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狼頭は、ドンドン俺たちの方に近づいてくる。
目を赤くした狼頭は爪を生やして、俺とサラを見ている。
しかし、これほど隠していたとは。
まるで、ゾンビ映画のゾンビのように、フラフラとこちらに向かっていた。
「サラ、俺の後ろに離れていろ」
「はい」サラを後ろにして、敵を迎え撃つ。
狼男は、次々と俺に襲ってきた。赤い目を光らせながら。
次々と爪を伸ばし、俺の腹や顔を攻撃する。
(ちょっと、ピリピリ痛いかな)
それでも、狼男の爪ごときの攻撃は相手にならない。
束になってきても、それは変わらないが。俺の前にいる敵が多い。
(地味に痛い)
数が多ければ、それなりにダメージがあるようだ。
それでも、俺は次々と狼男を倒していく。
今回の戦いでも、ほとんど手加減はしていないな。
手加減する余裕もないので、次々と狼男が吹き飛んでいく。
「マトイさん……」
「平気だ」背中にいるサラに、声をかけようとした瞬間に俺の横をすり抜けてくる奴がいた。
俺が反応しようにも、狼男が阻んで来た。
それでも、向かってくる狼男を相手にしている。
無謀にも突っ込んでくる狼男を、俺はなぎ倒して立ち尽くしていた。
疲れは全くなく、俺はじっと細い目で虎男を見ていた。
「そこまでにしようか」
少し離れたところからソーリックが、俺に声をかけてきた。
ソーリックは右手で、首を締め付けられているサラがいた。
軽くて小さなサラの体が、持ち上がっている。表情は苦しそうだ。
「ううっ、私……」
「君は強い、よーくわかったよ。これだけの獣戦士たちを相手に、よく戦える」
そう言いながらもソーリックは、左手で白いサラのローブの中を漁っていた。
「持っていないか?」
「あのレシピは、絶対に渡しません」
「なるほど、君が持っているのか?」
ソーリックが、俺を指差す。俺はリュックサックを背負っていた。
「そのリュックが怪しい」
「その通りだ」
そう言いながら、俺は右肩にかかった大きなリュックを下ろした。
リュックの中から、大きな本を取り出してソーリックに見せてきた。
「これか?」
「そう、それを渡してもらおう?」
「サラと引き換えにしよう?それでいいか?」
俺はソーリックに条件を出した。
「物分りがいい、君は」
「やめて……マトイさん……」
サラは、俺に反対をしているが、首を持たれて言葉が出ない。
「じゃあ、同時に離れて本人が取りに行くっていのは?」
「いいねえ、それはいい」
「その前に、この狼頭のザコをどかしてもらおうか」
俺の周りに、狼男がまだしぶとく残っていた。
「交換は、俺とあんたしか動かない。その条件でどうだ?」
「いいのか?そちらは?」
「いいよ、俺は」
俺はじっと見ていた。ソーリックの指示で、狼頭の距離を下げられた。
俺のそばに、大きなレシピ本。ソーリックのそばにはサラ。
「じゃあ、手を離すぞ」
「ああ、俺も離す」同時に俺とソーリックは手を離した。
そして互いが手を離した瞬間、ソーリックは動き出していた。
虎のような素早いスピードで。




