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銀河魔導機戦記 〜断罪された悪役令嬢とともに、最強魔導機で銀河を統一する物語〜  作者: 蒼井 halu
第一章 金狼と魔導機アリエス

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031.要塞陥落

レイディアントによる巨大な魔力を使った索敵。

その行為は、共和国軍に大きな影響を与えていた。常人には不可能な索敵を行うことで、レイディアントの居場所が特定されてしまったのである。


戦術の天才であるアレクシスは、即座に共和国軍の作戦を修正し、レイディアントとマイナンをガルガンチュア要塞から引き剥がす動きに出た。


共和国軍にとっての懸念事項は、レイディアントとマイナンの両名なのである。その両名が、試造星帆戦艦ルミナス・ヴェールにいるため、ガルガンチュア要塞から両名を引き剥がすことは、要塞攻略の成否に影響を及ぼすのである。


つまりは、レイディアントは哨戒任務で大きな失敗をしてしまったのだ。レイディアントは、共和国軍の動向を掴むものの、王国軍はレイディアントの情報を活かすことがてわきなかった。共和国軍は、レイディアントの動向を掴み、アレクシスはレイディアントの情報を活かした。


共和国軍のアレクシスに対抗できるのは間違いなくレイディアントだけであった。また、ギルベルト元帥の作戦を読む可能性があったのはマイナンだけであった。


レイディアントは、自身とマイナンの価値を低く見積もってしまったのである。いや、王国軍の価値を高く見積もってしまったのかもしれない。


何にせよ、最もいなければならない場所に、レイディアントとマイナンはいることができなかった。


「共和国軍の反応?少ないな。さらに、銀獅子アレクシスの搭乗する魔導機フェンリルの反応か…。罠だが、そのまま伝えるしかないな。」


レイディアントは、索敵中に共和国軍が出現したことを把握した。堂々とした速度で、ガルガンチュア要塞に進んでおり、その中にアレクシスの魔導機であるフェンリルがいたのである。


「ガルガンチュア要塞に連絡。エリア51方面に、共和国軍襲来。規模は、少数であるものの、魔導機フェンリルを発見した。」


レイディアントは、20分経過してから、ガルガンチュア要塞から返答を受ける。


「なんだと?あの銀獅子が少数できているのか?」

「フェンリルの機体反応はあります。」

「なんという好機!」

「恐らく罠かと…。もう通信は途切れているか…。」


レイディアントは、フェンリルにアレクシスがいないことを直感で気付いていた。そのため、フェンリルという毒入り饅頭に、王国軍が食らいつこうとしていることに指摘したかったのだが、今のレイディアントにはその権限はなかった。


その頃、要塞内では、怒号が響いていた。


「だから、要塞から出現しての迎撃だと言うておる!」

「馬鹿を言うな!あの程度の敵兵だぞ?要塞砲バニッシャーの範囲内で迎撃すべきではないか!」

「あの銀獅子を落とす絶好の機会なのだぞ!逃げられては、王国軍に損失を与えてしまうではないか!」

「バカが!要塞砲バニッシャーの範囲内までやってくれば、確実に落とせるのだぞ?取り逃してしまう可能性があるではないか!」


二人の将校が言い争っていた。

グランデール准将と艦隊司令官ブラッドリー准将である。ブラッドリー准将は、ガルガンチュア要塞の防衛艦隊を率いる男である。だが、両名とも酒が抜けきれていないようであり、正確な判断ができているのかが怪しい。


この二人は、出世争いをしていた。

グランデール准将は、ブラッドリー准将が銀獅子を倒してしまえば、ブラッドリー准将が自身よりも出世してしまう。ブラッドリー准将は、要塞砲バニッシャーで銀獅子を倒してしまえばグランデール准将が自身よりも出世してしまう。


互いに出世争いのライバルであるからこそ、互いの意見は反目してしまっている。互いに協力関係などない。ガルガンチュア要塞の弱点の一つであった。


「うっさい、このハゲ!」

「なんだと、ばかやろう!」

「この阿呆が!」

「てめぇこそ、アホ面だろう!」

「はぁ?どこがだ!」

「全部だ、この野郎!」


内外での協力が必要不可欠であるのだが、少なくとも、協力できる状態ではなかった。


「知らん!もう勝手に出る!」

「ふん!勝手に出るなら、物資は渡さん。」

「ふん!いらんわ!」


物資のない出現。

今、各艦隊内の貯蓄のみで戦うことになる。その出現を聞いたレイディアントは、思わず叫んだ。


「王国軍は馬鹿なのか!?」


共和国軍のアレクシスも、レイディアントと同じ感想である。だが、アレクシスは、あまりにも馬鹿すぎる王国軍の動きに罠であることを考えてしまった。そのため、より慎重に動く。


