032.
共和国軍が、十三度失敗した要塞であり、王国軍最大の防衛拠点である難攻不落のガルガンチュア要塞。その要塞が、たった数十分で失われまったのである。
ブラッドリー准将は、通信士からの報告を受け、何が起きたか理解できていない。ガルガンチュア要塞の陥落は、すぐに共和国と王国に情報が流れる。
共和国も王国も、理解できない。
戦闘開始から、一日も経たずに、王国軍が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞が陥落したのである。理解できるはずがなかった。
共和国軍の動きは、まだ終わらない。
ガルガンチュア要塞を奪取したのである。そのため、要塞を完全に共和国軍のものとするため、王国の要塞駐留艦隊を殲滅する行動に移った。
共和国軍は、ガルガンチュア要塞側から、二艦隊が高速で王国の要塞駐留艦隊に強襲をかける。
「二艦隊が高速で、突っ込んできます!」
「バカな!要塞を奪取したのだぞ!何故、要塞にこもらん!奴らは、軍事常識を知らん愚か者なのか!?」
王国軍は、いまだに再集結ができていないため、各個撃破のチャンスと見て、共和国軍は躊躇うことなく動いたのである。
「これは、銀獅子アレクシスの戦術かもしれませんね。」
「名将ギルベルトに、銀獅子アレクシスか。なんと、厄介な時代になったものよ。」
「どちらか一人でも王国軍にいてくれれば、結果は違ったかもしれません。」
「王国軍では、二人を活かしきれんだろうよ。」
「それはそうかもしれません。さて、嘆いても仕方ありません。セレスティア様、試造星帆戦艦の移動を。」
再集結できなかった要塞駐留艦隊は、あっという間に共和国軍に飲み込まれていく。王国軍は、共和国軍によって分断させられてしまったのだ。もはや、各個撃破の餌食である。
レイディアントは、共和国軍の動きに合わせ、旗艦を守る位置に配置した。
「試造星帆戦艦は、この場で防いで下さい。旗艦後退の手伝いをします。」
レイディアントは、試造星帆戦艦で時間を稼ぎ、旗艦を離脱させ立て直そうとしたのである。もっとも、ブラッドリー准将に、立て直すほどの能力があれば、すでに立て直しているため、王国軍が立て直すのは容易ではないことは明らかだった。
「かしこまりました。」
セレスティアは、軍事的知識はない。そのため、レイディアントの指示に従うのみである。ブラッドリー准将がいる王国軍要塞駐留艦隊の旗艦の前で、試造星帆戦艦は立ち塞がった。
共和国軍は、すでに王国軍要塞駐留艦隊の旗艦の位置を把握しており、高速で強襲を仕掛けていた。
「王国軍の旗艦は、あそこだ!」
「強襲し、攻め落とせ!」
「この反応…試造星帆戦艦です!」
「新型魔導機アリエスは、王国軍の旗艦前です!」
レイディアントは、艦橋に映し出された画面に三つの光点を見つける。レイディアントは、銀河一の魔力を保有していた。魔力保有者特有の直感が、レイディアントに確信させる。
「来たか。」
三つの光点の正体は、三機の魔導機である。
一体目の魔導機は、新型魔導機レオ。搭乗者は、銀獅子であるアレクシス・アークライト。
二体目の魔導機は、新型魔導機キャンサー。搭乗者は、アレクシスの副官であるリュカ・フェリオ。
三体目の魔導機は、新型魔導機ジェミニ。搭乗者は、ファルコン傭兵団団長のロジャー・ファルコン。
王国軍から鹵獲した新型魔導機の三機が、王国軍要塞駐留艦隊の旗艦に向け、試造星帆戦艦に向け、進んでいく。
『こちら、共和国軍准将であるアレクシス・アークライトである。王国が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞は、すでに共和国のものとなった。要塞の恐ろしさは、誰よりも王国軍が知っているだろう。銀獅子アレクシスの名において王国軍に宣言する。降伏せよ。』
