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おまけ話13

 少し文字数が多くなりました。

〈おにぎりを作ってみようっ!〉



「……とゆーわけで、今日のお昼ごはんは、おにぎりになります」

「いや、意味が分からないんだが……ちゃんと経緯けいいを説明してくれ、ミナミナ」


 えー、面倒臭いなぁ。しないと駄目? 駄目ですか? はい、駄目っぽいですね。やれやれ、面倒でダルい世の中になってしまったなぁ。



「この前、料理部で先輩たちがおにぎりを握っていたのを見て、俺もちゃんと意識したおにぎりを作りたくなっただけだよ。意味なんてないから~」


 おにぎりを握るのに、深い理由なんてものは、今んとこ俺にはない! 残念ながら!!



「ほお、勉強熱心で良いんじゃないか。僕は真面目に昼飯を作るのなら応援するぞ」


 そんな、ひどいよ、アイス君。

 僕は、いつでも清廉潔白せいれんけっぱくで、品行方正ひんこうほうせいを心掛ける、生真面目きまじめなギャルゲー……じゃなかった乙女ゲー主人公じゃないか。

 一体、誰が清浄無垢せいじょうむくなアイス君に悪質な嘘を吹き込んでいるのだろうか。まったく、デマを流すなんて許せませんね、プンプン。


 僕は、不真面目が洋服を着て歩いていると、親しい人に言われる程の人間ですよ――――って、やべ、いけない。本音が口からポロリとこぼれる前に、思考を遮断しゃだんっと、ね。



「…………(ろくでもないことを考えてそうだ)」

「まだ、何も言ってないのに、不安げな顔をしなくても」

「ミナミナは日頃の行いが悪すぎて、何をしていても怪しく感じるんだ」


 繰り返す青春時代を面白おかしく堪能たんのうする為には、善悪関係なく積極的に行動しないといけないんだけどな~

 ほらっ、デートとかイベントとか、多少はそーゆーの必要じゃん?






「え~っと、話が大分逸れてしまったが、こほん、仕切り直しで……おにぎりを作りますぞーっ!」 


 実は、おにぎりを作る為に、あらかじめ炊飯器をセットしておいたのだよ。どれどれ……

 んー……一時間くらいお米を水にひたしておいたから、美味おいしく炊けているはず。


 炊飯器を開けると、むわっとした白い蒸気が顔に当たり、炊きたての白米の良い匂いが鼻を刺激する。うむ、上出来だ。



「台所でコソコソとやっていると思ったら、それか!」


 ずっと俺の周りをうろうろと飛び回っていたアイスは、今、上の位置から炊飯器の中身をのぞき込んでいる。

 あんまり近いと湯気が掛かるぞ。



「準備万端の状態で、おにぎりに挑みたい男だからね、俺は」


 あとは、どんぶりやラップ、それと塩と海苔のりそろえて置こう。

 俺は用意周到な出来る男だからね。



「それで、ミナミナは、どんなおにぎりを作る予定だ?」

「おっ、よくぞ訊いてくれたな、アイス」


 とても良い質問だ。

 ズバリ、お答えしよう。



「卵かけご飯だ」

「は? えっ? はぁ?」 


 俺の肩に留まろうとしたアイスは、空中でずっこける。まるでコント。空中コント。


 なんつーか、反応がオーバーリアクション気味で、ちょっと大袈裟おおげさな気がする。



「アイス、もしかして、卵かけご飯という食べ物を知らないのか? いいか、卵かけご飯とは、ご飯の上に生卵が乗っかっている……」

「いや、だいたい知っているから。僕が驚いたのは、おにぎりの具(?)にすることだ」


 まぁ、卵かけご飯のおにぎりって、お店で見掛けないもんね~

 だからこそ、今回俺は選んだのだけど――卵かけご飯、君は俺に選ばれたのだよっ!



