010.
アルゴス研究都市に侵入している共和国の諜報部は、少しでも早く情報を伝えたいとアレクシスに送信した電波で、アレクシス達が捕捉されてしまったことに申し訳なさを感じつつも、それどころではなかった。
「事前情報と違いすぎる。」
「本来の魔導操縦士の第1候補から第二十候補の全員が、アリエスに乗れなかったなんて、あり得るのか?」
「レイディアント・シリウス…。あのマイナン提督の孫らしい。」
「魔導操縦士もだが、あの性能は何だ!事前情報と違いすぎるではないか。」
「王国軍が1枚上手だったと思うしかあるまい。」
情報部が集めた情報が中途半端だったことが、作戦の失敗の原因である。新型魔導機アリエスは、事前情報とでは、全く別の機体なのである。
「情報元に騙されたな…。」
「いや、正誤を散りばめられたようだ。これから、複数の情報から正しいものだけを選択すればよいだろう。」
「それにしても、王国軍は大丈夫なのか?」
諜報部の面々は、手元の資料をパラパラとめくる。魔導機の開発は、時間も費用もかかる。その費用面ではあるが、莫大な開発費用が投じられていた。正直なことをいえば、新型機を開発するよりも、量産機を増やした方がいいのではないかと思えるような開発費用だったのである。
「国家財政は大丈夫なのか?」
「分からない。我々が知らないだけで、他に金の卵を産む鶏でもいるのかもしれないな。」
共和国軍の諜報部にとって、王国はとても釣査しやすい国だった。王国軍は、札束でビンタをすれば、簡単に情報を吐いてくれる楽な相手だったのである。だからこそ、手に入れた情報が、誤っている可能性があることを聞き、諜報部は焦った。
「魔導機アリエス並みの機体が、あと十一機も誕生しようとしているのか。」
「今、完成状態なのはアリエスだけだ。だが、アリエス以外にも、徐々に完成していく予定なのだろう。」
「何とか探らなければならないな。情報が秘匿されてて、真実を見つけるのが大変だぞ。」
「レイディアント・シリウスの情報とは真逆だな。情報が多すぎて真実を探すのが大変だぞ?」
「まぁ、この容姿だからな。」
レイディアントの容姿は、絵本から、飛び出した貴族の容姿であることがわかり、貴族刊を見なくても、レイディアントのことを知っているものが、何人もいたのだ。
曰く、貴族学院では、男爵でありながら、その佇まいから、ファンクラブがあり、バレンタインチョコレートでは、トラック一杯になったようだ。
文武両道であり、座学でも実技でも、トップクラス。動画による記録まで残っており、レイディアント・シリウスに関する情報は山程あった。情報がありすぎて、必要な情報を選ぶだけでも大変だったのである。ひと言で言えば、典型的な優等生タイプと言えばいいのだろう。アルゴス研究都市戦では、野性味が溢れていたたが、情報部としては充分な情報が集まっており、調査は充分だった。
後世の歴史家は、たらればが好きである。
もし、この時にレイディアント・シリウスの調査を徹底的にしていれば、どうなったか。ただの新型魔導機の魔導操縦士以外の認識をもっていたら…、レイディアント・シリウスを確保できていれば…、歴史は大きく変わっていたのは間違いない。だが、この時の当事者達は、多くの情報という森の中で、大事な情報を抜け落ちてしまったことを気づかなかった。当事者達にとって、大事なのは、新型魔導機のことであるり
「残りの新型魔導機の情報は、手に入らないか?」
「ダメです。あることにはあるのですが信憑性が足りません。王国軍にしては、珍しくも情報が全く入りません。」
「それでも調べ続けるしかない。いくら金を使っても構わん。調べるんだ。」
共和国軍の情報部は、新型魔導機の性能、もしくは開発場所、輸送経路など、破壊や奪取のための情報収取を行うことを継続する。ただし、どの新型魔導機も、真っ当な科学者が開発していないため、辺な情報ばかり集まる。魔導操縦士に技能よりも、別の何かを要求するという意味の分からない情報すらあった。
「ところで、これ、どうしましょう?」
諜報部は、レイディアントの情報を得るために、写真集を買いながら情報を集めた。その写真集は、非合法であり、非公認ファンクラブの写真集だったのである。レイディアントの情報を集めるとはいえ、かなりの部数を買ったのだ。
「私、一冊もらっていいですか?」
諜報部の一人がレイディアントの写真集をめくる。鼻血を出しており、まるでアイドルを見ているかのようだ。ちなみに、その諜報部員は、銀獅子アレクシスの非公認写真集も持っており、アレ✕レイ、レイ✕アレなどと、どの呼び方が正しいのかを悩んでいる。
「はかどるわ…。」
「この時代に生まれてよかった…。」
女性達は、きゃっきゃっと言っており、男性をげんなりさせていた。
「それにしても、イケメンがモテるのは、共和国も王国も、対して変わらんな。」
「そりゃそうですよ。レイディアントは、きっと、これからどんどん出世しますよ?」
「なら、近くに人を入るか。」
「ぜひ、志願します!」
共和国の諜報部は、王国のいたるところに蔓延っている。ある程度の地位ももっており、レイディアントの近くに配属させるのは、簡単なはずだった。だが、後でレイディアント用心深いことを諜報部は知る。今までの王国貴族と明らかに違うため、レイディアントの対応力に悩まされることになる。現在のレイディアントの情報源は、既存の情報源しかないが、情報源は札束ビンタに弱かったため、共和国軍はその情報源を頼り続けることになる。
「その情報源は確実なのだろうな?」
「魔導機関連は難しいでしょうが、それ以外なら、大丈夫かと。やはり札束ビンタの力は偉大ですね。」
共和国軍の諜報部は、その札束の行き先を知らない。レイディアントが知った時、その使い道に呆れるしかなかったの




