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ソーリックの様子が、明らかにおかしい。
それに、ここに眠っているのは何だ。病に冒された獣の人間ばかりだ。
白い部屋にあるその空間は、余りにも異質だった。
サラも驚いて、ソーリックを見ていた。
「彼らは優秀な戦士、ここは戦士の眠る場所」
「あなたたちはやはり、獣を……」
「ええ、あなたたちの推理通りです。でも、今はあの薬を渡すわけにはいかないですよ」
「獣を戦士として使って戦う、それは非人道的ですよ」
サラの不満と怒りが止まらない。
それでも、俺が前に出て身構えていた。
「そう、そのとおり。これは非人道的な戦いだよ」
「だったら、何故?」
「そこでサラ、君を呼んだ。獣化病に詳しい君なら、より強い獣の兵士を使えるはずだ。
苦しみを与えぬまま、手持ちの薬は全部使ってしまったからね」
空の小瓶を、俺たちに向けて投げ返した。
それをサラが、悲しそうな顔で拾っていた。
「そこに君が現れた。薬剤師ナーリーの娘、サラ……」
「もしかしてレシピ?」
「そう、『ナーリーレシピ』」
「そんな……」小さなサラは、ショックを隠しきれない。
「レシピには、ナーリーが記さなかったいくつかの研究結果も乗っている。
例えば、強力な殺人兵器の作り方……なんかも載っているそうだ。
どういうものか知らないが、是非今後の戦いのために必要ですから」
「戦いを止めるつもりはないのですね」
「ええ、この国の中から完全に貴族から追い出す。
でもそれだけではダメだ、自分たちはさらに勝利をするために『ナーリーレシピ』は欲しいのだよ」
「絶対に渡しません」
「……だろうと思ったよ」
そう言いながら、指をバチンと鳴らすとベッドに眠っていた人間が目を覚ました。
それは、狼頭たちだ。目を赤くして、俺たちを見ていた。
数は十人、いや二十人近くいるだろうか。
「とりあえず、君を殺してレシピをいただくとするよ」
勝ち誇った顔で、ソーリックは狼頭を俺たちにけしかけていた。




