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特殊スキル持ちサラリーマンの日常 3

今回の日常ホラーは、作者の別の話とリンクしております。

さーて、そのシリーズってなんでしょ?(笑)

作者、稲葉小僧


俺は今、鳥も通わぬ孤島にいる。

ここに来るのには、色々と複雑な事情がある。


いつもの通り出社し、ルート営業に出るため資料や書類を用意していると、


「ああ、山本くん。うちの親会社とつながる関連会社の部長さんから連絡があってね。ちょうど、その部長さんがいる支社が、うちの会社の近くにあるんで、今日はルート営業じゃなくて、そちらへ行ってほしい。もしかしたら、最悪、数週間の出張になるかもしれないので、その部長さんとの話し合いをしてくれれば、今日の予定は全て変更で良いと、専務からのお達しだ」


という部長からの一言で、俺は営業資料も書類も持たず、小さなブリーフケース一つで、指定された会社の支社とやらへ向かうこととなった。

営業部員予定表に、***技術開発//支店で¥¥部長と会議、と記入。

帰社予定には、会議が長引けば直帰予定と書いて、俺は地下鉄へ。


3駅ほど地下鉄に揺られて、俺は指定された社名のビルを見つけ、入口近くの総合案内へ。

面会と会議予定を聞いてきました??社の山本と申しますが、¥¥部長様はお見えでしょうか。

と、通常の営業スマイル。

それにしても、本社ならともかく支社クラスで、ビル丸々が支社だというのは凄い。

この不景気に、大都会とは行かないまでも、中規模の都市に巨大ビルを建てる予算を注ぎ込める決断力も資金力も、俺の会社とは段違い。

こちらですと案内を受け、通された会議室も、うちの会社だと重役連中が揃う一大プレゼンテーションで使うレベルの広さだ。


「お待ちしてました、山本さん。今回は緊急案件でしてね。うちのエンジニアが担当してる物件なんですが、ちょいと難航してまして……」


その物件、どこの地方ですかと聞いたら、なんと、飛行機の便がない孤島だそうで。

一番近い島の空港まで国内便で飛び、そこからはヘリ便または船便しかないような小さな島だそうだ。


「そのエンジニア、普通は一人で仕事を完遂しているんだが途中から難しいと報告が来てね。通常はつけない、彼専用のアシスタントも送り込んだんだが、それでも半年や一年じゃ終わらないと、追加の報告が来た」


とてつもない難しい案件みたいだと感じた俺は、


「今のお話を聞きますと、とても私が行っても解決できないレベルの案件だと思うんですが」


という俺の発言に、


「さっそく、明後日から向かってもらいたい。あ、向かう先にはちょいとした温泉宿やコンビニもあるんで、生活用品には事欠かんよ。さすがに現代日本は便利だよねぇ……で、案件の内容ってのがね……」


聞いて驚いた。

旧時代の大戦で激戦地となった、その小島。

敵味方、両方に凄まじい数の戦死者があり、その怨霊が渦を巻いているのだそうで。

通常の死霊や怨霊クラスなら、そのエンジニアやアシスタント一人で祓ったり成仏させたりできるんだが、さすがに、この物量と怨念の深さは通常レベルではない。

現地からの報告では、もう死霊とか怨霊とか言うものではなく、祟り神レベルになっているため、通常の攻撃とか御札、守護霊や護法、聖水などが全く通用しないと。

幸い、昼間は鳴りをひそめているが、太陽が沈むと島の半分が祟り神の支配地となる。

祟り神というくらいで、積極的に島の住民に祟りをなすことはないようだが、問題は、そこじゃない。

件のエンジニアとアシスタントが表の仕事として、なぜ、そんな孤島へ行ったのかというと……


「これが、お国の秘密計画でね。その島に、防御拠点としての巨大デーベースセンターを建設するってこと。幸い、国の防衛予算経費から、機密費として数千億規模の建造物と大規模レーダー、それに加えて防御と攻撃用の自動制御ドローン大部隊を用意するって話なんだ。あ、これは社外秘どころか軍機に当たるレベルなんで、ここだけの話にしといてくれ」


ここまで話してもらうと、俺にもトラブル案件の内容が見えてくる。


「ようやく理解しました。そのトラブル案件解決に、私の歌が必要となったということでよろしいでしょうか?」


「そうだ。君の歌のことは以前から、御社の専務や社長さんから聞いていた。鼻歌レベルでも、凄まじい威力だそうだね」


「いえいえ、そこまでは。今までの最大規模で、一つの暴力団、十数年前にメディアに大々的に取り上げられたんで記憶にあると思いますが、指定暴力団の〇〇組ってのを全面解散に追い込んだくらいですよ」


「ほぅ……あの事件も、元は君の歌だったのか……元組長以下、元組員全員が今現在でも精神病院で錯乱状態から回復しないと聞いているんだが……いやはや、凄まじいもんだな」


あれは、未だに俺の黒歴史。

入社して一年目と少し。

仕事が面白くなり、歌は会社から禁止とされていたのでストレス溜まっていたのも重なり、同僚たちと久々の飲み会で、散々にアルコール漬けとなった俺。

二次会で入ったスナックが、これが典型的なボッタクリ。

水割り二杯で全員に50万づつ請求してきたんで文句言った同僚に、裏にいた筋モンが出てきた。

因縁つけてきたのも同然、払え払わないから殴り合い寸前になったので、ずいと俺が前に出て、


「その筋の方なら、組長以下、組員全部呼べ。俺がナシつけてやろうじゃないか」


30分後、100人ちかい大人数に膨らんだ奴らに向かい、俺は言った。


「お前らの運命は、今日で終わったぞ。今から、俺の美声を聞かせてやる。もんどりうって感激に打ち震えろ!」


俺達の方は同僚数人。

俺が歌うと宣言した途端、耳をふさいで目を閉じ、道路へ腹ばいに。

それが一番、悪影響が少ないと身にしみているのだ。

俺は歌ったね。

声を張り上げるまではしなかったが、朗々と、とある恐怖ドラマの主題歌をフルコーラスで二回、繰り返した。

賞味で10分も歌ってないと思ったんだが、それが終わった後に、暴力団組長以下、発狂してない人間はいなかった。

よだれ垂らしてアウアウ言ってる者、座り小便どころか糞尿まで巻きちらしている者、気絶しているやつは幸せ(あとで目覚めたら発狂状態)だったろう。

さすがに、これはニュースメディアと警察巻き込んだ大騒動となった。

死傷者は一人もいないくせに、一つの暴力団が根こそぎ解体、その周辺にいた野次馬たちすら怖気を振るうような物を見たと言われたが、その証拠も監視カメラ映像もない(確かに俺が歌った映像はあるはずなんだが、なぜかその数分間だけノイズにまみれてしまっていた)


という経緯で、今、俺は特別案件として、この島にいる。

ヘリ便は飛ぶ予定がなかったため、俺は船便で、飛行場のある島から3日かかってしまったが、今、港にいる。

さて、例のエンジニアさんとアシスタントさんとやらに挨拶に行こうか。


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