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銀河魔導機戦記 〜断罪された悪役令嬢とともに、最強魔導機で銀河を統一する物語〜  作者: 蒼井 halu
第一章 金狼と魔導機アリエス

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004.

レイディアントの目に映るのは、炎上する研究棟、崩れた橋、逃げる市民、交戦する兵士達。共和国軍魔導機が市街地を進み、王国軍守備隊を押し込んでいる。


だが、アリエスが姿を現した瞬間、戦場の視線が一斉に集まった。白金の魔導機は、共和国軍の目標である。だが、共和国だけでなく、王国軍にとっても未知の魔導機なのである。全ての砲口が、魔導機アリエスへ向いた。


『共和国の魔導機か?』

『あれは、目的の王国の魔導機だ!奪取したのか?』


レイディアントは、識別信号が出ていないことに、気付く。すぐに識別信号を王国軍のものへと変更した。


『王国軍だ!新型魔導機なのか?見たことないぞ!』


共和国軍の任務は、新型機の奪取または破壊であった。その目標が、目の前いるのである。鹵獲か、それとも破壊か。現場指揮官の判断が求められるが、共和国軍指揮官は迷わなかった。


『目標を包囲しろ!脚を止める!操縦席は撃つな!鹵獲するぞ!』


市街地に展開していた共和国軍魔導機が動き出す。王国軍守備隊が迎撃しようとするが、既に戦力は消耗している。アリエスを支援できる余力はほとんどなかった。レイディアントは正面モニターに映る敵影を見た。


敵機体数は、五機。

先ほど倒した三機より多い。しかも、ここは広い市街地であり、敵は距離を取りながら連携してくるのは自明の理である。アリエスには、武器がないため、距離を取られるのは不利だった。


『この魔導機、武装していないぞ!』

『鹵獲のチャンスだ!』


一機が前へ出てくる。


(鹵獲しようとしているのか?ならば、チャンスだな。)


敵機の前衛は、右手に魔導剣。左腕に防盾。後衛は、背砲撃姿勢が取られている。明らかにアリエスを拘束するつもりだった。


アリエスは、正面から突進する。敵の魔導砲が放たれるも、レイディアントの魔導領域は広く、魔導砲を避ける。


『当たらないぞ!』

『なんて反応なんだ!』


アリエスは、一気に敵機に近き、盾を構える共和国軍機へ拳を振り下ろした。盾が砕け、敵機の左腕が潰れる。続けて敵が握る魔導剣を掴んだ。共和国軍兵士が怒鳴る。


『奪う気か!』


その通りだった。

アリエスの力が敵機を上回る。敵機から、魔導剣が引き抜く。敵機は咄嗟に後退しようとしたが、レイディアントは奪った剣を逆手に持ち、その脚部を斬った。敵機が倒れる。撃破ではない。だが戦闘不能だった。


武器を得た。

だが、その魔導剣も長くは持たない。アリエスの魔力を流し込むと、刃が過剰出力で震え始める。レイディアントはそれを理解しながらも、使うしかなかった。


右から敵機が迫る。左から砲撃。レイディアントは、魔導領域を広げた。敵の魔導炉、瓦礫の位置、逃げ遅れた市民の反応。それらが重なり合う。


レイディアントは敵機の攻撃を避けながら、踏み込んだ。慌てた共和国軍機の銃身は、王国兵と民間人のいる避難通路へと向かってしまった。


「そこは駄目だ。」


レイディアントはアリエスの左腕を差し出し、魔導砲を受け止める。アリエスは不思議な光を帯びるが無傷である。そして、避難通路は守られた。


王国兵が叫ぶ。


『共和国が、避難民へ攻撃してきたぞ!』

『民間人を下げろ!急げ!』


共和国軍は焦り始めた。

白金の魔導機は、武装がない。共和国軍の武器を奪うしかなく、明らかに規格が違うからか、共和国軍の武器は長く持つことができない。好機であるのだが、予想よりはるかに速く、はるかに硬い。そして、何より、魔導操縦士が戦場の流れを読み始めており、その動きが洗練され始めていた。


レイディアントは魔導剣を振るう。

一機の腕を斬り飛ばし、もう一機の肩部砲を破壊する。折れかけた刃を捨て、倒れた敵機から別の剣を奪う。まるで戦場そのものを武器庫にしているかのようだった。優雅ではない。完成された騎士の戦いでもない。だが、初機体の操縦だというのに、あまりにも強烈だった。エリシアは地下からモニター越しにその光景を見ていた。


