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アルカンテの中央には城が立っている。
この街の中央に建つこの城はアルカンテ城。そのままだ。
城で祝賀会を行っていて、パーティルームは華やかなドレスで身にまとう。
俺は相変わらずの服で、見栄えに変化がない。そもそも大きさがないので服の選びようがないが。
サラは白いドレスを着ていて、見違える程優雅で可憐だ。
長い髪は綺麗に結えられていて、上品な雰囲気もあった。
新しい格好でデビューした俺とサラだが、すぐに飽きていた。
話す相手もいないし、あっという間にいつもどおり二人になってしまう。
二人になったら、自然とベランダに出ていた。夜の街が、ここから一望できる。
「しかし、城に来るとは思わなかったな」
真っ白く綺麗な壁、床も青いカーペット。
豪華な食事に、綺麗な格好の貴族たち。
「私も初めてですよ」
「そうか」俺は相槌を打った。なんというか、あまり落ち着かない場所だ。
「少し平和になれば、色々と休めるよな」
「そうですね、戦争も終わりそうですし」
「時間があれば、街をじっくりと見て回りたいな」
「確かに、いろいろ忙しかったですからね。まあレティアさん次第ですけど」
白いドレスのサラが、眩しいほどに可愛く笑ってみせた。
ブーケを被れば、花嫁……の真似をした小学生女子に見えた。
そのレティアは、ルデース側の人間と集まっていた。
ノニールも、魔術師の方に囲まれている。
「そういえば、さっき見たお妃様の姿、綺麗じゃないですか?」
「ああ、前の方にいたっけ」
「うん、あんな姿……憧れますね」
「憧れね……」俺がふとサラのそばに視線をやったとき、サラの後ろにある庭の木になにか黒い生き物を見つけた。
「サラ、後ろ!」
「どうかしましたか?」振り返るが、サラは後ろの物を見つけられない。
「あれ、なんかいたようだが……」
「もう、マトイさんったら、お酒でも飲んだんじゃないでしょうね?」
「いや、飲んで……」再び視界にその黒い何かが見えた。
木の上から、ベランダの手すりに飛び乗っていた。
「サラ、コイツだ」そんな俺が指さしたとき、黒い何かは口を大きく開けて笑っていた。
そしてサラもベランダを見た瞬間に、驚いた顔を見せた。




