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第2話 ひと零れの光

 視界が歪む。


 ベッドに横になったレオナルドは、めまいと吐き気に必死に抗っていた。

 どのようにして部屋に戻ったかは覚えていない。ぐにゃぐにゃとした廊下を、ただあてもなく彷徨ったくらいしか記憶にない。

 だがそれでもこうして今、自分はベッドに横たわっている。己の帰巣本能にすら嫌気が差した。


「ぐ……っぉぷっ!」


 口に酸っぱいものがこみ上げてきた。手でふさぎ懸命に飲み込む。

 どれくらい経ったか。胃液臭い息を吐いて、ベッド横のナイトテーブルに置かれていた装飾過多な水差しを手に取り、直接口を付けて垂れるのもお構いなしにがぶがぶと飲み干していく。


「がはっ! ……はぁっ! はぁ……」


 咳き込み、水とそれ以外のものを撒き散らす。めったにしない粗相だったが、ぐいっと袖で口を拭いてからまたも喉に水を通していく。

 無味無臭ではあったが、だからこそ清らかな喉越しに、少しではあるが吐き気はおさまってきた。気分は最悪だが。


 ほとんどを口にしてから一息ついた。首周りや袖は水浸し、ベッドにもびちゃびちゃと水痕がついていた。


「……ウィル」


 水差しを手に持ったままぽつりと漏らした。


 弟が疎ましかったのは事実だ。

 あいつがいなければ、と何度こぼしたかわからない。

 メイドの陰口にも悔しい思いをしてきた。


 だが──


「死んでほしいなどと……!」


 水差しを割れんばかりにテーブルに叩きつける。


 死んでほしいなどと思ったことは、一度だってない。

 『いなければ』という言葉だって、別にそういう意味で言ってきたのではない。近くにいなければ、という意味だ。そう己に言い聞かせる。


 ふと、近くにあったビューローに目を向ける。そこには一つの写真立てと、シンプルな置き時計があった。

 ふらふらと立ち上がり、写真立てを手にする。


「……酷い顔だな」


 後ろに両親がいる。前には仏頂面で目を背ける自分と、正面に向かって誰もが見惚れる微笑を浮かべている弟。そんな自分ら兄弟左右の腕を取って、満面の笑みを咲かせている妹が真ん中にいた。

 いつか何かのイベントで撮ったものだ。そんなことすら忘れていた。


「イヤだと言ったのにな……」


 ことりと置いてから、今度は置き時計を手に持った。

 長針が音もなく動いており、己の心中に関係なく、静かに時を刻んでいた。


『兄上。ご卒業、おめでとうございます』


 手渡された瞬間を思い出す。これも今になってようやく鮮明に蘇ってきた。『シンプルすぎだな』という自分の言葉に、弟は照れたように頭を掻いていた。

 両親からはマントと装束を、まだ小さかった妹からは手書きの絵本をもらった。そういえばあれはどこに仕舞ったか……?


 幽鬼のごとく部屋をうろつき、これまでの思い出の品々を掘り返していく。どうしてそんなことをしたのかはわからない。ただ単に、何か動いていないとおかしくなってしまいそうだっただけかもしれない。


 そうしてからしばらく後、ビューローの奥底から一つの手紙を手に取った。宛先は自分ではない。弟だった。


 ぺらりとめくると、走り書きのような汚い文字が目に入った。弟への卒業祝いのメッセージだ。

 三日三晩悩みに悩んで、何枚も何枚も書き直して、けっきょく一枚も完成せず渡せなかった。おそらくこれは最後の失敗作だろう。品物だけ投げるように渡して、さっさと自室に逃げ帰ってしまった。

 そういえばあの時渡した腕時計は、弟はどうしていた? これまでのイベントでは? 公務の場では? いつだって──そう、今朝も王宮を出る前に会った時、奴の手首にはきらりと光るものがあったような──


