幕間 「帰還という概念は、誤認である」という話
「」→日本語
『』→英語
→すみませんが脳内変換してください!
やっと夏休み帰国編が終わる
成田空港、国際線出発ロビー。
行き交う旅人の喧騒と、電光掲示板の無機質な音。
その中で、菜摘だけが、いつも通りの「日常」で笑っていた。
「じゃあね! たっくん! 忘れ物ない? パスポート持った?」
「おう。あるって」
拓海が軽く手を振る。
「……そんなに心配すんなよ」
一拍。
「2年なんてすぐだしさ、すぐ戻ってくるって」
その言葉は。
菜摘にとっては、ただの約束。
そして。
少し離れた場所。
トランクの山(※機材+衣装+予備+予備の予備)を背にした男にとっては―
致命的なエラーだった。
『……拓海』
静かな声。
『搭乗時間だ』
一拍。
『直ちに「隔離プロトコル」を開始する』
『普通に搭乗って言え!!』
拓海が即ツッコミを入れる。
だが。
エドワードの瞳は、異様なほど落ち着いていた。
(……固定する。絶対逃がさない)
(……二度と)
「タクミ」
ぴたり、と袖を掴む。
「……時間」
「オマエ、日本、終了」
「イギリス、ボク、隣、開始」
一拍。
「……合理的、アップデート」
「終了とか言うな!!しかも日本語で!!」
「2年で戻るっつってんだろ!!」
「……否定スル」
即答。
『……2年は、短期ではない』
さらに一拍。
『……20年単位での最適化が必要だ』
『長ぇよ!! なんでスパン伸びてんだよ!!』
そこへ。
「おーい拓海!」
佐藤が手を振りながら近づいてくる。
「気をつけてな! 向こうで変な契約書とか――」
「サトウ」
エドワードの視線が、刺さる。
「……オマエ、背景」
「……フェードアウト、セヨ」
「なんだよフェードアウトって!!」
「俺、存在消されてんのか!?」
「……ノイズ低減処理ダ」
「人をノイズ扱いすんな!!」
「……もう手遅れかもしれねぇ……」
拓海が遠い目をした。
そのまま、袖を引かれる。
完全に、連行。
「じゃあねー! たっくーーん!」
菜摘の声が、明るく響く。
「待ってるからねー!」
振り返る拓海。
軽く手を上げる。
しかし、エドワードは。
一度も、振り返らなかった。
彼にとって、この離陸は。
帰還ではない。
“回収”だ。
『ジョージ』
低い声。
『高度を確認しろ』
一拍。
『国境通過と同時に』
『サエキ・タクミの「日常」をアーカイブする』
さらに。
『復元は禁止だ』
『りょーかーい』
ジョージが即応する。
『現在より「中長期独占プロトコル」を起動』
『期間、暫定20年』
その横で拓海は何も気が付かづに
機内食の代わりに渡されたベビーカステラを口に放り込んでいた。
「うんま!」
その隣。
エドワードが、静かに笑う。
完全に、勝ったつもりで。
■ ジョージの記録
【サエキ事変・成田編】
ハミルトン様、ナツミの「2年後帰還プロトコル」を無視し、
独自に「20年独占プラン」を強制適用。
なお。
サエキ本人は。
一切、気づいていない。
追記。
本件は誘拐ではない。
“合理的な長期保管”である。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
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