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翌日の朝を迎えた。
食事を終えた俺は、一人で宿舎の寝室に戻っていた。
大きなカバンを、俺は担いでいた。
そんな俺が一人の部屋に、ドアが開く。
「マトイさん」
「サラか、みんな揃っているのか?」
「はい、マトイさんが一番遅いですよ」
「わ、悪い」サラがかわいく怒っていた。全く迫力はないが。
そんな俺は、どこか元気がなかった。
「マトイさん、大丈夫ですか?」
「ああ、変な夢を見た」
「変な夢?」
「なんか暗闇の中で、声だけが聞こえる夢だ。
サラは、何も聞こえなかったか?」
「いいえ」サラが首を横に振った。
空気が悪くなったのか、俺は会話を変えた。
「それにしても、ここまで長かったな」
「これからも、長いですよ」
「そうか……サラ」
「なんですか?」遠い目で見ていたサラに、俺は声をかけた。
「昨日の話だけど、あの話が本当なら……」
「本当だと思います、それでも……」
それは、母親が戻ってこなかったということだ。
十五年も待ち続けたアントンは、この大陸に呪われていると言っていた。
「だとしたら旅を……」
「旅をやめるつもりは、私はありませんよ。
私は、ママのすべてを知りたいのです。
ママがどこでどう生きたのかを、私は娘として知るべきです」
「周りは魔族の住む世界だ。
手練れの精鋭たちが、集まっても全滅するような場所だぞ」
「だから、マトイさんに守ってもらいます。
前に行ってくれましたよね。俺を頼ってもいいと」
「あれは……その……まあ」
サラに言われて、俺はなぜか照れくさくなっていた。
「だから、頼らせてもらいます。甘えさせてもらいます。
私は戦うことはできません、足手まといなのもわかっています。
それでも、私をママのところへ連れて行ってください」
「わかったよ、俺はサラに助けられたからな」
「ありがとうございます、マトイさん」
サラの笑顔は、無邪気でかわいかった。
「じゃあ、そろそろ行くか」
「はい、マトイさん」俺とサラは、部屋のドアを開けた。
そこには、不機嫌そうなレティアやノニール、ユキとシブーストが姿を見せていた。
「遅いわよ、マトイ」
相変わらず不機嫌な顔で、レティアが俺たちを睨んでいた。