「レニー様……?」

「っ!?」


 引き出しが音を鳴らすくらいの勢いで手紙を仕舞い、ばっと振り返った。

 そこには彼の婚約者であるフィオナがいた。壁から半身を出して、のぞきこむように立っている。


「ご、ごめんなさい……ノックはしたのですが、返事をいただけなくて……ただ、物音がしたから……」


 突っ立ったまま申し訳無さそうに指をこすり合わせ、もじもじとしながら少しずつこちらに寄ってきた。

 まったく気が付かなかった。ノックの音など、レオナルドの耳には届いてもいなかった。


「そ、そうか……すまない。それで、どうした?」


 努めて冷静に尋ねる。


「その、レニー様の様子がおかしい、みたいな話を聞いたので……心配になりまして」


 レオナルドが部屋に戻る際、姿を見かけた者が声をかけたが、無反応なことを訝しんだ。顔に生気もなく、ふらついてもいる。

 ただ事ではない、と感じたその人物はその場を離れ、婚約者であるフィオナの耳に入れた、ということだった。


「そうか……」


 答えながらも内心で舌打ちした。今頃、さぞ噂されていることだろう。動揺していたとはいえ失態だった。


「本当にお顔がよろしくないようで……大丈夫でしょうか?」


 フィオナが両腕を伸ばし、レオナルドの頬を包むように触れた。

 オペラグローブのさらっとした感触と、布越しに感じる優しげな手遣いに、レオナルドの感情が爆発的に膨れ上がる。


 何もかも投げ出してめちゃくちゃにしてやりたかった。泣きついて、甘やかしてほしかった。耳元で優しく囁いて、頭を撫でてほしかった。

 貴方のせいじゃありません──

 たとえ上辺だけの言葉だとしても、誰かにそう言ってもらいたかった。


 レオナルドがフィオナの両手を掴んだ。


「レニー、様?」


 寸前で思いとどまったのは、先ほど目にした記憶の欠片が頭にちらついたから。

 そして目の前の女性を、本当に心の底から愛していたから。


 無理やりにではなく、そっとその手を下ろしてやった。


「フィフィ……お前との婚約を、破棄する」


 苦渋の表情で喉から絞り出す。視界が滲みそうになったが、残り滓の意思で必死に押しやった。

 言われた彼女は目を瞬かせ、少しばかり眉を寄せた。言葉を反芻し、意図を読み取ろうとしているようだった。


「……理由をお聞かせ願えても?」

「俺は……俺はもはや王にはなれん」


 すでに自分は粉々に砕け散ってしまった。『立太子』とデイモンは言っていたが、そこまでだろう。抜け殻のように生きる自分には、公務も責任も成せそうにない。


 王位を取るには血縁ですら蹴落とす、それ自体はわりとよくあることである。兄弟同士で暗殺や毒殺の応酬となった国は、実は少なくない。それどころか、一軍を率いて武力衝突に発展することもあるほどだ。


 だが映像一つで狼狽し、直接指揮を取ってもいないにも関わらず、この体たらく。たとえこの先、事実を隠して生きたとしても、きっとどこかでボロを出す。罪の意識に毎晩苛まれ、骨と皮だけになって亡霊のように過ごしていく。


 それはもう、生きていない。ただ死んでいないだけである。


「お前も知っているだろう、俺が陰でなにを言われているか。いや、俺だけならまだいい。フィフィ、お前まで嘲笑の的にされている。他でもない! 俺のせいで!」

「……レニー様」


 フィオナが声をかけるも、レオナルドは止められない。これまで心に溜めていたものを一気に吐き出す。


「ああそうだ! 俺はなに一つ取っても弟には敵わん! 見た目も頭も弟のほうが圧倒的に上だ! 唯一勝っているのは生まれた順番だけ! だからこそ王になれる可能性があった! 王になれば見る目も変わる! 俺もお前も誰からもバカにされず、トップに立って見返したかった! 王妃になったお前と一緒に歩んでみたかった!」

