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久し振りに見るノニールは相変わらずだ。
元気というか、飄々としているというか、マイペースだ。
だけど、彼はアルカンテの貴族とのパイプを作るために裏工作をしていた。
俺たちが食べている食事を見ると、サラが申し訳なさそうな顔を見せた。
「ごめんなさい、ノニールさんの分は作っていないです」
「まあ、仕方ないっす」サラの謝罪も、ノニールは穏やかに返した。
「ノニール、そっちはどうなっている?」
「貴族たちっすか?」
「ああ」
「大体、まとまったっすよ。いやあ、まとまるのに時間がかかったっすが」
ノニールは、苦労した顔で答えていた。
「貴族の中には、今回の戦いで市民たちに恨みを持たねばいいけど」
「心配ないっすよ、ここのギルド長はかなりの曲者で、ソーリックも連れてきたし」
「まじか?昼間に、捕まったばかりだぞ」
「こういうのは、すぐにカードを切るタイプっすね。
元々レジスタンスと交渉するつもりだったっすよ、ギルド長。
で、貴族たちを納得させて、会議にこぎつけた」
「話が、やけに早いな」
「まあ、貴族たちも自分の財力を削って兵士を出すのは、嫌っすからね。
割と早く理解してくれて、助かったっすよ」
ノニールは、両手を広げて話をしていた。
「あとは、明日の会議で和平が起きれば戦争はも終わりですね」
サラの言葉に、俺は同意していた。
「その会議に関しては、俺は手を出せないからな。あとは会議しだいか」
「いや、頼みがあるっすよ」
「頼み?」ノニールの喋った一つの単語をオウム返しで聞く。
「そう、実は明日の祝賀会に参加して欲しい」
「俺?」ノニールが指をさしたのは俺だ。
「なぜ俺が?」
「勇者ルデースを、救った英雄じゃないっすか」
「ああ、そうだったな。だが断る」真顔で否定した。
「なぜですか?」
「俺はサラの護衛だ、簡単にサラのそばに離れるわけにはいかない」
ラオルの件もある。あの魔術師だってどこにいるかわからない。
「場所は城だ」
「城?」前にハイクイ医院長が俺に言っていたことを思い出した。
俺のようなイレギュラーな獣が、城で目撃されたらしい。その話を気にしていた。
「わー、お城ですか。私も行ってみたいです」
「いいのか、サラ?お前の力を必要としているのは……」
「明日は医者の方は、お休みのようですし。
せっかくお城に行けるチャンスが……だからその、マトイさん……」少し照れた様子でサラは言ってきた。
「え?」サラは照れている、どういうことだ。間抜けな顔のノケモンの俺は、真剣に考えてみた。
「ああ、そうじゃなくて……私はマトイさんと一緒にいたいです?ダメですか?」
「ああ、構わない」
「じゃあ、決まりっすね。今から貴族の方に戻る、連絡入れとくっすよ」
ノニールはそう言いながら、ギルドの部屋のドアを開けた。だがそんな中、俺はあるものを見つけた。
ドアの中には、黒い幽霊のような物体を見つけた。しかし、それをノニールは気づいていない。
「ノニール、なんかいる」
「え?」俺が立ち上がって、ドアの方を指さした。
ノニールも、俺に言われて周囲を見回したが何も見つからない。
「何もいなっすよ」
「おかしいな。二人は見なかったか?」
「なにかねずみか、なんかじゃないですか?」家主のクラーは意に返さない。
「私もです……」サラは否定した。
「まあまあ、いろいろあって疲れていたっすよ!それじゃあ、僕はもどるっす」
再びノニールがドアの奥に消えていく。そのドアの中には、今度は何も見えなかった。




