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レティアは、獣協会のラオルを追い続けていた。
そして、何度となくラオルを目撃した。
彼は魔術の使い手で、いくつもの使い魔を使っていた。
本人と思われる者も、結局は偽物だったなんていうことが何度もあった。
そんなラオルを、今回も追い詰めたが少し今までと様子が違う。
「ラオル、追い詰めたわよって、形がおかしくない?」
それは顔の一部が変形していた。額のあたりが白い肌ではなく、何もない。
まるでゲーム画面でボリゴンの一部が抜け落ちたバグのようなそんな姿だ。
「君らとは、何度も出会って疲れたのだよ」
「あんたが、今回の鏡を割ったのかしら?」
「鏡?ああ、そうだとも」驚く程、彼はあっさりと自供した。
「やけにあっさりと白状したわね」
「まあ、必要だったからね『獣の子』のためには」
俺を指さすラオルの手が、やはり少し欠けているのかぼんやりと見える。
一応、俺を指差しているのだが。それでもラオルの体がどんどん変形していた。
「俺を狙う……か」
「我らは獣の子が必要なのだよ、この世界を正しい世界に戻すために」
「言っている意味が、わからないが」
「勇者よ、我を追うのならこんな狭い島を出たらどうだ?」
「どういう意味よ?」レティアがラオルを険しく睨む。
そのラオルも、ユラユラと揺れていた。人間の形もだいぶ崩れかかっていた。
「オズマン」
「オズマン?まさか本当にそうなの?」
「そうとも、我はここにいる」
「なんで白状するの?あそこはアイロニート大陸で」
「そう、大陸の外に魔法を放つのはいささか難しくてな。お前は我を倒すのだろ。
オズマンで待っているぞ、勇者よ」
「ちょっとラオル!」
「我には……時間がないのだよ」
そう言うと、ラオルの体がどんどん歪んでいく。
顔がだんだん長細くなったり、横長になったり変化していた。
「時間って、ちょっとあんた!」
「待っているぞ、獣の子……」
最後のセリフを言う前に、一斉にラオルの体からねずみが飛び出してきた。
「あんた、勝手に消えるんじゃないわよ!」
レティアは路地の壁に向かって、大声で叫んでいた。
「なあ、レティア。アイロニート大陸とかオズマンとか何なのだ?」
「獣協会の本拠地と噂された場所よ。オズマンは。
だけどサラを助ける手がかりではないわね」
「そうだな。ヤツも消えたしな」
「じゃあ、市場の方に戻りましょ」
人気の少ない路地から再び、にぎわう市場へと戻っていく。
その路地の手前、市場の前に一人の老人が立っていた。
見た目は長袖のシャツを着たどこにでもいそうな老人だ。
「おや、その全身獣は……」
すると、老人が俺の方に近づいてきていた。
どこかで見たことのある老人は、俺の前に立ち止まりジロジロと俺を見ていた。
「あんた……サラの護衛じゃろ?新しい女で女遊びかのぅ」
「違う!これはただの仲間だ」
「そ、そうね」なんだかレティアが不機嫌そうだ。
「それより、あたしはファルカメス勇者レティアよ。あなたは何者かしら?」
「わしは、アルカンテ国立病院のリーピじゃよ」
そう言いながら、リーピは俺の大きな体、と言っても腰のほうに手を当てた。
「そうかそうか、流石は獣化をしても本性は獣じゃのう。
新しい女に変更か、しかも裸のような格好で。今日はどう食すのじゃ?」
「食したりしない。実は、サラが大変なんだ」
俺はリーピに、今までのいきさつを話し始めた。
リーピの顔が数秒後に、曇っていくのがわかった。