「レニー様」

「だがもはや俺は無理だ。兄弟すら陥れた俺に、王たる資格はない。それにどうせ誰もついてこないだろ。すまなかったな、フィフィ。お前も俺なんか見切って、もっといい男に巡り会え。お前なら誰とだってやっていける。王になれない俺なぞ無価値──」

「レニー様!」


 ぱしん、という音と共に、レオナルドの頬に小さな鋭い痛みを感じた。

 呆然とし、じんじんとする頬に手を当てて向き直ると、フィオナが目に涙を溜め、手を擦っていた。


「ふぃ、ふぃ……」


 人を殴ったことなんて、彼女はきっとない。擦っているのは変な当て方をしてしまったのだろう。彼女の手にも、傷を負わせてしまったかもしれない。いや、手だけならまだしも、心にまで──


 殴られた怒りなど微塵も湧いてこず、フィオナの涙を目にしたレオナルドは、ただただ自己への嫌悪と罪悪感に押し潰れされそうになる。


 だがフィオナは指で涙を拭い、静かにレオナルドを抱きしめた。

 柔らかな感触と、鼻をくすぐってくるいい匂いに、レオナルドが固まる。背中を抱きしめ返すわけでもなく、その両手は空を彷徨っていた。


 フィオナは顔を上げず、そのままの姿勢で話し始めた。


「覚えておいでですか? レニー様とわたくしが、初めて会った時のことを」


 レオナルドの脳裏に記憶が蘇る。言われずとも、はっきりと覚えていた。


 通常、王子の婚約者には複数の人物が割り当てられる。一般的な教養以外にも、王妃になるべく教育を受けなければならない。その辛さは誰もが逃げ出したくなるほどである。王家は、王妃というものは華やかなだけではないのだ。相手が一人だけでは替えが効かなくなる。

 だからレオナルドにも他に婚約者候補がいた。だがいずれもリタイア。それも仕方ないことだったかもしれない。誰が好き好んで苦労をして、あまつえさえハズレの妻にならないといけないのか。けっきょく、最後まで残ったのはフィオナだけだった。


 そのフィオナとの出会いは、彼女が幼いながらもある程度の教育に耐えているという、両親や教育係の評価を耳にしてからだった。

 王宮の庭園で顔合わせをした二人は、テーブルを挟んで初めての会話をした。


『お初にお目にかかります、殿下。フィオナ・ラインハートと申します』

『なんだ、これが俺の婚約者候補筆頭か。不細工だな』


 あまりにもあまりな出会いである。もし過去に戻れたとしたら、レオナルドは幼い自分を全力で殴りつけるに違いない。


「あ、あれは、だな……」

「ふふ、驚きましたわ。『なんですかこの人は』と思ったのが、正直な感想です」

「その、なんだ……あの頃の俺はどうしようもないガキで──」

「今もですわ」

「ぐっ!?」


 つんとそっぽを向いたフィオナに、レオナルドが声を詰まらせる。何か反論しようにも、言葉にならない。自分でも思うところがあるのか、ただ口をぱくぱくさせて目を泳がせている。

