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銀河魔導機戦記 〜断罪された悪役令嬢とともに、最強魔導機で銀河を統一する物語〜  作者: 蒼井 halu
第一章 金狼と魔導機アリエス

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044.

ガルガンチュア要塞の内部では、最悪の事態が起ころうとしていた。

ギルベルトは、王国軍の技術士官を尋問し、要塞防衛施設を復旧させようとしていたのである。共和国軍の内部の軍人は、普段であれば有能であったが、レイディアントとアレクシスの魔力に充てられ、動揺していた。


ガルガンチュア要塞内部にある拘束室には、ガルガンチュア要塞奪取作戦で共和国軍の捕虜となった王国軍将校たちが収容されていた。王国軍の多くの将校は、要塞駐留艦隊ブラッドリー准将に負けずに劣らずの無能である。グランデール准将は、ギャンブルや酒に依存しており、多くの王国軍将校は自らの任務は他者がやるものとして任務を放り投げていたため、王国軍内部のことを何も知らないものばかりであった。


だが、捕虜となった将官の中には、全員が無能であったわけではない。無能のフリをして捕まっていたオルグレン大佐は、少なくとも無能ではなかった。オルグレン大佐は、敗北の責任と屈辱を骨の髄まで噛みしめていたのである。


レイディアントと同様、オルグレン大佐は、ガルガンチュア要塞のハードウェアには問題なくとも、運用面には問題あると認識している一人であった。もし、レイディアントとオルグレン大佐が出会っていれば、互いに共感して、ガルガンチュア要塞を事前に立て直すことができたかもしれないが、その機会はなかった。二人が出会わなかったからこそ、ガルガンチュア要塞は無能が運用し続けたと言えるのかもしれない。


オルグレン大佐は、要塞防衛施設のことを聞かれても、無能のフリをして知らないフリをした。そればかりではなく、他の無能な将官を見習って、どうしてよいか分からないと狼狽えた演技を続けていた。


レイディアントとアレクシスの戦いの余波により、要塞に振動が走る。ただでさえ、一部が完全に崩壊したいた要塞の施設は、より崩壊区画が広がってしまった。


オルグレン大佐は、特殊部隊に在籍していたことがあり、レイディアントとアレクシスの魔力に動揺しても、すぐに心を立て直していたのである。レイディアントとアレクシスの戦いは、共和国軍人に動揺を与え、オルグレン大佐がいる将官の拘束室への監視の目がわずかに緩んだ。


オルグレン大佐は、そのわずかに緩んだ機会を見逃さなかった。オルグレン大佐は、特殊部隊で培った経験を活かし、自身に嵌められた電子手錠から両手を抜け出し拘束が解ける。オルグレン大佐の手首の皮は裂け、血が流れていても、表情は一切変えない。


「オルグレン大佐准、何をする……?」

「ガルガンチュア要塞を共和国に渡すわけにはいきません。」

「まさか!やめたまえ!共和国軍だけでなく、我々の命すらも危うくなる。」

「死ねば本望でしょう。」

「誰か、この男を止めてくれっ!」


共和国軍人は、王国軍人同士が言い争っていると勘違いした。まさか、オルグレン大佐が、拘束室の天井に移動し、配管を通じて拘束室からいなかなっているなどと思いもしない。


王国軍の捕虜が多く、複数名を同じ拘束室で収監しており、共和国軍が収監人数の人数確認を怠ったことにより、オルグレン大佐は拘束室から抜け出せた。さらにな、要塞防衛施設を至急復旧させるために、王国軍の技術者達が何人も働いていたのである。王国軍人が、要塞内を歩いていても、何も違和感をもたれなかった。いや、通常であれば違和感をもつはずだが、オルグレン大佐が自然体であったことや、共和国軍が動揺していたことによりオルグレン大佐の行動を止めることができなかった。


オルグレン大佐が向かう先には、ガルガンチュア要塞の自爆装置がある施設。不測の事態に備えた最終防衛施設であり、使われることは想定されていないものの、用意された施設である。


要塞を自爆させるためには、複数人の認証コードが必要であるが、王国軍の将官達は、パスコードを全て使い回ししており、オルグレン大佐は全員分のパスコード知っていた。


共和国軍も、ガルガンチュア要塞に自爆装置があることを知ってはいたものの、複数人のパスコードが必要であり、その一人が要塞駐留艦隊にいるブラッドリー准将であるため、使われることなどあり得ないと思い込んでしまった装置である。もし、王国軍の将官が、まともな軍人が一人でもいれば、起こり得ない事態であった。


オルグレン大佐は、狂気の心に支配されていた。

その狂気の心は、ガルガンチュア要塞の外で戦っているレイディアントもアレクシスは感づいているものの、何もすることができない。


(まさか…。)

(ありえるのか!?)


