043.レイディアントVSアレクシス(挿絵あり)
新型魔導機アリエスと、魔導機レオ。
対峙した二対の魔導機は、互いに魔力をぶつけ合う。二対の魔力は、激しく火花をまき散らし、戦場全体を包みこんでいく。
王国軍艦隊と共和国軍艦隊、魔導機タウロスを操縦するリーチェ、イェーガー、ファルコン傭兵団の面々も、思わず止まってしまった。それほどの、魔力の嵐が戦場を覆っていたのである。
レイディアントは、自身の魔力が飛躍的に上がっていることを自覚していただけに、アレクシスが同じ領域にいることに驚く。
(これが、本気の銀獅子アレクシス・アークライトか。)
相手が強ければ強いほど、アレクシスは強くなる。遠い帝国にいる帝国最強の男であるジークフリートは、二人の強い魔力を感じ武者震いをするほどであった。
銀河に轟くほど、二人の魔力は高まっており、二人がぶつかれば、激闘となるのは目に見えていた。
(足りない魔力は、私の魂の燃焼で補うっ!)
レイディアントとは違い、アレクシスは暴走に近いほど、魔力を燃焼させていた。かつてないほどの、集中力は高まり、戦場にいる王国軍艦隊と共和国軍艦隊、王国軍魔導機と共和国軍魔導機らが、遠い情景となって二人の中から消えていく。
この戦場には、もはやレイディアントとアレクシスの二人だけの空間であり、何者にも邪魔できない、二人だけの世界となっていた。そして、その世界から現実に戻るためには、二人の目の前にいる敵を倒さねば、先に進めぬ世界だった。
アレクシスは、その世界で気付く。
魔導機レオは、目の前の敵に怒っていた。魔導機レオの魔導石である神核は、神核自身よりパワーを発揮しているアリエスの神核に対して、怒っていたのである。アレクシスは、神核が怒るなどあり得ぬと自嘲しつつも、神核の怒りに身を委ねる。すると、何か封印が解けそうな気配を感じたのである。
「そうか。そういうことか。魔導機レオは、やはり新型魔導機なのだな。」
「やはり、その先があるのですか?」
「あぁ、そうだ。新型魔導機レオは、自分よりも上にいる魔導機が許せないようだ。」
新型魔導機レオに光が集まる。
すふと、銀色の装甲は震え、装甲の一部が開き、内部からより鋭い骨格が現れる。魔導機の頭部には、青い炎のエネルギーをまとっており、限界を超えるアレクシスに合わせた魔導機へと変化した。
「どうやら、新型魔導機レオ。蒼炎形態とでも名付けようか。」
「聞いたことあります。中二病とかいうやつですか?」
「私は、そんな時代は卒業しているさ。」
「やっぱり、あったんですね。私には理解できないですね。」
「男の子なら誰しも通過する道だろう。いや、レイディアントは、すぐに貴族家当主となったのだったな。その時間すらなかったか。」
「えぇ、男の子のそんな時間はありませんでした。」
レイディアントは、男装のふりをした女性であるため、男の子特有の時代を過ごしていない。男の子特有のあるある話しなど出来ないのだが、早く貴族家当主になったから知らなかったで全て言い訳できる。
レイディアントとアレクシスは、女性と男性の性別、単独を好む狼と集団を好む獅子、貴族政治の英雄と民主主義の英雄など、多くの差がありながらも、大元は魔導操縦士であり、強敵と戦えるのが嬉しいのである。
「レイディアント・シリウス。新型魔導機アリエス、行きますっ!」
「アレクシス・アークライト。新型魔導機レオ、行くぞっ!」
二人の魔導機は、直後に同時に加速した。
新型魔導機アリエスは六枚の魔導翼から光を放ちながら高速移動する。新型魔導機レオは背中のスラスターから光を放ち高速移動する。
アリエスの魔導翼の二枚が、魔導剣へと変わり、双剣をレオへ振り降ろす。レオは大剣でアリエスの双剣を受け止めた。互いにパワーは互角であり、拮抗する。
「互角?」
「それならっ!」
アリエスは、力を弱め、あえて軽く吹き飛ばされるように回転して舞う。レオは勢い余り、魔導剣を大振りしてしまった。その大振りとなった胴体に向けて、アリエスは魔導剣で刺突を狙う。レオは、胴体部分にある魔導砲炉から、至近距離で魔導砲を放つが、アリエスはレオの魔導砲を双剣で斬り裂いた。
レオは、魔導砲を斬り裂いたアリエスの隙を見つけ、大剣で攻撃するが、アリエスの魔導翼の二枚が盾となり、レオの攻撃は防がれる。だが、レオはパワーで盾ごと押し込もうとし、アリエスは弾かれた。
アリエスは、残り二枚の魔導翼が魔導砲を放ち、レオを牽制する。レオは左腕の魔導障壁で防御し、そのままアリエスと突っ込むが、アリエスの盾に変形していた魔導翼は一つの槍となり、レオを貫こうとした。レオは槍を避けるが、避けた先にアリエスの足蹴りを受け、距離を取る。
僅か、数秒の攻防の出来事であり、常人には何が起こったかをスローモーションで見ないと分からない速度の出来事である。
レイディアントとアレクシスの二人の戦いは、二人の戦場から離れている王国軍と共和国軍の双方が映像を通して見ており、思わず見て止まってしまう。だが、近場の王国軍と共和国軍は、二人の戦いの衝撃波に飲み込まれ、戦艦も魔導機も吹き飛ばされ、ぶつかり損傷する。
「やりますね!」
「どうやら、性能に差はないようだな。あとは、魔導操縦士としての技量勝負だ。腕が鳴るな。」
「銀河で五本の指に入ると呼ばれる銀獅子アレクシス・アークライトと技量勝負で競えるとは。」
「共和国は私と傭兵団団長ロジャー、帝国は竜帝ジークフリートと赤虎ロンメル、あと一人は人によって人物が異なっていたが、今日から君になるだろう。」
「それは、光栄の極み。」
レイディアントは、自身の魔力をさらにアリエスに込める。アリエスは黄金に光り輝き、アリエスとレオを追っていた映像から、文字通りアリエスは消える。だが、アレクシスは、しっかりとレイディアントを追っていた。
(見えるぞっ!)