 その様子を、フィオナはおかしそうに見た。


「何度かお出かけもごいっしょしましたね」

「あ、ああ……お前の帽子が飛んでいったこともあったな」

「ふふ、あの時のレニー様ったら。『そんなものをかぶっているからだー!』と大声でおっしゃって」

「か、風が強いのはわかっていたことだろう」

「それでも、ざぶざぶと川に入られて。無言で差し出してくれましたわね」

「あれは、お前が泣きそうだったから……」

「そうですわね……」


 ぽつぽつと語り合っていく。幼き頃の甘酸っぱい思い出、学園での卒業話。ちょっとした失敗談など、とりとめのない会話を続けていく。

 それは二人が出逢い、共に長く歩んできた軌跡でもあった。


「わたくしが中庭で泣いていた時も、お花と一緒に労ってくれましたわ」

「お前の専属侍女がそうしろとうるさかったからだ」

「お熱を出して寝込んだ時も、一晩看病してくださいました」

「それもだな──」

「レニー様」


 小っ恥ずかしくなって言い訳ばかりするレオナルドを、フィオナが強く抱きしめる。レオナルドも、今度は自然に抱きしめ返すことができた。


「いつだって不器用で。子供みたいなところばかりで。だけどお優しくて。愛情を表現するのが苦手な貴方を、わたくしは心より愛しております」

「フィフィ……」

「王だから、とかではありません。レニー様、貴方じゃなければイヤです……どうか、どうかご自分のことを無価値などとおっしゃらないで……」


 空っぽだったレオナルドの心に、黄金の輝きが湧き出てくる。

 どうしてあんなに急いでしまったのか。あれだけ王位に執着してしまったのか。手に入れたいものは、すでにこの腕の中にあったというのに。


「先ほどおっしゃったことだって、わたくしのためなんでしょう? 詳しくはわかりませんが、なにかわたくしに迷惑がかかるような……そういうことでしょう」

「……ああ」

「ですが」


 フィオナがすっと離れた。温かさと柔らかさが消え、心細くなったレオナルドの腕が伸びる。


「フィフィ?」

「侮辱ですわ」

「っ!」


 さっきまでの優しい表情とはうってかわって、真正面から鋭く見据える。その姿にレオナルドの腕が止まった。


「わたくしでは受け止めきれないとでも? ただ泣いて、すがりつくだけとでもお思いでしたか?」

「そ、そんなつもりは──」

「ではどういうおつもりであったのでしょうか」


 フィオナの視線は揺るがない。その真っ直ぐな瞳に、レオナルドは心の内を見透かされるような気がした。


「ふぃ、フィフィ……」

「レオナルド・フォン・フェレニア第一王子殿下。このわたくし、フィオナ・ラインハートを見くびらないでほしいですわ」


 彼女の言うとおりだ。大事に想うがゆえの言動だったが、あまりに蔑ろにしていた。

 王妃教育を受けてきた彼女である。優しさや心遣いだけではない、奸知狡知も手の内にしているだろう。王家は、王妃というものは華やかなだけではないのだ。それを考慮せず、ただ一人の女性として扱うのは、彼女の誇りを傷つける以外のなにものでもなかった。


「それに、そんなレニー様……嫌いです……」


 今度は悲しげに眉を下げ、うつむいてしまった。拭ったはずの涙が、またしても目尻に溜まっていた。

 レオナルドがぎくしゃくと近寄り、膝を突いて涙を拭ってやる。


「フィフィ。俺に……俺に着いてきてくれるか?」

「はい、レニー様。イヤだと言っても抱きついて、どこまでもご一緒してやりますわ」


 『嫌い』と言われたからびくびくとして告げたのに、フィオナはころっと笑顔になって言った。


「……なんだかお前に丸め込まれている気もするのだが」

「なんのことでございましょう」


 ころころと鈴の音を鳴らすような笑い声を上げるフィオナに、レオナルドも苦笑して立ち上がった。ぐにゃぐにゃと曲がっていた視界は今やクリアになり、いつも通りの自室にしか見えなかった。