「今日作るおにぎりのコンセプトは、コンビニやスーパーで、あまり見掛けない珍しいタイプのおにぎりだ」


 料理部のみんなで作ったおにぎりではなくて、どうせなら、オリジナリティあふれるおにぎりを作りたくなったんだよねー

 それに、部活動で学んだことを活かして応用したい。



「それ、大丈夫なのか? 素人しろうとが作っても絶対に美味しく出来ないだろう」

「卵かけご飯自体は美味しいから、おにぎりにしてもイケるだろう。大丈夫、大丈夫~♪」


 アイスは心配性だなぁ。

 よし、安心させる為にも、卵かけご飯のおにぎりを完成せねば成らぬ。






 卵をパカリ・パカリと割り、器に中身を移動させる。

 そして、箸を使ってグルグルと全卵ぜんらんをかき混ぜる。

 卵白らんぱくを取り除いて、卵黄らんおうだけを使用する人もいるけど、俺は両方を使うタイプだ。


 白身の部分だけを残しても後で何に使うのか、料理初心者の俺には、さっぱり見当がつかないからな……お手上げ状態になるのは、目に見えて判る。



「固めの黄身(醤油しょうゆ漬け)を白米の真ん中へ無理矢理()じ込むのかと思ったが、そうでは無いのだな……」

「そっちは時間が掛かりそうなやつだからなー、パスだ、パスっ!」


 アイスとなごやかに会話をしながらも、手はテキパキと動かす。

 次はよそったご飯の中へ、先ほどいた卵を流す。

 汁が白米に染み込んで、徐々(じょじょ)に黄色く色付いていく。



「なぁ、これだとさ、米の部分がグチャグチャにならないか?」

「えっ……? ああ、そうだな。でも、卵かけご飯って最終的には、卵を崩すから」


 俺は、ご飯の上に生卵が乗っている写真映りの良い卵かけご飯よりも、最初から卵を崩して直接ご飯にぶっかけるタイプの方が好きなんだよなー

 つまり、これは俺の好みです。えへへ。



「あとは、卵が均一きんいつになるように混ぜるだけ」

「そ、そうか……(握るときに手が汚れるのではないか?)」

「それが終わったら、ご飯をラップにつつんで……」


 ………………卵かけご飯を見て、俺は、手を止める。



「急に無言になったけど、どうかしたのか?」

「…………」


 うわーー……冷静になって見たら、これってさ、これってさ、まじ、あれじゃん。



「…………アイス、今さっき、気付いたのだが……おにぎりを握るのにしては、これ、緩くないか……?」

「――気付くのおそっ!!」


 卵の水分をたっぷりと吸った白米は、べちゃべちゃの状態だ。

 海苔を全身に包むとしても、ちょっと柔らかすぎるな、これ。



「やっぱり、卵を二個使ったのが、いけなかったのかな?」

「アホだろ、お前。なんで、二個も入れたんだよ」


 俺の特製『贅沢ぜいたく仕様25(にっこ)り卵かけご飯』をdis(ディス)らないで欲しいなぁ。

 悲しくなっちゃうので、しかるときは優しくなだめるようにしてねっ☆彡



「おにぎりは止めて、どうしようかな~? うーん、勿体無いけど、別の食べ物に変身させるか」


 と、なると、卵かけご飯から、どう変化させるか。

 俺的には、なるべくなら、火をいれて水分を飛ばしたい。それと、おにぎりサイズに切り取った海苔も有効活用したい。


 俺の我がままを叶える料理は―― 






「……なるほど。それで、炒飯チャーハンになったのか」

「はふはふ……うまっ、うまっ」

「美味しいのは判ったから、ゆっくり食え」


 冷蔵庫にあったハムとねぎとピーマンを細かく刻み、フライパンで炒める。

 具を十分に炒めたら卵かけご飯を投入して、良い具合に馴染なじませる。

 最後に、小さくバラバラにした海苔を上に散らして、はい♡出来上がった炒飯っ! まじ、ウマイです。


 やはり、隠し味(?)のマヨネーズが良いかんじに効いたな。

 マヨマヨは炒飯に合うサイコーな調味料ならぬ超魅了(みりょう)だから、当然の結果か。



 







〈おにぎりを作ってみようっ!!〉



 ――プツン――


 テレビを消した。

 戦国ファンタジー学園の前田利家まえだとしいえが、Tシャツの家紋を見せ付けながらサッカーをしていたが、構わず電源を落とす。



 壁掛け時計を見ると、針は十一時を指している。

 どうやら、おにぎりを握る時間がやって来たようだ。

 今日こそ……いや、今度こそバッチリ上手うまくて美味うまい、ウマ×ウマおにぎりを作ってみせる!!



「リトライ・おにぎりが始まるな……」

「ミナミナは、またおにぎりを作るのか。おにぎりが本当に好きだな」


 アイスに『おにぎり専門の食いしん坊=おにぎり大好きボーイ』だと思われている、だと……!? 


 どうする? 訂正する? 悩みまする?