フェンリルは、王国軍が大艦隊でやってくるのを見て慌てたかのように、ゆっくりと後退を開始した。


「銀獅子が逃げるぞ!」

「追うんだ!」

「共和国軍のエース・オブ・エースを落とせるのは誉れだぞ!」

「勝利の女神は、我々に微笑んでいる!」

「最大船足で進め!」

「進め、進め、進むんだ!」


フェンリルは、ゆっくりと後退し、要塞艦隊とガルガンチュア要塞の間に岩石地帯となるよう位置の調整を行う。


その頃、レイディアントは試造星帆戦艦ルミナス・ヴェールと合流した。


マイナンは、顔をしかめている。

今の状況がどれほどマズい状況なのかを理解しているのである。マイナンは、フェンリルよりもガルガンチュア要塞の状況を特に監視するよう提案する。


「これは罠の可能性が高い。ガルガンチュア要塞に共和国軍が押し寄せてくるぞ。」

「ガルガンチュア要塞に押し寄せることができるほどの共和国軍は発見されておりません。」

「からくりは分からんよ。だが、間違いなく、やってくる。」


レイディアントも、艦橋へと戻ってくる。


「ガルガンチュア要塞の監視を。」

「大丈夫じゃ。もう実行しておる。」

「さすがお祖父様です。共和国軍は、偽装が上手いようですね。複数の箇所で、多くの民間船が渡航しているようです。あれらは、全て共和国軍でしょう。」

「なるほどの。マズいな。」

「えぇ、本当にマズい状況です。」


指揮官が無能である。

この一点により、王国軍はさらなる愚行を見せる。


レイディアントとマイナンは、ここでも失敗した。ギルベルト元帥の戦略を読めてしまったからこそ、アレクシスの戦術を軽視してしまったのである。


戦略の天才ギルベルトと、戦術の天才アレクシスは、レイディアントとマイナンの想像を超えた。いや、王国軍の無能指揮官が、レイディアントとマイナンの予想を超えたというのが正しいのかもしれない。


「銀獅子の反応が消えただと?各艦、分散し、捜索せよ。」

「了解しました!銀獅子の反応が消えたということは、魔導炉からの電源を消したのでしょう。」

「再起動には時間がかかります。」

「あの銀獅子を落とせるぞ!」

「そうだ!栄誉は、目の前だ!」


王国軍に最悪な命令がくだる。

すでに、王国軍はガルガンチュア要塞と要塞駐留艦隊を分けたのである。さらには、駐留艦隊を分けてしまったのだ。艦隊にとっての強みとは、集合体であることである。だからこそ、個別に判断できるような仕組みにしていない。


アレクシスの戦術は、まだ終わらない。

王国軍は、ついにフェンリルを見つけた。


「いたぞ、銀獅子だ!」

「落とせっ!」


王国軍は、フェンリルがいることで索敵を疎かにした。

だからこそ、周囲に充満した水素粒子に気付かない。


太陽は何故燃えるか。

水素原子核が激しくぶつかり合い、ヘリウム原子核に変わる核融合反応を起こしているのだ。長きの戦いのなかで、人類は酸素のない宇宙空間でも爆発できる武器を作り上げた。水素粒子から大爆発を起こす兵器である。


「まさかっ!」

「魔導砲を撃つな!」

「これは…」


水素粒子は、フェンリルだけでなく、広範囲に渡って分布していた。ゆえに、多くの王国軍が爆発に巻き込まれる。分散したことで、直接的被害は軽微であったものの、その影響は大きかった。


「魔導障壁を全開に!」

「友軍、撃沈を確認!」

「通信障害発生!」


王国軍は、フェンリルの爆発に巻き込まれ、混乱に陥る。その混乱から立ち直る術を要塞駐留艦隊は持っていなかった。


ガルガンチュア要塞から離れた駐留艦隊は、個別に分かれ、さらには爆発による混乱で通信障害を起き、再集結できない状況となっている。


アレクシスの戦術は、王国軍を翻弄し続けている。王国軍は、最悪のタイミングで、罠にかかり続けている。だからこそ、レイディアントはいち早く見抜く。


「王国軍駐留艦隊の位置情報が、完璧に漏れているな…。」

「そんなことはあり得るのですか?あり得るなら、王国軍内にスパイがいるのでしょうね。」


王国軍も共和国軍も、互いにスパイがいる。

それは、公然の事実であるが、ここまで露骨な活動をするスパイも珍しかった。


「こちらの行動を読まれてるなら、いよいよ始まります。」

「何がですか?」

「共和国軍によるガルガンチュア要塞の強襲じゃな。」

「そのとおりです。ガルガンチュア要塞へ引き返すべきです。」


レイディアントは決断するも、階級が低いため、独断行動することができない。そのため、ブラッドリー准将に直訴したいのだが、そのブラッドリー准将が通信障害による混乱から立ち直れていない。