(この速度に着いてこれるのか!)
二人は、通信回線を交わさなくとも、会話できる状態となっていた。宇宙空間に漂う魔素を通じて、互いの感情が読み取れるようになっていたのである。
(私は、まだまだ強くなる!帝国最強のジークフリートの領域まで、行ってみせる!)
(帝国最強のジークフリートとは、そこまで強いのですか。)
(あの男は、私と格が違った。だが、今なら勝てるやもしれん。)
(いつか戦ってみたいものです。)
完全に二人だけの世界に入ってしまう。
もはや、レイディアントとアレクシスは、互いに意識を向けすぎてしまい、過集中状態であった。本来の二人であれば、王国軍艦隊と共和国軍艦隊の状況を見ながら戦えるのだが、初めての領域のため、感情が制御できなくなってしまっている。
だからこそ、新型魔導機二機が通過した場所では、巻き込まれた戦艦の魔導障壁は粉々に砕け、砲台も爆発し後退せざるを得ない戦艦が出てきてしまった。ここにきて、王国軍と共和国軍の軍人達は無意識に本能から、新型魔導機アリエスと新型魔導機レオの戦っている戦闘宙域から大幅に距離を取り始める。
王国軍も共和国軍も、新型魔導機アリエスと新型魔導機レオの戦いの間に入れば、宇宙空間の藻屑となることを理解した。もはや、王国軍と共和国軍の戦いは、古代の戦闘のように、いつしか新型魔導機アリエスと新型魔導機レオの一騎打ちのようになる異様な形態へ移行していた。
この時、互いに陣形を立て直し、別方向から奇襲をかければ決着を着くことができたのだが、互いに止まってしまったのである。
王国軍のブラッドリー准将は、その無能さゆえに何をすればよいか分からず止まってしまった。
マイナンは、好機と叫ぼうとしたところで、ぎっくり腰となってしまい動けなくなる。もともと、年老いたこともあるが腰痛で引退したのである。ここまで調子が良かったが、マイナンはぎっくり腰で離脱した。
「マイナン様…!」
「む、無念じゃ。レイディアントよ、あとは頼むぞ。」
戦場で討たれたかのような言い方だが、ただのぎっくり腰である。
共和国軍のギルベルト元帥は、別の問題が起きており、動くことができなかった。
王国軍と共和国軍は、互いに千載一遇のチャンスを活かすことができなかった。
戦場でチャンスを活かせなかったものに勝利の女神は訪れないのかもしれない。王国軍も共和国軍も、後になって気付いたが、その時は手遅れであった。
試造星帆戦艦の艦橋では、巨大画面に新型魔導機アリエスと新型魔導機レオの戦いが映し出されている。何度も、ぶつかり合う姿が見えるものの、あまりの速度に詳細までは映し出されていないため、レイディアントが余裕なのか追い詰められているのかも分からない。
その映像を見ながら、セレスティアは、ただ手を合わせながらレイディアントの無事を祈っていた。
その光景は、まるで聖女が勇者を祈るような光景であり、セレスティアが悪役令嬢と見間違えるのは不可能と思えるほど、神秘的な姿である。
セレスティアは、仮面をつけた者同士であるレイディアントを心の支えにしていた。もし、セレスティアからレイディアントが失われれば、その時こそ本物の悪役令嬢となって、王国を蝕んでもおかしくないほど、セレスティアはレイディアントに依存していたのである。セレスティアは、レイディアントがいるからこそ、偽りの仮面を被る同士が傍にいたからこそ、今でも貴族令嬢としての仮面を被り歩んでいるのである。
(頑張って、レイディアント。)
セレスティアの偽らざる本音は、レイディアントへ届いていた。
(大丈夫だよ、セレスティア。戦い終わったら、一緒に紅茶でも飲もう。)
セレスティアは、レイディアントが返事をしてくれたような気になる。
この時、レイディアントはセレスティアの声を聞き、周囲の状況を見るようになった。アレクシスもレイディアントに釣られて、周囲の状況を見る。互いに、マズいことになったと感じた。アレクシスは、共和国軍艦隊に指示をしようとするが、レイディアントは強襲をかけ、アレクシスに指示を出させないようにする。
(くっ、指示する余裕がない!)
(させません!)
(たったの一突きで、王国軍に大打撃を与えることができるというのに!)
(それが分かっているから、させないのですよ!)
(ギルベルト元帥は?これは何だ?何のむなさわぎなのだ?)
(ガルガンチュア要塞から、妙な気配?いずれにせよ、何もさせません!)
レイディアントは、六翼全てを魔導砲へ切り替え、アレクシスに反撃の余裕をなくさせた。アレクシスは、剣や盾で防ぎ避けながら、レイディアントに反撃を試みるが、レイディアントは六翼を使いながら、躱していく。
レイディアントとアレクシス。
二人の嫌な予感は、どんどん大きくなっていく。二人は戦いながらも、ガルガンチュア要塞に意識を集中し始める。