 スルッと良いかんじに働かない。あたま・クエスチョン状態の俺。


 まぁ、そう思われても特に問題はないし、そのままでいいか。面倒だし良い具合にスルーしよう。



「フッフッフッ、この前の卵かけご飯では、うっかり失敗してしまったが、今日はそんな失態を犯さないぜ。水分少なめの具で、バッチリ仕留めるっ!」

「仕留めるって……随分ずいぶんと攻撃的な握り飯だな」


 最近流行(はや)りのおにぎりは、大胆不敵だいたんふてき虎視眈々(こしたんたん)と人間のハートを鷲掴わしづかもうとしているからな。


 おにぎり界は最早もはや弱肉強食の世界。


 うわさによると、サンドイッチ界隈も荒廃こうはいしているらしいし、主食は大変だなぁ。


 一方、おかず界隈で大人気の唐揚からあげやハンバーグたちは、腕組んで高みの見物けんぶつしてそうだな。人気者で売れっ子だし。



「いきなり上級者コースを狙ったのが、失敗した原因だと判明したからな。今回、俺は反省して、おにぎりの難易度なんいどを下げることにしたのだ。だから、初心者気分でルンルンと楽しみながら料理をすることに決めたのだ~♪」


 前回は、あれだよ、放送事故みたいなもん。本番は、これからなんです。



「難易度? 難易度の問題か……? いや、違うだろう」

「まぁまぁ、ツッコミは後でやってね。サクサクっとぉ、おにぎりの準備を始めるぞー!」


 てのひらをパンパンたたいて始まりの合図をお知らせする。気合いは充分じゅうぶん


 炊飯器には白米が、テーブルには茶碗・ラップと来て、塩・海苔のりと必要な食材がそろっている。

 準備はバッチリととのっている。後は具のみ。

 俺は冷蔵庫に向かい、おにぎりの具を取りに行く。

 そんな俺の背後に静かに付くアイス。後ろから具をのぞき込む気かな。



「具は何にするんだ?」

「気になるのか? ヒントはネバネバする食べ物だ」


 大ヒントあげちゃいます。

 これは、もうアイス選手、正解するしかないです。サクサクッとピンポンしちゃいましょう。



「んーっと、薯蕷とろろか? それとも秋葵オクラか? あとは東北の郷土料理のだし……とか?」


 アイス君、きみってば、微妙に正解を外していくなぁ。器用に不器用だね。 



「ブブーッ、不・正・解。正解は納豆で~す~」

「ゲッ! 具はりにって納豆なのか……」


 その反応は……ふーん、もしかして、納豆が嫌いなのかな? なるほど、なるほど……


 冷蔵庫から取り出した納豆を、アイスに見えるようにわざとかかげる。


 すると、嫌そうな顔を俺に見せ始めるサポ妖精君。

 これは、多分納豆が嫌い過ぎて選択肢から除外したパターンだな。ネバネバとした食べ物といったら納豆の名前が最初に出るはずだもん。

 存在を抹消まっしょうされて可哀想な納豆。嗚呼、不憫ふびん



「納豆が嫌いなんて意外だな~、好き嫌いがなさそうなタイプだと思ったけど」

「納豆はくさいから苦手だ……」


 あらー、においが駄目なタイプか。なら、仕方がないね。

 人間、いや妖精だって、嫌いな食べ物の一つや二つや三つ、あって当然だし。



「そんなに嫌いなら、離れた所で見学するか?」

「いや、近くで見る。ミナミナは絶対に何かやらかすからな……」


 信用ないね、俺。悲しいです。






「では、具の準備をするぞ」


 納豆の入ったパックを開ける。



「………………おい、ちょっと待て。本当にその納豆を使うのか?」


 ……? 賞味期限は過ぎてないし、一体何に問題があるんだ?



「普通おにぎりの具に使うなら、小粒納豆や碾割ひきわり納豆を使うだろう……何で大粒の方を選ぶんだよ」

「それはね、大きいものが好きだからだよ。おっと、勘違いしないでくれ。小さい妖精のアイスも好きだから、ちゃんと!」

「小さいは余計だ。要らん情報だ、まったく」


 照れながらもむくれる態度のアイス君。

 面白いのでツンツンとつついて揶揄からかいたくなったけど、まじ切れプッツンしそうだな。

 まぁ俺は分別の付く男だから。そーゆーことをしない男なんで、そっとそのままにしとこう。料理は楽しくやりたいものだし、ねっ!



 さてと、これからどうしようかな。

 もう納豆のパックは開けちゃったんで使うしかないし。



「そうだ、ひきわりっぽく刻めばいいのか」


 ひきわりって納豆を刻んで作るのかは知らんけど、まあそれっぽいものが出来れば、俺的に良し! 

 俺は玄人くろうとではなくて素人しろうとなんだから気にしないのである。皆、俺にならってゆるく行動しよっ!



「碾割りって大豆をくだいてから菌を付けるんじゃなかったか……?」


 アイスが何やら首をひねっているが、気にせず納豆を細かくする。


 アタタタタッ、アタタタタッ。

 必殺、微塵切みじんぎりっ! 微塵切りっ!

