第16話 特定
「監視されているって……どういうこと?」
「勇くんに届いたメッセージ、もしかして、別荘の場所を意味しているんじゃないかイ? ボクたちは監視されていて別荘を探している絶妙なタイミングでそのヒントを送ってきたとかサ……」
たしかに、タイミングとしては別荘捜索に難航しているまさにドンピシャのタイミング。
「別荘の場所を意味しているとは?」
「さっき良々ちゃンが言った篭るだヨ。この『O-O』はキャスリング、つまり王が安全な場所に篭ることを表しているよネ。この安全な場所に篭るって別荘のことを意味しているんじゃないかナ」
「キャスリングが別荘を表している……だ、だったらこのc4は?」
このメッセージが別荘の場所のヒントであれば、当然。
「別荘の場所、座標や地名、などを表しているというわけですね」
無言でうなずく部長。
良々の表情はだんだんと青ざめていく。
「か、監視って……ほ、ほんとうにそんなことできるの?」
「わからないヨ……ただこの送り主は電子機器に長けた人物なのは間違いないんダ。だから僕たちの通信機器の履歴を見ている可能性はあるネ。あるいは監視カメラもハッキングしているかも。もしかしたらカーディナルでの話も全部筒抜けの可能性も……」
「きゃーー!!」
良々が悲鳴を上げ耳を塞ぐ。
僕の頬に冷たい汗がツッーと流れおちた。汗ばむ手をズボンで拭き取るが、発汗は治らない。
やつが監視していると考えるだけで、得体の知れない何かに追いかけられるようなそんな恐怖に包まれる。
「だ、大丈夫よね? ほ、ほら、なにも変なこと起きてないし!!」
怯えている良々の声はとてつもなく震えている。
とにかく、深呼吸をして、今は別荘に意識を集中するんだ。
「どちらにせよ別荘を見つけなきゃ始まらない」
「そうだネ、今できることはこのメッセージの解読サ。この『c4』が位置を表しているのなら……座標、地名……うーむ」
いやこれには心当たりがある。
「……千代田区」
「なるほど!! 千代田区はアルファベットだとCから始まるネ。それなら4は町か丁を表しているのかも」
「な、なんだかいい感じ、よね?」
部長がモニターに映るハナちゃんに問いかける。
「ハナちゃン! 千代田区の町や丁で4に関わるものをピックアップして!」
「OK……検索の結果、麹町四丁目、外神田四丁目、神田佐久間町四丁目、そして四番町がヒットしました」
よし、これで候補地がだいぶ狭まった。
「とりあえずこの中で調べましょう」
「でもでも、調べるってどうするの? 一件一件回るの?」
「まぁ時間があればそうする方がいいんだろうけど、生憎そんな暇はない。だからタダで便利な探偵を雇うのさ」
「タダ!?」
僕は手に持ったスマホをカチャカチャと振る。
それを見て部長が何かを悟ったのだろうニヤリと笑い、眼鏡をクイッとする。
「SNS、そうだネ?」
「その通り、さらに『Gogle map』を合わせます」
「どういうことよ?」
「父さんは5年前に亡くなった。父さん名義で別荘を借りていたのならそれがなくなるから表札は変わる。もし父さん名義で借りていなくても別の誰かが買うなり、使うなりしているはず。空き家になっていたかも。なんにせよ5年前の父さんの命日近辺での変化を調べればいいのさ」
「そうだネ、もし何か変化のあった家があればそれこそが……」
すでに部長はハナちゃんに命令を下していた。コーヒーを一口飲み……静かにその結果を待っている。
ハナちゃンの演算はあっという間に終わり、画面には一つの画像が映し出された。
「Bingo 可能性の最も高いSNSの投稿とその家屋を特定いたしました」
そこに映るのは、西洋の映画に出てくるような黒く不気味な洋館。大きさはそれほどでもなく四角くて可愛らしさがあるものの、根を張ったツルが所々絡まっており、いかにもな雰囲気を醸し出す。見たところ窓のカーテンは全て締め切っており何かを隠そうとしているようなそんな風に捉えることができるかもしれない。
「Let me explain ここは千代田区4番町にある小さい洋館です。大通りには面していないためあまり目立ちません。しかし、このような投稿が5年前にありました」
ハナちゃんがそういうとあるSNSの投稿を提示する。
『目の前の洋館に住んでた人最近こないっしー、なんか表札とかも外れてたしー、あーしが買おっかなー? なんてー、ウケる!!!!』
「めちゃめちゃギャルね」
「……ギャルだネ」
「コホン、それで表札は、これより前の表札にはなんて?」
部長が『Gogle map』でこの写真の座標を入力し特定。その後ストリートビューで5年以降前に間接的にタイムスリップ。洋館の入り口、正門の横にある看板が目に入る。
『勇家』
——見つけた
「嘘でしょ!」
「現実だよネ?」
仰天する二人。
王城ではない、しかし間違いなく、これは父さんの別荘だ!
