12
オーレリアは窓から星を見ていた。
それというのも、夕方、氷の妖精王が召喚していないのに、突然現れたのである。
「よぉ、主人」
手を挙げるグレイスは、相変わらず偉そうだ。白い髪の毛、白い羽根、そして美しい。
周りの生徒が注目する。
図書室で勉強中に現れた氷の妖精王、場違いである。
「わぁ! あれが氷の妖精王!」「美しい!」「すごいかっこいいわっ」
「グレイス様、突然どうされたのですか?」
こんな人の多い所に出てきて、迷惑である。
「主人にいい事教えようと思ったのだ」
腕を組んで空中に浮かんでいる。
ざわざわし始めた。場所を変えた方が良さそうだ。
広げていた宿題を急いでしまうオーレリア。
「グレイス様、出ましょう!」
図書室から出て、人のいない方へと早足で進む。廊下の端で立ち止まる。
「この辺なら人もいないですね! それで、どうしたんです?」
「わざわざこんな所まで来なくとも。我は気にしないぞ?」
「私が気にします」
手を挙げるオーレリア。
「そうか、肝に銘じておく。で、今日な、オーロラが見られるぞ」
「オーロラ! すごい! 本当ですか?」
まだ見た事がない自然現象である。妖精の国だと見られなかった。
「何時に? どの角度で?」
圧に少し距離を取るグレイス。
「夜中だ。十一時くらいか? 角度は月の側から出てくるようだ」
「へぇ〜! グレイス様はそんな事もわかるんですね!」
目を輝かせるオーレリア。
「まあな。この国の自然現象については大体分かるぞ!」
胸を張る。意外と褒めて欲しいタイプなのかもしれない。
「教えてくれて、ありがとうございます!」
「妖精の間では、オーロラを恋人と見ると、幸せになれるという言い伝えがある。主人も誘うといい」
そう言うと光を輝かせて消えた。
マイペースな妖精王である。
「オーレリア! 大丈夫か?」
レックスがどこからか走ってきた。肩で息をしている。
「大丈夫とは?」
ポカンとするオーレリアである。どちらかといえば、レックスの方が大丈夫じゃなさそうだ。
「あれ? さっき氷の妖精王が俺の部屋に現れて、オーレリアの所へ急げって……」
寮から走ってきたのか! けっこうな距離だ。
「私は何も危険な事はないから……遊ばれた?」
最後は小さな声になる。
グレイスならやりそうだ。
「そっか! ふーーっ」
大きく息を吐くレックス。
さすがに怒りそうだ。
「レックス、ごめ……」
「よかったーー!」
大きな声で遮られる。
「え?」
「いや、なんかあったのかと思ったから! 何もないならよかったよ」
レックスは笑っている。
「……怒らないの?」
何故笑っていられるのだろう?
「怒る? あぁ、そうだな。遊ばれたのは怒る所か。でも安心が勝っちゃって、怒る気失せた」
そう言うとレックスは腰をおろす。
そんな彼をまじまじと見てしまう。
「……レックスって変だね」
「え? ひどっ! 心配して走ってきた人に言う言葉じゃない」
心配? 私を?
オーレリアはそれに気付いて驚いた。私の心配をして走ってきたのか……
これはお礼をするところなのか?
「あ、ありがとう?」
「どう致しまして?」
二人は顔を見合わせる。
「ぷっ! 変なの」
「ふふ、そうだな」
笑い合う二人を夕陽が照らす。
「レックス帰ってたんだね、家に泊まらなかったの?」
「あぁ。城から学園近いし、寮のが気楽でいいからな、それに……」
オーレリアをチラっと見る。目が合うがすぐ逸らすレックス。
「ん?」
「いや……氷の妖精王は、なんで俺にオーレリアの所へ急げなんて言ったんだろ?」
「……オーロラ?」
まさか、オーロラをレックスと見ろという事だろうか?
「何か言った?」
「うん、グレイスが教えてくれたんだけど、今日オーロラが出るんだって」
「おぉ! 珍しいな! 何時に? どの位置だ?」
さっきの自分と同じ質問をするレックス。
「夜十一時頃に、月の側だって! 私初めてみるの! 楽しみ〜」
話しているうちに、またテンションが上がる。瞳を煌めかせながら話す。
「ふふ、オーレリアは楽しそうでいいな」
「そう? 絶対見なきゃね! 寝ないようにしないと!」
「……一緒に見るか?」
前を向いたまま話すレックス。
「ん? 二人で?」
「俺が寝ないように見張っといてやれるぞ」
なるほど!
「いいよ。どこで見る?」
その答えに拍子抜けしたのか、レックスがオーレリアをみる。
「え?」
「建物の中がいいけど、そんな時間に校舎開いてないよね?」
「まぁ……」
考え込む二人。で、結局ーー
「ノック起きろ! そろそろ見える時間だ!」
レックスが同室のノックを起こしている。
「僕オーロラ別にいいですよ。夜勤の時に見た事あるし……」
そう言うと従者はまた眠りにつく。
ため息をつき、一人窓から月を見る。
外での観察は、真面目に凍ってしまうと却下。校舎は鍵がかかっていて入れない。
見る場所が思いつかず、それぞれ部屋から見ることで落ち着いた。
オーレリア起きてるかな……?
妖精の国の姫の事を考える。
金の髪に金の瞳。初めて見た時、妖精そのものだと思った。気になって隣の席に座ったのだ。
自由に好きな事をしている。周りの目は二の次、肩書きに動じない、今まで会ったどの姫とも違う。彼女は面白い。
オーロラが急に現れた。
「出た!」
オーレリアは大興奮である。楽しみで眠くもならなかった。
次々に色が変わっていく。ゆらめくカーテンのようだ。大きく広がっていく。
「わぁ……」
目が離せない。
レックスも見てるかな?
オーロラが消えるまで、二人はそれぞれ窓の外を見つめていた。
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