表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河魔導機戦記 〜断罪された悪役令嬢とともに、最強魔導機で銀河を統一する物語〜  作者: 蒼井 halu
第一章 金狼と魔導機アリエス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/43

030.

王国軍が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞。

共和国軍のスパイからの情報を聞き、要塞の将校達は安心しきっていた。共和国軍は、何度も要塞攻略に失敗したのである。共和国軍内に、要塞へ攻めようとするような艦隊は見当たらず、見つけられないような少数の部隊であるなら、要塞の防衛施設で充分であり、慌てる必要など全くなかった。


レイディアントは、要塞内が緩みきった空気であるということを嫌というほど感じていた。

日を追うごとに職務に怠惰な軍人が増えているようであり、ガルガンチュア要塞が攻められるはずがない、攻められてもガルガンチュア要塞なら何とかなるという空気が漂っていたのである。


この状況は明らかにおかしい状況であったため、レイディアントはすぐに気付く。軍人がよく行く酒場で、女性達が軍人に共和国軍は王国軍を恐れていることや、共和国軍は弱いから安心だとか、王国軍は強いので何も心配ないとかを軍人達に話しているのである。酒場だけでなく、他にも多くの場所で、似たような話しが一斉に出ており、共和国軍のスパイが内部に入り込んで、噂を流しているのは確実だった。


もし、レイディアントに憲兵の権限があるのならば、即座に調査に入り、共和国軍のスパイを炙り出していたのだが、レイディアントにそこまでの権限はない。だからこそ、歯がゆい気持ちでレイディアントは状況を見るしかない。


レイディアントは、自身が腐ることなどせず、日々、与えられた哨戒任務をこなしていく。若く有能な軍人に与える仕事ではないのだが、レイディアント自身は不満を持っていなかった。そして、哨戒を続けるうちに、レイディアントにある違和感が生まれる。共和国軍があまりにも静かすぎるのだ。共和国の国境付近までいき、ようやく共和国軍が確認できたのだが、あきらかに国境付近の部隊が減っている。共和国前線の通信量も少なく、まるで共和国軍がそこにいないかのような動きを見せているのだ。そして、レイディアントは、一つの結論へ辿り着く。そのために、レイディアントはガルガンチュア要塞に許可を求めた。


「こちら、シリウス大尉である。魔導探知の許可を願いたい。」


数分後、ガルガンチュア要塞から回答がかえってくる。


『哨戒任務なのだ。いちいち、許可などいらん。』

「承知しました。」


レイディアントの魔力は銀河一である。

その魔力を使って、薄く遠くまで共和国軍の探知を行うのである。


レイディアントは、光り輝く。

魔力が最高の状態で出力するため、自然とレイディアント自身が光り輝き始めてしまうのだ。レイディアントの髪は黄金であり、まるで髪の毛まで伸びたような状態となった。そして、レイディアントは、共和国へ向けて魔導探知を行う。その範囲は、まさに前代未聞の範囲であり、共和国軍にとって予想外の探知を受けたため、思わず警戒してしまう状況となる。その反応をレイディアントは見て驚いた。


(共和国軍はいる。だが、あまりにも少なすぎる…。)


レイディアントは、状況を理解した。

ガルガンチュア要塞は内部工作により、油断させている。そして、更には共和国とガルガンチュア要塞の間に、艦隊はいるものの、あまりにも少ない。


(共和国軍は、間違いなくガルガンチュア要塞を狙っている。なるほど。複数に分散させ、気付いた時には、要塞前で大軍を集結させようとしているのか。)


レイディアントは、ギルベルト元帥の作戦案を読むことに成功した。そして、そのことをマイナンに報告すると、マイナンも同じ感想を持っていた。


レイディアントもマイナンもギルベルト元帥の作戦案を読むことに成功した。しかし、その二人に読まれることも想定したギルベルト元帥の作戦なのである。若く、見栄えのよい青年貴族が、調子に乗っているように内部で噂を流させており、将校の一部はレイディアントに嫉妬していたのである。


レイディアントは、共和国軍のスパイからの情報を見る。出撃した際の総司令官は、共和国軍総司令官であるギルベルト元帥自らである。レイディアントは、ギルベルトのことを祖父であるマイナンを通して、よく話しを聞いていた。正攻法にこだわらず、搦手も遠慮なくつかう男であり、なんども煮え湯を呑まされた嫌な相手であり、仮に味方であっても信用などできない嫌な相手であると。


レイディアントは、ギルベルトのことをよく知らないが、性格が悪いものの作戦であることだけは間違いないと理解した。


「ギルベルト元帥…、やり手ですね。」

「あいつのは、やり手とは言わん。汚いんじゃ。そのくせに、自分は正道を歩んでますみたいな雰囲気でいるのだから達が悪い。あいつが出てきたのなら、間違いなく何か思考の罠を用意しておる。」

「やはり、そうでしょうね。」

「そうだろうとも。共和国軍が少ない?ならば、多いに決まっている。共和国軍が見当たらない?ならば、見える範囲まで来ておるに決まっておる。」


マイナンの言葉に、レイディアントはハッとした。

レイディアントの哨戒任務のエリアは、前線に近いのである。だが、もう内部に入られている可能性も否定できなかった。


哨戒終了後。レイディアントは再びグランデール准将に面会を申し込む。

しかし、グランデール准将は、レイディアントからの面会を拒否し、報告があればデータで送るよう指示をした。やむを得ず、レイディアントは索敵した共和国軍の状況から、予想される共和国軍の作戦行動と、その対策案を作成する。


共和国軍の作戦にのらず、新型魔導機アリエス、駐留艦隊をガルガンチュア要塞に留め、ゆっくりと迎撃すればいいだけである。ただ、我慢するという作戦を実行するだけで共和国軍に勝利できるのである。


