115
国立病院で、受付からドンドン奥に通された。
そして、たどり着いたのが一つの重そうなドアの前。
そのドアを開けると、いくつもの調薬機器が置かれた部屋に通された。
通される前に、マスクを渡されてサラと俺はつけてから移動する。
マスク姿の老人が、サラを見つけて近寄ってくる。
白髪まじりの眉が見え、腰も少し曲がっていた。
「お主がサラか?」
「はい、リーピさん」
「聞いている、サスマラ大学の天才少女だったか?名前は聞いているぞ。
あのクソジ……いやいやアットニー博士は元気をしているか?」
「はい、博士は元気をしています」
「あのジジイまだ、生きとったのか」
悪態を吐いたマスク姿の老人。
「これ、クラーさんからです」
「ああ、クラーの嬢ちゃんか。しかし、生憎だが今は忙しい。見ての通りだ」
調薬所は人が、かなり多くいた。無論、マスクをつけて作業をしている。
「傷薬を、作っているのですか?」
「ああ、火傷の痛み止めも。全くこちらも、手伝って欲しいぐらいだ」
「私も本当はその薬を作りたいのですが……ごめんなさい」
「ああ、いい。作戦に必要な薬なら、優先して作らせろと、貴族議会から指示も出ている。
その薬も、大方そうなのだろう」
「はい」
「まあ、いい。とりあえず、あそこを開けたから使ってくれ。
ただし、急だったもので、古いモノしか用意はできない」
「ありがとうございます、感謝します、リーピさん」
「おう、まあ頑張れや。あんた、今からすごく難しい実験をやるんだろ」
「どうしてそう思うんだ?」聞いたのは俺だ。
「顔を見ればわかる」リーピはそう言いながら、すぐに自分の仕事に戻っていった。
そんな間も、移動していたサラは隅にあるテーブルの場所に既に移動していた。
「わしも昔はそうじゃった。初めての実験は緊張するもんじゃ。
まあ実験は、基本的に失敗するものじゃよ。じゃが、気を落とすでない」
「でも作戦上、失敗はできませんね」サラは言い切った。
「まあ、武運を遠くで祈っておるよ。サラ医師」
リーピは少し離れたところで、仕事に戻っていく。
リーピの先では、慌ただしく薬の調合が行われていた。
「マトイさん、それじゃあ、そこで待っていてくださいね」大きく手を振りながら俺に応えていた。
「いいのか?」
俺の問い掛けに、頭を一回縦に振ってすぐに実験に取り掛かっていた。
結局、俺はそこで見守ることしかできなかった。




