15
「何かが向かってくるぞ!」「さっきの龍じゃないな!」「あれは木か?」
エイラが目を開けると、木々が船に向かって伸びてくるのが見えた。
あれは、きっと、オーレリアだわ!
弾かれていく木を見つめ、オーレリアが助けようとしている事に気付く。
エイラは天に祈った。
「手伝え! か」
グレイスは絡め取ろうとしている木へ飛び移り、杖を振る。木々が伝染して光り輝いていく。
木々が再び船へと向かう。
船を破壊しないよう、そっと、でも迅速に伸びる。
止まって!
オーレリアは強く願う。
願いが届いたのか、覆った木々は弾かれる事なく船を止めた。
良かった!
グレイスが魔法で木を強化してくれたおかげだ。安心したオーレリアは、意識が遠くなる……
「止まったぞ!」「木々が絡まってる!」「やったー! 助かった!」
乗組員達が歓声を上げている。
船も大きな損傷はない。
エイラとサンは繋いでいた手を強く握りしめた。
レックスは龍から一部始終を見ていた。
とんでもない魔力だ。
彼女の力をこの国に留めておきたいと、昨日父親から話があった。召喚したのが、妖精の王だったことも頷ける。
気候を安定させる為にも、俺との婚約は絶対だと念を押された。オーレリアも詳細を知っていると言っていたが……
こんな事をできる力、国が欲しがるに決まっているな。
太い木の中に、船が突っ込んでいるような見た目になっている。がっしり船を掴んでいて落ちそうにない。
氷の妖精王は主人の元へ戻る。
オーレリアは力を使い果たして、倒れていた。
「こちらも中々どうして」
グレイスは苦笑し、オーレリアを抱き抱えると、林から校舎の方へと飛んだ。
船の中も、学園の中も大騒ぎである。
外には自分達とレックス達、一部の先生しかいない。
迅速な避難のおかげだ。
グレイスがオーレリアを抱えて地上へ降りる。
「レックス!」
グレイスが呼びかける。
「はい! 倒れているのはオーレリアですか?」
「ああ。眠っているだけだ。力を使い果たしている」
「それは、こんな魔力えばそうなりますよ……」
レックスはオーレリアをじっと見つめた。
「オーレリアを頼めるか?」
「はい!」
グレイスはレックスにオーレリアを任せて、また空へ飛ぶ。
「どちらへ?」
ノックが訊ねる。
「船にいる者達を地上へ移動させる。オーレリアに手伝えと言われたからな……最後まで働くとする」
グレイスは船に飛び移る。
「我が名は氷の妖精王、グレイス。今から地上へ移動させよう。こちらへ参られよ」
「氷の妖精王! オーレリアは?」
「エイラか? オーレリアは力を使い果たして眠っている。無事で何よりだ。何かあったら主人が取り乱すだろうからな!」
グレイスは、船の乗組員全員を魔法で地上へと移動させた。移動魔法は、その場その場を繋ぐ魔法だ。船を止めたからこそ可能になった。
私一人であれば、全て凍らせていただろう。その方が手っ取り早い。命の保障はできないが。
主人が必死だったからな……
「全員無事で何よりだ」
グレイスは光を残して消えた。
レックスは、腕の中で眠るオーレリアを見つめた。ここは寒い。風邪を引く前に室内に入りたい。
この騒ぎの中、学園に行くのは……いっそ移動魔法を使ってしまうか?
「ノック、彼女を城へ連れて行くよ」
「承知しまし……え? お城?」
レックスはオーレリアと消えた。
氷の城に突然現れた第二王子に、周りは驚いたようだったが、すぐに準備をしてくれた。
客間に通され、オーレリアはベッドでねむっている。
魔力を使い果たすなんて、無茶をする。
……彼女は私との婚約をどう思っただろう?
彼女は起きる気配がない。
船の様子も気になるが、オーレリアの方が気になる。
ベッドの横の椅子に座り、婚約者を見つめるレックスであった。
ーーー
起きた時、知らない天井だと焦る。
起きあがろうとして、体がとても重い事にきづいた。
横を見るとレックスが眠そうだ。
「ここは?……」
レックスが目を開け、オーレリアを見る。
「気が付いたか。魔力はもう戻った?」
「魔力……まだかな。エイラ様は?」
「全員無事だ。オーレリアのおかげだよ! ありがとう」
「レックスも、龍に乗っててカッコよかった」
微笑むオーレリア。まだ力が入らない。
「そっそうか!」
急に褒められて焦るレックス。
「ここはどこ?」
とても豪華な部屋である。
「氷の城だよ。移動魔法で行ける場所がここしかなくて……」
鼻を掻くレックス。
「お城! 恐れ多い……」
「そんな事ないって、まだ起き上がれないだろ? 明日は学園も臨時休校だし、ゆっくり休めよ。俺も城にいるから、また明日様子見に来るな!」
言うだけ言って、レックスは立ち上がり、オーレリアの頭を撫でた。
「よく頑張ったな、オーレリア」
優しく笑うと部屋から出て行った。入れ違いにメイド達が入ってくる。
「お手伝いをさせていただきます。宜しくお願いします」
居心地が悪い。
これじゃあ本当にお姫様じゃないか!
顔が赤いのを布団で隠しながら、メイド達に挨拶を返すオーレリアであった
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