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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第一部

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13/24

13

 エイラは太陽の国が誇る船の前に立っていた。

「大きい〜!」

 国王と王妃が微笑んでいる。

 海に浮かぶ船のような形だが、プロペラが沢山付いている。民家が三つは余裕で入ってしまうであろう大きさだ。

「この船が空を飛ぶんですね!」

 カイルも感嘆の声をあげ、見上げている。

「動力源は何なのですか?」

 エイラが質問する。

「太陽の光です。光を溜めて飛べる、この国らしいエネルギーですよ」

 船の乗組員らしき人物が教えてくれる。

「それは素晴らしいですわ」


「エイラ姫、今回は息子が申し訳ございませんでした」

 王妃がコソッと謝る。

「いえ、私は視察ですので……」

「公にはそうですけど、あなたも分かっていたでしょう? でも、気を悪くしないでくださいね、婚約が嫌なわけではないみたいだから……」

「嫌じゃない?」

「王妃、それくらいで……」

 従者が王妃を促す。

「分かったわ」

「エイラ様、参りますよ」

 カイルが振り向いて呼んでいる。

 エイラは国王と王妃に一礼し、船に乗り込んだ。


 船は外が見える甲板。中には操縦室、客室と別れていた。

「エイラ様、どうせなら甲板でいい景色を見ましょうよ」

 カイルがはしゃいでいる。

 三メートル近い木から飛び降りる男だ。高い所が怖いなんて発想はない。

「……そうね、皆さん見送ってくださってるし、少しだけなら」

 プロペラが一斉に回る。

 船が高度を上げ始める。

 国王や王妃、兵達が地上で手を振っている。演奏も何やらしてくれているようだが、高所恐怖症のエイラは何も耳に入らない。

 笑顔を貼り付けて手を振る。手すりに捕まった左手は、これでもかと強く握られている。

 冷や汗が出てきた。

 地上の人物が豆粒くらいになった所で、後ろを向く。

「カイル、私中に入るわ」

 周りに気付かれないよう、声が震えないよう気をつける。

「分かりました! 部屋は……」

「エイラ様、私がお部屋へご案内致しましょう」

 背の高い兵が跪く。

「あなたは、昨日の」

 庭を案内してくれた兵だ。

「さぁ、お手を」

 ナチュラルな動作はとても紳士的である。自然に手を出してエスコートされる。

「ありがとうございます」

 微笑むエイラ。顔がこわばらないように意識する。


「こちらがお部屋です」

 船の中に入ると、エイラはそっと息をつく。

 部屋は船の奥の、おそらく一番豪華な部屋だ。 

「分かりました。ご案内ありがとうございました」

 エイラが優雅に一礼する。

 すると、兵は後ろ手にドアを閉め、兜を脱いだ。銀色の短髪が現れる。こちらを見る瞳は赤である。

「エイラ様、申し遅れました。私、太陽の国王子、サン・アンリオと申します」

 礼をしてエイラに近付くと、手を取る。

「こちらにお掛けください。先程から顔色が悪いですよ? もしかして高い所が怖いのでは?」

 急に婚約者だと名乗られ、高所が怖かったのを見破られ、エイラは驚きで声も出ない。言われるがまま椅子へと座る。

「急にすみません。大勢の前で怖がっているのを指摘するのは良くないでしょうし、でも、あなたが無理しているのを黙って見ている事もできず」

「……いえ、ご心配ありがとうございます」

 エイラは頭を下げる。


 王族がこの船を怖がる事は、体裁上よくない。この婚約者は私の事を考えて動いてくれたのだ。


 エイラが考えている間に、水を持ってきてくれた。

「お水です。今私も同じ水差しから飲みましたが、問題ないようです」

 毒味までしてくれたらしい。

「ありがとうございます」

 エイラは水を飲む。少し落ち着いた。

「大丈夫ですか?」

 サンがエイラの顔を覗き込む。心配そうな顔をしている。

「ええ、落ち着きました。バレないように振る舞っていたつもりだったんですが……」

 下を向くエイラ。

「私以外は気付いていないと思います」

 サンは頷く。

「そうですか?」

「はい。私は貴方を見ていましたので、気付いただけですよ」

「え?」

「あ、いや! ごほんっ。とにかく、落ち着いて良かったです」

 サンが笑う。昨日と同じ優しい笑顔だった。

 エイラの顔が赤くなる。


「サン様はどうして兵に紛れていたんですか?」

 エイラは意地悪く聞いてみた。

「本当に失礼を。申し訳ございませんでした。婚約者が来ると聞いて、自分に結婚などまだ早いと……逃げておりました。しかし、エイラ様が船から逃げずにいたのを見て、自分の子どもっぽさが恥ずかしくなりました」

 下を向くサン。

「いいです。気持ちは分かります。結婚は私もまだ想像できません」

 エイラが微笑む。下を向いて続ける。

「私からお父様へ、婚約のお断りを進言致します」

 何故だか少し胸が痛くなった。

「それはなりません!」

 サンがエイラの両手を握る。

「へ?」

 エイラが顔を上げると、真剣な表情でサンがこちらを見ている。

「私は、貴方様に惚れたのです。婚約解消など、断じてお断りします!」

 呆然とするエイラ。

 意味がわかり、顔がまた赤くなる。

 サンも耳が赤い。

「えっと……」

 サンはエイラに跪く、

「私と正式に婚約していただけますか?」

 二人は見つめ合う。

「……はい」


 遅れて来たカイルが見たのは、手を繋いで笑い合う二人だった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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