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特殊スキル持ちサラリーマンの日常 5

ようやく、戦闘シーンまで終了。

日常ホラーなのに、何故に長編になるんだろう?

私の小説家のスキル、何か変なのか?

作者、稲葉小僧


夜も更けた。

今、俺達3人がいるのは、この島の浜。

幸いにして、定期船や漁船が着くポートは別のポイントなので、そちらには悪霊や怨霊は出てこない。


「そろそろ、幽霊や悪霊たちが出てくる頃だ。今の時間だと、まだまだ弱い霊しか出現しないので、蒼月さん一人で対処可能なんだが。夜半すぎから本格的に強力なやつが出てくるんで、俺が出るよ。でもって、丑三つ時を迎えてからは、親玉クラスの祟り神レベルのやつが登場するんで、そいつの対処をあんた、山本さんにお願いしたい。さすがに祟り神となると、俺の力が半減どころか効いてない時もあるんでな」


う〜らぁ〜、う〜らぁ〜めし〜……

などと言葉にもならない奴は怨霊にも悪霊にもなれない低級霊(俺には見えないし聞こえない)

さすがに自分で守護霊が数体いるという蒼月さんが霊の群れに近づくだけで消えていく(という光景が見えると、田無さんが解説してくれる)

それが数時間。

夜半すぎになると、空気が変わる。

そのくらいになると、さすがに俺にも感じる(見る聞くはできないが)

昼間は暖かかった風が急激に冷風になり、こりゃ凄いやつが来たなと思う。

蒼月さんが引き、こちらへ戻ってくる。


「さすがに私では、あれの対処は無理です。田無さん、お願いします」


交代で田無さん登場。

何と戦っているのか見えないが、美しいと見惚れるレベルのシャドーボクシングや空手の型演技を見ているような。


「かなり悪霊化が進んでいる霊のようですね。でも、田無さんは何も影響受けずに戦っているように見えます。ちなみに私ですと、あのレベルの悪霊では守護霊たちも敵いません。ただ、私はかなりの数の霊を相手にできますが、田無さんは単体で戦うのみ。一対多数ができないんです……まあ、あのレベルの悪霊に対して互角以上に戦える陰陽師も霊媒師もいないと思いますけど」


田無さんの戦いも数時間に及ぶ。

しっかし、体力あるよなぁ、彼。

シャドーボクシングや空手の型練習するにしても、これほど長く続けられる者はいないだろう。


そして、さらに海風が冷たくなってくる。

田無さん言うところの、祟り神クラスが出現するという時間なんだろう。


「蒼月さん、行ってきます。あ、くれぐれもご注意を。俺が歌い出す前に、耳をふさいで目を閉じて、浜辺に伏せてください。田無さんが戻ってきたら、彼にも同じようにしろと伝えてくださいね」


俺は、持参した水筒から少量の水を飲み、ネクタイも緩め取り、上着もワイシャツも脱いで上半身は下着のTシャツのみに。

ズボンは、こういうことを予想して、緩めのジーンズにしてきた。

未だに戦闘意欲が衰えていない、田無さんのところまで歩いていく。


「時間です、交代しましょう。あなたは戻って、耳と目を塞いで浜辺に伏せていてください。忠告しますが、私には見えないものが見えるあなただと、歌で喚ばれるものをリアルに見てしまう危険があります。決して聞かず、見ないでください」


田無さんが、俺の真剣な表情を見てとり、さっさと蒼月さんの元へ走っていく。

二人共、浜辺に伏せていることを確認して、


「俺には何も見えないし、聞こえない。だから、あんたが祟り神だろうが悪霊だろうが関係ない。俺は、今から歌うだけだ」


俺は、懐かしの……というお題で昔はよくTV番組でやってた戦時中歌謡や軍歌をメドレーで歌い出す。

まあ、恨みがあるのも理解できるが、それなら消える時にも懐かしさくらいは感じてほしいからな。

歌い出しから、空気が冷風から少し暖かくなり、海風が浜風に変わる。

空が妖しく色づくのは俺も初めて見るが、この世のものとも思われぬ色彩に彩られた雲や雷も発生。

それにしては、海は穏やかであり、波もそれほど高くならない。

海原の一部で何かが戦っているような感じは受けるが、俺には見えないし聞こえない。


正味、一時間近く歌っていただろうか。

さすがに声は枯れ、喉も痛くなり、これ以上は無理ということで、俺は歌をやめる。

俺は、浜辺に伏せている二人に近づき、伏せている状態から腕を取り、立たせる。


「お待たせ。一応、終わったようなんでね。祟り神や怨霊が残っているかどうか確認してくれ、俺には無理なんで」


二人に最終確認を頼み、何もいない、文字通り霊たちが消滅していることを確認すると、俺達は旅館へ戻る。


「いや、山本さん、あんた凄いな!」


砂を落とし、湯を落とす前の風呂へ入らせてもらい、俺達はひと心地着く。

そして、三人集まって今日の感想を聞いたのだが、田無さんの口から最初に出たのが、これ。


「俺達が数ヶ月かかって何も進まなかった厄介な心霊案件、あんたが来てすぐに親玉の祟り神が消滅って、効果抜群すぎるだろ!こんなの下手すりゃ人間最終兵器だぞ、おい!」


最終兵器は言い過ぎだと俺が言うと、


「いいえ、私、最終兵器を超えると思うわ。祟り神って神様よ。それを消滅させるなんて馬鹿げたことができるのは、もう人間の所業ではないと思います」


あのなぁ……

二人から散々な言われようをしたが、心から感謝されているのは確かなので、ちょいと田無さんに聞いてみる。


「もしかして……俺が歌ってる時に何か見ました?チラッとでも……」


答えが帰ってくるとは思わなかったが。


「ああ、本当にチラッとな。あまりの光景に一瞬で目を閉じた。耳は塞いだままだったんで、何も聞いちゃいない、本当だ」


何が見えたのか聞きたかったが、あの田無さんの目にリアルな恐怖が浮かぶのを見て、やめた。

話を進めると、この一夜だけで終わるものではなく、祟り神が何柱もいるんだそうで、まだ終わらないとのこと。

ただし、今夜のことで終わりは見えたので、あと長くとも数ヶ月でしょうねと結論。


おい、俺は営業の仕事があるんだって!


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