アレクシスは、無茶を承知で、共和国軍に通信する。


「何者かが、ガルガンチュア要塞を自爆させようとしている!くっ!」

「隙を見せるとは!」


レイディアントとアレクシスの差は、ほとんどなかった。だが、アレクシスが共和国軍へ通信するために意識をレイディアントから少しだけ離したことにより、一気にレイディアント対アレクシスの戦いは、レイディアント側に傾いたのである。


そんな状況とは知っても知らなくても、オルグレン大佐には関係ない。オルグレン大佐は、共和国軍兵を背後から倒し、奪った魔導銃で通路を一気に走る。ようやく共和国軍は事態を飲み込み、警報を鳴らし、共和国軍がオルグレン大佐を追う。共和国軍兵は、オルグレン大佐を見つけると、魔導銃を放ち、オルグレン大佐の肩や膝を命中する。しかし、オルグレン大佐は止まらない。


オルグレン大佐は、制御室に入るとドアに鍵をかけ閉じこもり、急いで自爆装置システムを起動させる。制御室の外から魔導銃が放たれ続け、ドアが壊されると、オルグレン大佐は既に全員分の自爆装置のパスコードの入力を終えていた。


共和国軍は、この時点でオルグレン大佐が何をしようとしているかをようやく理解した。オルグレン大佐が見ていた画面には、ガルガンチュア要塞の自爆の文字が出ていたのである。


「やめろっ!!」


共和国軍の魔導銃が、オルグレン大佐の胸を撃ち抜く。だが、オルグレン大佐は、意識を手放す前に、最後のボタンを押した。


「王国に……栄光あれ……!」


それが、オルグレン大佐の最後の言葉だった。


「ガルガンチュア要塞の自爆に移行します。自爆まで、残り1200秒。」


自爆シークエンス開始される。

ガルガンチュア要塞の全システムで、自爆開始のアナウンスが流れ、警報が鳴り響く。


共和国軍司令部は、大混乱に陥った。


「自爆解除を試みろっ!」

「王国軍士官を連れてこいっ!」


自爆解除を試みる技術士官が端末へ殺到する。

すぐに、王国軍士官に暴行という名の尋問が加わるが、王国軍士官は自爆解除の方法など知らなかった。王国軍が築いた難攻不落のガルガンチュア要塞は、システムは優秀な人材が作っており、外部からの解除を困難にさせていた。外部から解除させるためには、自爆を起動させるための面々のパスコードが必要であり、要塞の外部にいる要塞駐留艦隊ブラッドリー准将へ尋問することは不可能であったため、自爆を停止させることは不可能だったのである。


やがて、共和国軍人の技術士官は決断した。


「自爆解除はできません!」

「自爆まで、残り十五分です!』」


ギルベルト元帥は報告を聞き、静かに目を閉じた。


「総員退去する。ガルガンチュア要塞を放棄する。」


ギルベルト元帥は、即断した。

共和国軍が奪取した難攻不落のガルガンチュア要塞を失うことを惜しむ暇もないのである。ギルベルト元帥が壮大な戦略のもとに実行したガルガンチュア要塞奪取作戦は、失敗に終わった。もはや、ガルガンチュア要塞を放棄し、共和国軍兵を救うしか手立てはなかった。


「捕虜にした王国軍兵はいかがしましょうか?」

「脱出させてやれ。無意味に命を失う必要はあるまい。」


ギルベルト元帥が良識的であったからこそ、無駄に失われる命は減った。このことが、後に失うはずだった命なのだから散っても構わないという王国の王太子ルシオンの身勝手な論理で、王国軍による共和国大侵攻を引き起こすことになるのだが、ギルベルト元帥は人として捕虜の王国軍兵を助けることにしたのだ。


ガルガンチュア要塞の異変に、レイディアントとアレクシスは、すぐに気付いた。激突する寸前だった新型魔導機アリエスと新型魔導機レオは、ガルガンチュア要塞から膨れ上がる魔力と、要塞内部の人々のパニックを感じ、戦うことをやめたのである。


「ガルガンチュア要塞が自爆するようです。」

「馬鹿な。内部に大勢の共和国軍人や王国軍人、民間の王国人がいるんだぞ!」

「仕方ありません。」


レイディアントは、迷わず動く。

新型魔導機アリエスをガルガンチュア要塞の外壁部へ移動させ、アリエスの六翼が要塞のブロックを壊し始める。


「何をしている!いや、そういうことか!」

「ガルガンチュア要塞は、複数のブロックから成り立っています。区画をガルガンチュア要塞から切離し、区画ごとガルガンチュア要塞から離します。」

「ガルガンチュア要塞のデータを送ってくれ!私も行う!」

「かしこまりました。」


アレクシスは、レイディアントからガルガンチュア要塞の区画図の提供を受けると、すぐさまレイディアントと同じ行動に移る。


レイディアントもアレクシスも、王国軍も共和国軍も、分け隔てなく助けるために動いた。先程まで殺し合っていた二人が、協力し合って、人助けを行う。


セレスティアは、レイディアントが何をしようとしているかをすぐに察し、試造星帆戦艦ルミナス・ヴェールの艦長席から、王国軍と共和国軍の全軍に呼びかけた。


「私の名は、セレスティア・ヴァレンタイン。ヴァレンタイン公爵の娘であり、現サヴォア準男爵であります。王国軍、共和国軍、全ての軍人に伝えます。ガルガンチュア要塞は、まもなく自爆します。無駄に命を落とす必要などありません!敵味方関係なく、救助を!脱出後は、D78エリア方面へと向かって下さい!」


