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影医者マウン、こんな怪しい奴に今日だけで二度も会ってしまうとは。
こいつは一体何者だ。顔を仮面で隠しているが、なにか意味でもあるのだろうか。
仮面の中を予想する、医者は何人かいるがマヌケなヤツは俺の知っている知識ではない。
いや、そもそも医者を自称しているだけで偽物かもしれない。
「あの、どういうことですか?」
「私が助けに来た」
「今まで助けられた記憶がないけどな」
そう俺が言うと、首を横に振っていた。笑っているのか。
「まあまあ、いいじゃないか。そんなことは」
「そうかい、じゃあ、俺たちはこれで」
「おいおい、待てって!」慌てた様子で、俺らを引き止めた。
「なんだよ、何がしたい?」
「『ノクセント』がなかったのか?」
「ああ、なかったよ。空だ」サラは空の小瓶を持っていた。
「そうだろうね、レジスタンスは力を持っていたら容赦なく使うだろう」
「あんなことに使われるなんて……ひどい」
「だから、次に考えることはなんだろう?」
「ママのレシピを奪う」サラはそう言いながら、自分の持っている本を大事そうに抱えた。
「そうじゃない、薬の複製だ」
「複製?」サラは疑問を口にした。
「そう、兵器は大量生産できて初めて意味を成す。
だとすれば、複製方法を開発しないといけないけど、彼らは病院を味方につけているようだね」
「そんな、そんなことって」
サラは泣き出しそうな顔で、黒い仮面をじっと見ていた。
「でも、大丈夫だ。君には強い味方がいる。それに、その本もある」
「『ナーリーレシピ』これに……」
「似たような研究は、この本にあるはずだよ」
「なぜ、それを?」
「さあ、なぜだろう」ちょっと言葉が動揺した風に見えた、影医者マウン。
どこかキザなところがあるが、憎めないそんな気がする不思議な男だ。
「君はこの空の薬瓶を、復元できる力がある。いや、君にしかできない。
毒は薬になり、薬は毒になる。毒に侵された人間を救えるのは君だよ」
「はい……私はやります」
「それでいい、後は機器を探すことだ。
君がこの薬を復元できれば、この戦いを終わらせることができるかもしれない」
「あのっ、あなたは……」
「私はこれで、失礼するよ」
そう言いながら、ハシゴに登るのではなくそそくさと路地を出ていく。
最後までカッコ悪くフェイドアウトするのだった。
俺は、そんなやり取りを見ながら(やっぱり知らないヤツだ)と思いながらそれを見ていた。
「マトイさん、あの……」
「あの影医者のこと、何かわかったのか?」
「いえ、それは……そんなことより、薬の復元をしたいです」
「唐突に言うな、でも宛はあるのか?アルバーニ病院は、レジスタンスとつながっているし。
それなりに機器も必要だよな?」
「ですね、でもまずはみんなで考えましょうか。
一度宿屋の方に、向かいましょうか……」
「あっ、そういえばノニールから合流する場所を聞いていたな。そこに行くか」
俺はそう言いながら、ノニールにもらったメモを思い出していた。