アレクシスは、王国軍要塞駐留艦隊に向けて発信した。ブラッドリー准将は、銀獅子アレクシスは、自身が落としたと思っていたため、あまりの衝撃に、膝から崩れ落ちる。
「ばかな…。そんなばかな…。」
ブラッドリー准将は、戦う気力が尽きかけていた。もともと、現場からの叩き上げではないのだ。派閥争いの中で出世したタイプであり、逆境に弱いのである。
「こ、こうふ…。」
ブラッドリー准将が、降伏を呟こうとした瞬間、王国軍と共和国軍に向けて、レイディアントの声が響き渡る。
『銀獅子アレクシス殿は、恥さらしにも王国軍から奪った魔導機に乗り換えたばかりでなく、よほどブラッドリー准将が率いる王国軍要塞駐留艦隊が恐ろしいと見える。このレイディアント・シリウス。逃げも隠れもしない。新型魔導機アリエスは、貴公の新型魔導機レオを打ち倒して見せよう。王国軍!共和国軍は、少数である。恐れるなかれ!貴公らには、このレイディアント・シリウスがいる!』
レイディアントの声は、王国軍の多くの兵たちの心を落ち着かせた。ガルガンチュア要塞が陥落したからといっても、これから起こるのは、要塞対艦隊ではなく、艦隊対艦隊なのだ。
通信回線が開き、獣のようなロジャーの笑い声が響いた。
『はーっはっはっっ。見つけたぞ、お宝!その新型魔導機アリエスを俺様に献上しろ!』
さらには、アレクシスも宣言する。
『やはり、降伏などせんか。さすがだ王国軍!レイディアント・シリウス。さぁ、再戦の時間としようではないか。』
アレクシスとロジャー。さらには、レイディアントの間に、もう一人の男が割って入る。
『この不死身のイェーガーがいることを忘れてもらっては困る!王国軍は、私がいる限り、不死身だ!』
『不死身のイェーガー?あらたなネームドを持つエース・オブ・エースか?』
『いえ、機構に照会をかけましたが、存在しません。恐らく自称のネームドかと。』
『だれが、自称だ!』
王国軍は、最悪の状況である。
だが、その中で、イェーガーのような士気の高い者が存在するのは、王国軍にとってもメリットが大きい。
『どうやら、不死身のイェーガーを知らないとは、共和国軍の情報網は穴だらけのようだ。この戦い、勝てるぞ!』
レイディアントは、士気を高め続ける必要がある。
王国軍としてみれば、最悪の状況であることに変わりはない。要塞は失われ、味方艦隊は分散しており、各個撃破の的となっている。新型魔導機は、王国軍2機に対し、共和国は3機。さらに言えば、相手は戦術の天才アレクシスであり、味方を率いるのは愚将ブラッドリー。王国軍に有利なことなど一つもないのだ。
それでも、レイディアントは立ち上がらなければならない。王国軍の貴族として生まれ、貴族として育ち、貴族として生きていくつもりなのだから。
「アリエス、出ます。」
リーチェも、レイディアントの隣りで頷く。
「タウロスも出ます。レイディアント大尉、どこまでもお供しますよ!」
リーチェが笑った。リーチェとしても、この戦いは完全なる負け戦であることは分かっているのである。だが、敬愛する上官が諦めないのであれば、リーチェも諦めないだけである。
「レイディアント様、リーチェ少尉、ご武運を。」
セレスティアは、二人に向け無事を祈るしかない。
試造星帆戦艦は、王国軍要塞駐留艦隊の旗艦を守るために、この場で共和国軍艦隊の攻撃を防がなくてはならないのだ。
「セレスティア様も、ご武運を。」
レイディアントとリーチェは、格納庫へ向かう。そこには、変態科学者エリシアがいた。
「アリエスもタウロスも、整備はばっちりよ。頑張って。」
「ありがとう。」
レイディアントは新型魔導機アリエスに、リーチェは新型魔導機タウロスに搭乗する。
共和国軍のガルガンチュア要塞陥落は大成功した。そして今、戦いは新たな局面へと向かう。
レイディアント、アレクシス、ロジャー。
宿命、宿敵となる者達の戦いが、ついに幕を開ける。
「レイディアント・シリウス。魔導機アリエス、出撃する。」
レイディアントは、宇宙へと飛び出したのだった