そして、いよいよ、王国軍の喉元にナイフを突きつけるような事態に陥る。各艦隊の通信士が、こぞって叫んだ。


「要塞より緊急通信!共和国軍です!共和国軍主力艦隊出現!じ、尋常ではない艦隊数を確認!共和国軍は、三方向より高速接近してきます!』


レイディアントは、要塞が攻略されていくのを眺めることしかできない。どうすれば良かったのか、どうしなければならなかったのか、レイディアントは無意味な自問自答をしてしまう。


それほどまでに、王国軍の動きは情けなく、だらしない動きであった。だが、要塞内の通信士からの報告は、それだけでは終わらない。


「そんな!?障壁が停止している!?よ、要塞防衛機構反応なし!魔導砲台群、沈黙!な、何が起こっているの?」

「要塞砲バニッシャーを放てっ!」

「無理です!完全に止まっています。」

「馬鹿な!馬鹿な!そんな馬鹿な!」


要塞の通信士の声は、パニックであったため、早口で声高くなっていた。さらには、艦橋の声も聞こえてくるのだが、何の手も打つことができていない。


「ガルガンチュア要塞は、私の代で落ちる…だと?うそだ!これは、夢だ!夢なんだ!」

「グランデール准将!これは、夢ではありません。」

「うそだ。これは、夢なんだ!夢でなければ、なんという言うのだ!これは、夢なんだ。」


要塞内は、もはやまともな思考で運用できない状態となった。頭を抱え、倒れ込んだグランデール准将は、現実逃避をしていく。


「何故、要塞砲バニッシャーを打たない!」

「故障したのか!」


王国軍要塞駐留艦隊は、騒然となる。レイディアントは、状況の推移を見ながら理解した。


「これは、もう無理だな…。」


マイナンも、セレスティアも、同じことを思ったのだろう。その目は、もはや諦めの目である。もうガルガンチュア要塞に救援に向かったとしても間に合わないと確信したのだ。


「駐留艦隊、早く帰投して下さい。このままでは、ガルガンチュア要塞が堕ちます!共和国軍が、まっすぐ司令室に向かってます!どうして、ここの位置が分かるの!」


共和国軍による内部工作・買収により、ガルガンチュア要塞の情報は丸裸になっていた。内部構造まで共和国軍は把握しており、最短で要塞の中枢へと向かっていく。


防衛のための設備は、全て沈黙しており、もはや人による魔導銃での迎撃しか手段はなかった。だが、要塞内は安心だと信じ切っていた王国軍は、普段より銃撃戦の訓練などしていない。共和国軍を止めることなど不可能である。


ようやく、ブラッドリー准将は動き出す。

爆発による通信障害により、立ち直ったのである。


「フェンリルを撃沈した!私こそ、新たな英雄である。ガルガンチュア要塞よ、すぐに、この新たな英雄が救援に向かう!王国軍、再集結せよ!」


ブラッドリー准将は、フェンリルに銀獅子アレクシスが搭乗していると信じ切っていた。だからこそ、有頂天となり、何も考えずに、再集結してからガルガンチュア要塞を目指そうとする。


ガルガンチュア要塞側には、レイディアントがいる試造星帆戦艦ルミナス・ヴェールなどの幾つかの艦隊がおり、レイディアントを目指そうガルガンチュア要塞に向かわせていたのなら、結果は違っていたかもしれない。だが、ブラッドリー准将は、再集結を選び、ガルガンチュア要塞に戻ることを決意した。


この時、ブラッドリー准将も、いや、多くの王国軍人は、ここにいたってまでガルガンチュア要塞は難攻不落であると信じ切っていたのである。だからこそ、焦ることもせず、ゆっくりと時間をかけて再集結した。


レイディアントは、ブラッドリー准将の行動を見ていることしかできず、あまりにももどかしい思いを募らせる。


「私に権限さえあれば…。」

「ないものを願うのではない。」

「今、やれることをやるしかありません。レイディアント様、どうか冷静に。」


苛立つレイディアントに対して、マイナンとセレスティアは、冷静となるよう呼びかける。だが、レイディアントとしては冷静ではいられなかった。


共和国軍が王国軍を上回ったのなら、レイディアントはまだ諦めることが出来たのだろう。だが、王国軍が自滅したとしか思えないのが実情である。


レイディアントはすでに覚悟している。

ガルガンチュア要塞が共和国軍に強襲を受け、三十分が立つ。


「司令室の防壁が突破されました!」

「こ、降伏だ!」


王国軍が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞。

ハード面では、圧倒的な性能から、何度も共和国軍を敗北に追いやった要塞。その要塞は、誰もが信じられない速度で持ち主を変えることとなった。


ガルガンチュア要塞から通信が途切れる。

そしめ、ガルガンチュア要塞から共和国軍の識別信号が発せられた。誰もが、ついにその事実を受け入れるしかない。


通信士が声に出す。


「ガルガンチュア要塞…、陥落しました…」


その声は、無機質に響き渡るのだった。


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