セレスティアの言葉は、両軍の心を動かすには充分だった。王国軍艦隊と共和国軍艦隊は、ガルガンチュア要塞から脱出しようとする人達を、一人でも多くの命を助けるために救助に入る。


「こちら、共和国軍元帥であるギルベルトである。理性ある王国軍指揮官に感謝する。安心して欲しい。捕虜となった王国軍も脱出させるために動いている。」

「感謝します。一人でも多くの人を助けましょう。」


レイディアントとアレクシスが切り離したブロックに、各戦艦はワイヤーをつけ、要塞から離していく。


艦隊に乗り込めない人達は、戦艦のワイヤーに捕まり、宇宙空間へと脱出する。


王国軍の何名かは、ガルガンチュア要塞と命を共にすると脱出を断り残っていくが、説得する時間もない。可能な限り、ガルガンチュア要塞から脱出はできた。後は、爆発に備え、離れるだけである。


「ガルガンチュア要塞、爆発します!」

「総員、爆発に備えろっ!」


各戦艦は、ワイヤーで人やブロックを引っ張ってしまっており、魔導障壁が張れない。そのため、衝撃波をそのまま受けるしかないため、全力で離れていく。


レイディアントとアレクシスは、最後方に位置した。レイディアントは、新型魔導機アリエスの六曜を全方向へ飛ばし、巨大な魔導障壁を張る。アレクシスは、レイディアントの作った魔導障壁に魔力を供給し、二人が持てる力の全てを使った魔導障壁を張った。


「全力です!」

「守るぞっ!」


そして、ついにガルガンチュア要塞自爆のタイムリミットが訪れた。


「ガルガンチュア要塞、爆発するぞ!」


ガルガンチュア要塞に光が集まる。

一瞬の空白の後、光が溢れ出し、王国からも共和国からも見えるほどの、さながら星が終わる瞬間のような大爆発を起こした。


「守ってみせる!」

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」


レイディアントもアレクシスも、光に飲まれていく。


「レイディアント様っ!」

「アレクシス様っ!」


光が収まると、レイディアントとアレクシスが張った魔導障壁以外のエリアは全て吹き飛んだが、脱出できた人達は、爆発の余波に巻き込まれることなく助かった。


炉心連鎖崩壊まで一分。ギルベルトの両軍撤退の回線が宙域へ響く。


「生き残ったのか…?」

「やった、やったぞ!」


各戦艦にいた王国軍と共和国軍は、互いに殺し合っていたはずなのに手を握った喜び合う。


レイディアントもアレクシスも不思議な気持ちであった。王国軍も共和国軍も、殺し合っていた両軍が同じ目的のために助け合い、手を取り合うことができるのだ。戦うことの意味を二人は考えて仕方なかった。


王国軍と共和国軍は、互いに助け合った者達を互いの戦艦に乗せ換える。途中で、王国軍の捕虜をどうするかの問題が起こったが、ブラッドリー准将は、ライバルが捕虜のままの方が自身の出世につながると考え、スムーズに捕虜は共和国軍のままへと決まっていった。


レイディアントとアレクシスは、互いに魔導機の中で対峙する。


「協力、感謝します。」

「こちらこそ、感謝する。」


二人の間に奇妙な沈黙が訪れていた。

殺し合った二人であるが、何のための戦いであったのか答えを見いだせないのである。


戦場の天才レイディアント、戦術の天才アレクシスではあるが、二人とも戦争の無意味さを感じ初めていた。だが、軍人である以上は何も言えなかった。


「また、どこかで。」

「あぁ、いずれどこで。」


レイディアントとアレクシスは、離れていく。

願わくば、戦場以外の場所で会えたらと願う。だが、歴史は、やり最悪な大規模会戦で二人を出会わせることになる。だが、今の二人は、戦争の無意味さを知り、戦うことを止めたのだった。


王国軍が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞。共和国軍がガルガンチュア要塞を奪取し、王国軍がガルガンチュア要塞を再奪取しようとした要塞。王国軍と共和国軍の双方が血を流し続けた要塞は、文字通り、完全に消滅した。


王国軍が築き上げた誇り、共和国軍が奪った栄誉、互いの戦果も、互いの失策も、互いの怨恨も、全てがガルガンチュア要塞とともに過去のものへと消え去った。


ガルガンチュア要塞奪取作戦。

この戦いに、勝者はいない。

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