「すまんな……迷惑をかける」

「はい、慣れっこですわ。それに王兄、いいではありませんか。きっと楽に過ごせましょう」

「はは、そうだな」


 そう笑ったレオナルドには、もはや王位への固執はなかった。あるのはどこまでも、目の前の女性と共に歩んでいきたいという、強き想い。


「行くところができた。無事戻れたら、全てを話す」

「はい、行ってらっしゃいませ。どうかお気をつけて……わたくしはいつだって、貴方のお帰りをお待ちしております」

「ああ!」


 レオナルドが部屋のドアに向かう。

 出ていく寸前、肩越しに振り返った。


「その、なんだ……俺も、愛している……」


 返事を待たずに、レオナルドが足早に外に出ていった。

 残されたフィオナはほんの少し頬を染めるも、呆れた顔でぽつりと漏らした。


「本当に……不器用なんだから」


 レオナルドが出ていった部屋のドア。

 もっと言えば、彼の背中。

 それをフィオナはいつまでも眺めていた。

 いつまでも、いつまでも眺めていた。




 部屋を出たレオナルドは疾走る。階段を二つ飛ばしで駆け下り、曲がり角では減速もしない。メイドに当たりそうになったが、つんのめりながら体制を立て直した。

 後ろを近衛が必死に追いかける。動揺した声をかけるが、レオナルドは何も答えずただただ疾走り続けた。


 たどり着いたのは王宮の外に設けられた車庫だった。休憩時間だったのか、整備士や運転士が汚れた作業服で談笑していた。彼らは肩で息をするレオナルドを見るやいなや、すぐさま拝跪の姿勢を取った。

 だが誰もが疑問符を顔に浮かべていた。『いったいなぜこんなところに?』という心の声が聞こえてくる。


「こ、これは殿下──」

「挨拶はいらん。一番速いやつ、例のアレを頼む。全部使え。手続きはすっ飛ばしてかまわん、責任は俺が持つ」

「は、なにを──」

「いいから早くしろ!」

「は、ははっ!」


 レオナルドの剣幕に直立不動で答え、ばたばたと準備に取り掛かっていく。

 並んでいた魔導車のうち一台の前に向かい、端末を忙しく操作し始めた。


 セキュリティーロック、強制解除。起動チェックを省略。スターターモーター、クランキング。魔導エンジン点火。魔力回路を全接続。ブースター、解放。リミッター、全て解放。冷却用ラジエーター、循環開始。アクセラレーターとの接続、完了。最終ロック、解除。


 整備士と運転士が二人がかりで、全ての手順を最速でこなしていく。

 その様を焦燥した思いで眺め、怒鳴り散らしたい気持ちをレオナルドは懸命にこらえた。


 そうしてレオナルドの前に徐行でやってきた魔導車は、通常のものとは明らかに外見が違っていた。流線的で、余計な装飾やオプションは一切付いていない。滑らかで艶のある車体は、ある種の美術品のようにも見えた。


 今朝にウィルやアリスらが乗り込んだ物とは、根本から作りが違う。乗り心地や見た目を度外視した、ただただ速さに全てを注ぎ込んだ実験作──レオナルドが弟への負けん気で手を加えたものだった。とにかく汎用性、実用性に舵を取るウィルとは違い、『こういうものがあってもいいはずだ』と、完全に逆を進んでみた結果である。


 ウィルは『面白い』と称していたが、周りからは完全な失敗作扱いだった。確かに速いことは速かったが、魔力はバカ食いで航続距離は通常の三分の一。乗り心地も暴れ馬のように最悪である。それでいてコストは二倍という、唯一の長所を山ほどの短所が塗りつぶしていた。


 『速さだけは一人前』、『なにもそんなに急がなくても』、『必要になる場面が思い浮かばない』、『余裕がないのでは?』、『ケツも腰も痛え』などなど、散々な評価だった。発案者のレオナルドですら、こいつを忘れたくなるほどだ。


 だがまさか、こんなところで出番があろうとは。


 レオナルドが乗り込む。簡素な内装は尻に硬い感触を与えてきたが、今はそんなことどうだっていい。

 『早く出せ』と言われた運転士は疑問を丸投げし、足元部分にあった装置をぐっと踏み込んだ。


(ウィル……!)


 今さら間に合うとは思えない。たどり着いたところで、自分にできることは露ほどもないだろう。もしかすると口封じに自分も殺されるかもしれない。


 それでも彼、レオナルド第一王子は──兄は、弟であるウィルが向かった場所に飛ぶ勢いで足を急がせた。

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