だが、グランデール准将はレイディアントの報告も作戦案も見ることはしない。グランデール准将は、レイディアントに嫉妬している。ここ最近仲のよい女性が、レイディアントは項に焦っており、すぐに出撃しようとしているという偽情報に騙され、レイディアントは他の若者と同様に哨戒任務が嫌なのだろうと思い込み、レイディアントの作戦案になど目を向けることもしない。


レイディアントは、グランデール准将が動かないことを確認すると、グランデール准将に近い将校に説明しようと奮闘する。ようやくレイディアントの話しを聞いてくれる将校を見つけたのだが、レイディアントの考えに否定的であった。


「ありえんな。大規模攻勢?艦隊が動けば補給が動く。補給が動けば商人も動く。商人が動けば情報も動く。現在、共和国軍が数万隻規模の艦隊を動かしたという情報はない。動いてはいても、小規模艦隊程度であろう。」

「長期間の行動ではないのです。補給も少なくて済むでしょう。」

「シリウス大尉。軍に補給物資が必要なのは常識である。」


レイディアントは反論しようとした。だが、すぐに失笑へ変わる。


「英雄殿は敵を過大評価している。ギルベルト元帥も人間であり、魔法使いではない。そんな芸当はできんよ。」

「ですが…!」

「ガルガンチュア要塞は、難攻不落である。心配いるまい。」


難攻不落。

レイディアントの前にいる将校も、その言葉が思考停止してしまっている。


「現状維持だ。さて、本題に入ろう。私の娘が君のファンなのだ。この色紙にサインを頼む。」


レイディアントは、まるでアイドルのような存在なのである。レイディアントのファンは多く、色紙にサインを書く機会も多い。王国軍も、ある程度は人気を必要としており、レイディアントは軍の人気に貢献していたのである。


レイディアントは、やりきれない思いを抱えながら、魔導機格納庫へやってくる。すると、そこには、リーチェが喧嘩をしていた。


「このすっとこどっこい。」

「どこの言葉だ!」

「私の故郷の言葉です!」

「どうしたのですか?」


リーチェの前に立っている男は、若い男だった。魔導操縦士の格好をしているため、レイディアントは嫌な予感がした。


「シリウス大尉!イェーガー中尉であります。私も、新型魔導機に搭乗させて下さい!ぜひ、この新型魔導機タウロスに!」

「タウロスは、私の魔導機です!絶対、乗せません!」

「残念ながら、タウロスはリーチェ少尉専用機として登録済みのため、イェーガー中尉の期待には応えられんよ。」

「ほーら、言ったでしょ!不気味のイェーガーだか何だか知らないけど、タウロスは私の専用機よ!」

「不死身のイェーガーだ!」


イェーガー中尉の名は、レイディアントも聞いたことがあった。

エースになると、呼称がつけられる。不死身のイェーガーは、どんな負け戦でも、どんなに魔導機がボロボロになっても生き残る魔導操縦士だった。


「いいか、共和国軍は必ず近々、このガルガンチュア要塞に攻めてくるに違いない。俺の魔導操縦士としての勘がそう言っている。俺は活躍して、故郷でプロポーズをするんだ。」

「それ、負けるフラグたててません?」

「そんなわけあるか!俺は、勝って勝って勝ち続ける男だぞ!」

「負けても生き残り続ける男だった気がしますけど?」

「なんだと、このやろう!」


レイディアントは、思わず笑った。


「そうだな、イェーガー中尉。共和国軍は攻めてくるだろう。そのぐらいの気概が必要だ。」

「そうです!俺は、やってやりますぜ!」

「あー、はいはいっ。」


周りの魔導操縦士から、ひそひそ声が聞こえる。それは、レイディアントへの悪口ではなく、イェーガー中尉への同情の声である。


「確か、そう言って五十回ぐらい告白していないか?」

「まぁ、いつもの光景だ。なら、縁起がいい。」


魔導操縦士達は、呆れるほど潔く、戦争に周知しているのが分かる。生きるための理由をしっかりと再確認しているのだ。


レイディアントは、魔導操縦士達の士気を見て、まだまだ王国軍は捨てたものではないと考えを改めた。


魔導操縦士としての勘。

イェーガー中尉は、生き残り続けた魔導操縦士であり、その勘は大事である。だが、イェーガー中尉以上にレイディアントの勘も、共和国軍が近づいているのを感じていた。


その中に、銀獅子アレクシスがいるのを感じており、もう一人、銀獅子アレクシス並の存在がいることも感じている。共和国軍の資料から、その相手こそロジャー・ファルコンなのだと分かるのだが、アレクシスとロジャーの相手をすることになると思うと、かなり厳しい状況であるのは間違いなかった。


レイディアントは、新型魔導機アリエスの元へ戻る。

すると、そこには変態科学者エミリアがいて、機体を万全を期すために調整している。


「あら、おかえり。アリエスは、完璧よ。」

「それは頼もしい。」

「きっと、とんでもない戦いが始まることになるからね。新たなデータを期待してるわよ。」


軍人でない、ただの科学者であるエミリアでさえ、大規模な戦争を予感している。にもかかわらず、多くの王国軍人は、ガルガンチュア要塞が襲われることすら予想していなく、襲われたとしても安全だとすら思っている。


王国軍が誇る難攻不落のガルガンチュア要塞にとって、最も危険な敵は、共和国軍ではなく、味方の王国軍であった。正しく運用されなければ、ただの鉄くずであると証明してしまう戦いがいよいよ始まろうとしている。


遥か彼方の宙域では、ギルベルト元帥か自ら率いる共和国軍の大艦隊が、王国軍に気付かれることなく、静かに王国に侵入していく。


そして、難攻不落とは、ただの言葉であるということを王国軍も共和国軍も知るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