「素晴らしいわね。」


彼女は震えていた。

アリエスの出力も素晴らしい。反応速度も、装甲も、魔力変換効率も想定以上である。だが、それだけではない。レイディアントが面白い。機体に振り回されながらも、少しずつ自分の戦い方を作り始めている。武器がなければ奪う。守るべきものがあれば身を投げ出す。経験不足を魔力量と直感で補いながら、戦場の中心に立っている。


「最高だわ、あなた。」


端末には、先ほど自動保存されたレイディアントの認証画像が表示されている。

金色の髪、エメラルドグリーンの瞳。軍籍上は男性として登録された、しかしアリエスが女性と認証した搭乗者。エリシアはその秘密を誰にも告げるつもりはない。王国軍上層部にも、研究員にも、守備隊にも。これは自分だけの重大機密であり、最高の宝物である。


その時、都市全体が大きく揺れた。

共和国軍艦隊からの砲撃が、アルゴス研究都市外壁の損傷部に直撃したのである。


艦隊が、共和国の魔導機を援護するために魔導砲を放ったのだ。外壁は既に奇襲開始時から限界に近かった。そこへさらに艦隊からの魔導砲が撃ち込まれた。都市を守る巨大隔壁に亀裂が走る。最初は細い線だった。それが一瞬で広がり、都市外殻を縦に裂いた。


警報が全域に響く。


『外壁損傷拡大!』

『気圧維持不能!』

『第三区画、宇宙空間へ露出!』


レイディアントが顔を上げる。

視界の先、研究都市の外壁が崩れ始めていた。白い霧のように大気が流出する。建物の破片、車両、瓦礫、人の影。それらが次々と外へ吸い出されていく。王国軍兵士が必死に避難誘導を行っているが、全てを救うには時間が足りない。


アリエスの足元にも異変が起きた。

地面が砕け、都市外壁側へ向かう猛烈な気流が生まれる。黄金の巨体が引かれる。レイディアントは踏みとどまろうとした。だが、足場そのものが崩壊した。


「まずい……!」


アリエスが浮いた。

重力制御が乱れ、都市の空気が宇宙へ流れ出す。白金の機体は、瓦礫と共に外壁の裂け目へ引きずられる。レイディアントは推進器を動かそうとするが、調整不足の機体は思うように反応しない。背部の翼状推進器が不安定に光り、機体は制御を失ったまま外へ放り出された。


一瞬、全ての音が消えた。そこは、宇宙だった。漆黒の空間。無数の星々。遠くで光る艦隊の砲火。


眼下には、外壁を裂かれたアルゴス研究都市があった。大気が白い尾を引きながら流出し、炎と瓦礫が宇宙へ漂っている。


アリエスは回転しながら漂う。レイディアントは必死に姿勢を制御し、背部推進器へ魔力を流し込んだ。黄金の光が不規則に輝き、ようやく機体の回転が止まる。


その時だった。

正面の宇宙に、一機の魔導機がいた。


蒼銀の機体。

共和国軍の量産型に近い形状でありながら、ただの量産機とは明らかに違う存在感を放っている。機体そのものではない。搭乗者が違う。周囲の共和国軍機が本能的に距離を取っている。その中心に、その蒼銀の機体は静かに浮かんでいた。


レイディアントは、相手をまだ知らない。

だが王国軍の兵士なら、いや共和国だろうと、帝国だろうと、兵士なら誰もが恐れる名のある相手であった。


共和国軍エースオブエース。撃墜数、公式記録だけで四百を超える怪物。銀獅子『アレクシス・アークライト』


蒼銀の機体の単眼が、黄金の羊を見据えた。アリエスもまた、赤色の瞳を向ける。


距離は数キロ。

宇宙空間では一瞬の距離。レイディアントは操縦桿を握り直した。武器はない。先ほど奪った魔導剣は都市内部に置き去りにした。アリエスは初戦闘を終えたばかりで、推進器も不安定である。


後に金狼と呼ばれることになるレイディアント・シリウス。そして、銀獅子と呼ばれる共和国軍最強の男アレクシス・アークライト。宿敵となる二人の運命が交錯したのだった。

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