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町の外、円形の壁の先は黒の台地だ。
昨日調べた黒土の上を、俺たちは歩いていた。
後ろには、トロンダールの円形の壁が徐々に小さくなっていた。
周りは荒野だ、少し先に見える小高い丘も黒い。
空は、出発を祝して……やはり晴れ空は見えない。ずっと雲が覆っていた。
「でも雨が降りそうで降らない、そんな空ね」
「魔族はいないようだな」
空を見ているレティアとユキが、それぞれ感想を言う。
「なあ、本当にこっちでいいのか?」
「はい、フロウフラは北西の方角です。こちらの山の方を、目指すようですよ」
「頼むよ、サラちゃん」
「はい」シブーストは諦めたのか、サラにウィンクしていた。
「なんか、気持ち悪いな。お主」
「何がだい、ユキちゃん?」
「その言い方をやめろ!」
ユキは、本当にシブーストの言い方を嫌がっているようだ。
だけど、シブーストもいつも通りらしい。
女にちょっかいを出すところは、相変わらずだ。
「そういえば、ノニール」
「なんっすか?」
「昨日、この土を調べたそうだけど……」
「この土は、呪いは確認されなかったっす。
最も、ボクは聖職者じゃないので呪いがあっても気づかないっすけど」
「笑ってごまかすな」
相変わらず細い目で、笑っているノニール。
まあ、ノニールは魔術師だから『呪い』とかそういうのには詳しくなさそうだ。
「魔術的な意図とかは?」
「魔術の儀式的な効果を、強めていく土っすね。
僅かながら、魔力を検知したっす」
「そういうのが、聞きたいんだ。で、どんな魔力だ?」
「魔法を弱める、そんな魔法っすね」
「魔法を弱めるか……魔王は勇者に封印されたんだよな」
「そうよ」答えるのはレティアだ。
現役の勇者であるレティアは、胸を張っているようだ。
「勇者は、魔王を魔法で封印したのか?」
「そんな魔法は、ないわよ」
「じゃあ、どうやって?」
「どうやってって……」
「レティア様、ちゃんと勉強していないっすね」
ノニールに突っ込まれて、難しい顔を見せるレティア。
「そうじゃないのよ、ちょっと忘れただけよ。えーと……」
「それより、何か感じないか?」
目の前にいたユキが、ただならぬ気配を感じた。
そのまま、腰にある刀の柄に手を添えた。
「ユキ……」俺がユキに問う前に、黒い地面が盛り上がっていた。
「来るぞ」
「そうね」レティアもすぐに勇者の剣を抜いて、構えていた。
「な、なんですか?」サラが怯えるなか、俺は小さなサラの体を俺のそばに寄せた。
「どうやらこれは……」
「出てくるっすよ」
ノニールの言葉と同時に、地面が盛り上がって出てきたのは骨だ。
そうだ、それは紛れもなくスケルトンが俺たちの行く手を阻むように現れたのだった。




