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イセカイGO!  作者: 葉月 優奈
九話:『纒 慎二』と天才的頭脳
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サスマラ大学を無事に卒業した私は、旅に出ていた。

旅医者と、都市の病院で就職した医者の格差は大きい。

それでも私は各地を旅してきた。

二年ほど旅をした私は、かつての学び舎『サスマラ大学』に再び戻ってきた。


大学のキャンパスは相変わらずで、研究所の部屋に入っていた。

ちらかった研究室は大きなテーブルが置かれ、実験機器や薬品やらがびっしりと置かれている。

出迎えたアットニー博士は、さらに白いひげが長く伸びていた。


「博士、しばらくぶりです。近くを通ったもので、立ち寄らせてもらいました」

「そうか、サラ。無事でなによりじゃ。体は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。ちゃんと健康に気を使っていますよ」

「そうか、よかった」孫を見る祖父のような目で、私を出迎えてくれた。


「卒業してから二年以上か。あれからそちらはどうじゃ?」

「いえ、テルコンダルに行く足がかりさえありません」

「まあそうじゃろう。それより、仲間はいるのか?」

「傭兵は何度か雇いましたが、現在は一人で行動しています」

「それが、テルコンダルじゃしな。あそこに行きたがるのは、勇者であっても厳しいじゃろう」

「アットニー博士は昔、ダムレイ医師とテルコンダルにいたとか」

「いたが、彼は優秀な医者じゃよ。『神童』……彼はまさにそれじゃった。

獣化病のステージを、最初に発見したのも彼じゃ。その後、妻であるナーリー殿と薬を開発したのじゃが……」

「ママはいなくなった」

私の言葉を、アットニー博士は一切否定しない。


「おお、そうじゃ。サラ、そのことなのじゃが。今も旅医者を続けているのか?」

「はい、そうですが。それが、どうしました?」

「実は獣化病の特攻薬を研究していて、薬学部のチームと新しい薬を開発したのじゃが」

そう言いながら、アットニー博士は私に小さな瓶を三つ渡してきた。

人差し指ぐらいしかない、短い瓶。


「『ノクセント』というのじゃ。

この薬は、ステージ2までの獣化病の病原体を破壊することができる。

マウスには実験済みで、まだ人には試しておらぬ。

そこで、この三ヶ所の病院に配ってきてくれぬか?」

「ハルネード、ファメルカス、アルカンテ……ですか。また随分バラバラな場所ですね」

「ハルネードは鉱山の病も多いし、ファメルカスはかつて毒水騒動もあった地。

そしてアルカンテは港のある首都で、多民族が集まる場所だ」

「了解しました。経過報告は約一週間で、報告書は郵送でいいですか?」

「ああ、頼む。これは君にしか頼めないからね。

少ないが、これ持って行きなさい」そう言いながら、私にさらにお金の入った小さな袋も手渡してくれた。


「三ヶ所の報告書が確認したら……ここに戻ってくればさらに報酬を渡そう。

急ぎの研究ではないので、ゆっくりやってくれたまえ」

「わかりました」

三つの薬(ノクセント)とお金を、私は受け取って依頼を引き受けた。


「しかし、この薬は副作用とかはないのですか?」

「それが……一時的なもので『興奮成分』が出ておる。

精神的に不安定な場面で使うと、一時的にステージ上昇も確認されておる」


「では検討を祈っているよ。この報告が、獣化病の解明につながるかも知れないからな」

アットニー博士はそう言いながら、私を送り出してくれた――




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