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ソーリックは虎頭だ。黒い毛の虎の頭。
足の早さには、かなり自信があるだろう。
対する俺は、巨大なクマの姿をしたグリゴン。
ノケモンの中でも最も遅いノケモンだ。図体ばかりかくて、動きも遅い。
鈍くて、遅くて、よく眠り、よく食べる、ぐうたらという言葉がぴったりだ。
ぴったりだからこそ、この手が使えた。
「なにっ、口を開けた」猛スピードで近づくソーリックは、急ブレーキをかけた。
そう、俺はレシピを一気に丸呑みにした。
「マトイ……さん」サラも驚いた顔を見せていた。
「ちっ、騙したな」
慌ててソーリックはサラのところに戻る。だが、それはさせない。
既に俺は次のコマンドを考えていたからだ。
足を踏ん張って、俺の巨体が飛んでいく。ソーリックの背中めがけて、《ずつき》が炸裂した。
ソーリックの体が、逆カーブを描くように背骨が曲がって、そのまま病室の壁に叩きつけられた。
その反動で、グルグル前転した後にサラの前で着地した。
「サラ、リュックを背負え!」
「え、はい」
ソーリックが気を失ってか、狼頭が挙動不審になっていた。
それでもサラは驚いた顔だけど、すぐに置いてあるリュックを拾って乱暴に肩に担いだ。
俺とサラがこの部屋を出ようとするとき、ソーリックはゆっくりと立ち上がった。
だが、俺とサラは動きを加速させた。振り向きさえもしない。
「くそっ、奴らを……絶対に逃がすな!」
虎男のソーリックは、忌々しく俺とサラの逃げる背中を見ていた。
鉄の扉を抜け、俺たちは進む。階段を上がりながら、サラが先頭に進んでいく。
階段を上りながら、サラがおそるおそる聞いてきた。
「あのレシピは……」
「ここにある」俺は腹をさすった。
「ほ、本当に食べたんですか?」
「いや、こいつは便利なんだよ」
そう言いながら、階段をさらに登っていく。
「どういうことですか?」
「あとで説明する、まずはここの出口を探すんだ」
「うん」そう言いながら、少し軽くなったリュックを背負い直して走っていた。