なんらかの事情で父さんが偽名を使っている。しかも僕の名前を使って。
しばらくの間、3人の目はブラックホールのようにその表札に釘付けにされてしまった。
「もしかしてサ、勇くンがこうやって見つけることを予想していたとかないよネ?」
「……わかりません」
「で、でもこれで見つかったんじゃない! お父様の別荘が」
「ひとまず進んだな……」
ようやく暗闇に一筋の光が見えた。まだ狐につままれるような感じだが……
まるで導かれているかのような……
「これ以降は表札が外れているネ、誰かが出入りしているのかどうなっているのか情報は全くないヨ。ただはっきりしているのはこの洋館はまだあって、メッセージの送り主もそれを知っているということだネ」
「わかります部長、この洋館に奴がいるかもしれないとそう言いたいんでしょう?」
部長は固唾を飲み込みながらコクリとうなずいた。
「勇くん、大丈夫?」
「あぁ、必ず正体を暴いてやるよ。このメッセージの送り主、これからやつの名は伝令者、そう呼ぶことにしましょう。おそらくこれ以降もメッセージを定期的に送ってくる、そんな気がしますから」
僕は洋館の正確な位置を記憶する。
そこである計画を閃いた。
「良々」
「な、なに!?」
「明後日は校外学習で国会議事堂に行くことになってるよな。そして都合がいいことに、国会議事堂は千代田区にある。しかもこの別荘とそれほど遠くに離れていない」
「そうね……ってもしかして」
「そう。明後日の自由時間にこの別荘に行く。いいかな?」
「はー、はいはい、ついてきてほしいのね? いいわよもちろん。止めてもどうせ行くでしょうし、何があるかわからない危険なところにあなた一人で行かせられない。でも委員長になんて言い訳するのよまったく……」
「ありがとう助かるよ」
平日に行けばメッセンジャーがここにいる確率を減らせる。最悪見つかって何かされそうでもこちらは高校生二人警察沙汰になったら不利になるのはあちらだろう。とはいえこれまでの感じから手荒な真似をするやつとも思えない。まぁ、こう思っていることも全部筒抜けかもな……。
「何かあったときのために、ハナちゃんを勇くンのスマホに移動させておくヨ。そしてメッセンジャーに盗聴や追跡をされないよう、ボクにしかわからない強力な暗号化プロトコル通信を確保しておく。これで僕たち3人のスマホの履歴等は辿れないはずだヨ」
「ありがとうございます部長。じゃあ良々、明後日作戦実行だ」
「ラジャー!」
何はともあれ無事に別荘を特定できたことはとても喜ばしいことだ
だが、なぜだろう胸の鼓動が高鳴ったまま止まらない
なにか、なにか嫌な予感が……
しかし、もう後に引き返すつもりはない
待っていろよメッセンジャー、必ずお前を見つけ出して、知っていることを根こそぎ吐いてもらうぞ
なんとしても……な




