギーがなくて動けない。
よって、そのままの状態でオブジェになっていたのである。
「そろそろあの船、太陽の国へ返したいんだけど、木の力が強すぎて取れないのよね」
そういえば、グレイスが強力に術をかけていた。
「分かりました」
ヤシの実は後回しになった。




