第3話 亡者のメッセージ
キーンコーンカーンコーン
ホームルームを終え放課後を迎える。
僕はどこの部活にも所属していないし、所属する気もないのでさっさと帰って寝ることにした。朝から面倒なやつに絡まれて気分も悪いし。
チラッと良々の方を見ると彼女は友達とカフェに行くだのなんだのと楽しそうに話している様子。
あいつはどこの部活に入るんだろうか?まぁ俺には関係ないや。
帰宅後
「ただいまー」
母さんは僕が帰ったしばらく後に帰ってくるので、いつもこの時間は一人きりだ。そそくさと自分の部屋に行き、制服のままベッドに横たわる。
さて少し仮眠でもとるか
今朝はあんまり、眠れ、なかった……し……
——ピコン!
唐突にスマホの通知がなった。
なんだ? 人が心地よく寝ようとしていたのに
ベッドに座りスマホを見ると、一通のメッセージが届いている。面倒だが一応真面目なもんで、確認するようにはしている。友達なんていないので、まぁ大抵迷惑な内容なのだが。
ったく送るやつはどんな神経してんだか……。
えーっと、送り主は……!!
『父さん 1件』
は?
父さん? なんで? 生きてた? ……いやありえない!
この目でみたはずだ、父さんの最後を。それに葬儀だってした。
呼吸が荒ぶるまま、恐る恐るメッセージを開く。
『私は殺された』
脳に電流が走るとはまさにこのことか。刹那、手の平からスマホが滑り落ちる。定まらない焦点に、止まらない冷や汗。
高度なイタズラ? しかし、間違いなく送り主は父からだ。故人のアカウントを乗っ取るなんて、単なるイタズラの域を超えている。
ならば本当に父さんが? いや、父さんは僕が最後まで看取った、さっきも言っただろ!
あるいは、5年後に送信されるようにメッセージを送った?果たしてそんなことが可能なのだろうか。
いやしかし一番問題なのは、父さんが殺されたと言う文面。
父さんの死は確かに自分でも納得がいっていない。あれだけ熱中していたチェスのまして世界の頂点を決める大会前に、仕事のストレスで自死なんて馬鹿げている。いくらなんでも不自然すぎる。
根拠はない、勘でしかない。だけどもしあの時、本当は父さんが殺されていたのだとしたら、長年感じていた違和感の説明がつく。
そしてもう一つ肝心なのは、この送り主がなぜこれを僕に送ってきたかだ。
一体誰が? 何のために?
何かある、父さんの死には絶対に何かある。
僕の直感がそう訴える。
もしかしたら死の真相を確かめさせたいのかもしれない、こいつは僕に。
……上等だ、乗ってやるよ
父さんが殺されたとしたら、犯人は今でものうのうと暮らしているかもしれない。何不自由なく。
……それだけは許せない!
僕と母さんから大好きだった父さんを奪い、平然と生きていられるのならば、この僕が、人生の全てをかけて復讐してやる。どんな理由があっても、僕の大切な人を傷つけた奴を許しはしない! なんならこの手で……。
勇の目にはあの日の光景がありありと映っていた。
凍りついて止まっていた時が動き出す。
——となればだ、まずはこの送り主が誰なのか特定しなければ
***
翌日 昼休み
しかし、どうしたものか。
手を組んで悶々《もんもん》と悩んでいる僕に、また良々が話しかけてきた。
「あら、珍しく真剣な顔をしているじゃない」
「また君か、悪いけどちょっと今……」
待てよ
「何よ、話しなさいよ」
「……君って顔広い?」
「そりゃそうよ、人望激アツなんだから」
「だったらさ、パソコンに詳しいやつ知らないか?」
「何?どういうこと?」
「詳しいことは……言えない」
「はぁ? あなた、人に頼むのに説明しないってのはどういう了見よ」
正論だ。思わず頷いてしまう。
そんな様子を察してか、良々がしょうがないとばかりにため息をつく。
「わかったわよ、クラスメイトの悩みは私の悩み。学級委員長として見捨てておけないわ」
学級委員はまだ決めてないとツッコもうとしたが、面倒なのでやめた。
「じゃあ、早速情報室に行くわよ!」
俺の袖を引っ張って、教室を出る。
うわー、周りの驚いたような視線が痛い。
これでも一応クラスの人気者らしいし、変な噂が立つのだけは避けたい。
こいつ人との距離が近いんだよ、まったく。
***
良々につれてこられた情報室は、思っていた割に意外と狭かった。
それでも綺麗に整えられており、特にズラッとモニターが並んでいるのは圧巻だ。そんな情報室の奥の方に誰かが一人座っている。
「こんにちわーっす」
良々がその人影に向かって手を振る。
「やぁ、良々ちゃんじゃないカ」
こちらに気づき立ち上がった人影。
上級生らしきメガネをかけた男がそこにいた。
「紹介するわ、こちら2年生でパソコン部部長の…えっと部長よ」
名前覚えてないのかよ。
「ご紹介に預かっタ。この僕がパソコン部の部長! 名前は……」
「というわけで、私の友達が頼みたいことがあるんだってー」
「うぅ……良々ちゃン(泣)」
なんだろう色々ツッコミたい。
しかしまぁ、入学して一月も経っていないのに、こうもいろんな人と仲良くなれるもんだなぁと良々の行動力に感心する。
部長はズレたメガネを掛け直し、まるで品定めをするかのように、僕の顔をまじまじと見つめてくる。
「それで、君は良々ちゃんのなんなんだイ? まさか、彼……」
「違う!クラスメイトですよ、ただの」
「ただのは余計よ」
「それはよかった。じゃなきゃ良々ちゃんファンクラブ第一号の僕が君をボコボコにしなければならないところだったヨ。安心したまえ」
メガネをクイッと掛け直す。なんとも調子のいいやつだ。
「初めまして僕は王城勇です。ちょっと訳があって、パソコンに詳しい人を探しています」
そう聞くやいなや、部長は得意げに語り出す。
「ほうほうほう、まさに僕の十八番! 何を隠そう、この僕はあの高校全国プログラミング選手権で決勝まで進出した逸材なんだ。大抵のことは朝飯前だネ。パソコン部エースのこの僕こそが、まさに君の探し求めている答えと言えよう!」
「まぁパソコン部、3年生全員引退して、部長しかいないんだってね〜」
「良々ちゃン……それは言わないで(泣)」
それは部活として成り立っているのだろうか?
「しかしだネ、僕に何か頼むのは結構だが引き受けるとは言っていないヨ」
「えー、部長ケチくさいよー」
「良々ちゃんにも悪いんだけど、今こいつの調整中でネ」
部長がモニターを指差すと、そこにはメイド服を着たピンク髪のキャラクターが映っていた。
「彼女は僕が創造したAI『ハナちゃん1号』次のプログラミング展示会で出展するつもりなんダ。ねーハナちゃん?」
「Yes, ご主人様」
「うわ、部長の趣味丸出しじゃん」
「あぁ引かないで、良々ちゃン(泣)」
なるほど、無料では引き受けてくれなさそうだ。
しかし、こういう相手にはこの手が効く。
「なら……なら部長、勝負しませんか?」
俗に言う挑発だ。
カクヨムと小説家になろうに投稿しています。