 まな板の上で、華麗に包丁乱舞っ!



「出来たーーっと、おっし、味見開始!」


 んー……細かいけど、味は、ひきわりっぽくないな。何かこう、風味が違うっていうか……ミニ納豆的なかんじ?

 でも、細かくなったので合格としよう。早速、タレを入れて混ぜ混ぜ。



「具が完成した。では、おにぎりに埋め込む作業に入るぜ」

「急に真面目な雰囲気になったな、ミナミナ。先程とは大違いだ」


 これからは、ガチ真剣な作業に入る。おにぎりの心臓()を込める大事なことだからなー、大真面目にやらないと。


 塩をパッパッと振り掛けた手で握った白米に、くぼみを真ん中の部分につくる。


 海苔で白米をおおってしまえば、納豆のねばり気は気にならないと思うが、ちと心配だ。上手くいくといいんだが……



 へこんでいる箇所かしょへ納豆を流し込む。

 どんどん入れる。どんどこ入れる。どんどん入れる。どんどこ入れる。

 あ~~、満杯になってきた。

 ちょっと穴が小さすぎたか?

 穴を拡張してーっと、それと、白米を少しすか。このおにぎり、小さい気がするし。もっと大きく・ビックにしないと、なぁー!



「おい! ミナミナ、お前、何をやっているんだ!」

「えっ、何って、おにぎりに具を入れている最中さいちゅうだけど?」


 はしではなくてスプーンでチマチマと納豆を入れる作業をやっています。おにぎり作業員、みなと君です☆



「はぁ、何で納豆を()()()()()()()()()()()()()――これでは納豆を細かくした意味がないだろうに」


 えーー! ひとパック丸々入れちゃ駄目なのーーっ!? 何でだ? おにぎりのルールブックに、そうしるしてあるのか?



「嘘だろ、細かくするのは食感しょっかんの為ではなかったのか!? それ以外に何の意味があるんだ……!!」


 驚きで衝撃が走る。


 そんな、白米の中に納豆を全部突っ込むのは有り得ないのか……? 本当に? 本当に?


 ――いや、そんな訳がない。



「…………」


 俺が証明して見せよう、グリグリ。



「えっ、ちょっ、ぞ、続行するのか?!」


 ちょっと外野(男子)うるさいですよー、集中しているから、静かにしてよねー



「それは流石さすがに無理が……って、あああ、やっぱり白米がオエッて吐き出しそうになっている。もう、これ以上、白米を虐待するのは止めろ! 白米が可哀想だろうが」


 アイスは俺の周りをビュンビュン飛び回って抗議する。

 しかし、俺は無言でグリグリを進めて行きます。

 今日の俺は自動納豆投入マシーンです。



「……敬虔けいけんな米農家に通報するぞ、ミナミナ」


 駄目だ、このままだと白米への暴行の疑いで捕まる。打開策、打開策、ひねり出せ打開策……






 確かに今の状態では、納豆を全て受け入れられないだろう。

 ならば、どうするか。

 答えは簡単だ。創作者()である俺が包容力(白米)を与えればいい。

 フフフ、器の大きいおにぎりにしてあげようね、ペタペタ。ふところの大きい奴はモテるよね、ペタペタ。



「……でかく育てよ」


 雪だるまのごとく、白米を盛ってふくれさせる。


 つついいゆる春、ですな。



「おにぎり、でかっっ!! これではギャグ漫画じゃないか」


 一回ひとまわりも二回りも大きい(器の)おにぎりになりました。

 わおっ、凄い包容力。納豆の受け入れ体制万全だな。これなら……



「………………!! おおっ、納豆がヌルリと入ったぞ。嬉しさで感動・感涙かんるい・ホームラン!」


 茶色い染みも出来てないし、大きさも相まってなかなかの出来前。

 あとは、海苔を巻いたら完成だ。

 おっし、納豆おにぎり、一丁いっちょう上がり!!





「で、お味はどうだ?」

「……まあまあかな、うん。そして、でかいな、このおにぎり」


 ぶっちゃけると、納豆ご飯の方が美味かったような……気のせい、かな?


 でも、おにぎりを作ることで、料理の経験値が入ったような気がする。おにぎりは料理に入るのか、ちょっとあやしいけど。


 いや、関係あるよね。Kankeかんけーあるはず。俺は信じているぜ。




みなと「さてさて、このおにぎりたちにお金を払うなら――」

アイス「払うなら?」

みなと「――良い御縁ごえんがあるように、おさつで支払いしましょう」

アイス「お札で支払い……」

みなと「御縁札。五円札。御飯札。どのお札にしようかな~」

アイス「最後だけ何か違うような……?」

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