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第七十話 「医学的観測は、執着を正常とは認めない」という話

「」→日本語

『』→英語 

→すみませんが脳内変換してください!


拓人お兄ちゃんは医学生です。そろそろ卒業なのかな。

夏祭り翌日、午前。佐伯家の居間。


「……拓海」


低い声。医大生の兄・拓人が、珈琲カップを置かずに弟を凝視していた。


「……何だよ、兄貴」


「……お前。昨日から、その英国人との物理的距離がおかしい」


『拓海、お前の兄の視線が私の感情基線に干渉している。彼を排除しろ』


「……平均、30センチ以内を維持している。異常だ」


拓人が即答する。


「測んな! そもそもこいつが勝手に寄ってくんだよ!」


その瞬間。


「タクミ」


ぴたり。エドワードが拓海の背中に、磁石のように吸い付いた。


「離レル理由、ナイ。合理的ハン断」


「ほら見ろ。今もゼロ距離だ。追従反応チェイスが早すぎる」


拓人がすっと立ち上がり、白衣を着ていないのが不思議なほど冷徹な手つきで、

エドワードの顎をクイと持ち上げた。


「……少し診る。医療的観点だ」


「は? ……おい、エド、逃げ……」


「動くな。……瞳孔、散大気味。光刺激に対して過敏。……拓海、この個体に接触してみろ」


「やだよ!! なんで俺が検体の補助しなきゃいけないんだよ!」


「いいから。検証だ」


渋々、拓海がエドワードの肩に指先を触れさせる。その瞬間――。


「……っ!」


拓人の目が細くなる。手首を取っていた指先に、確かな反応が伝わった。


「脈拍急上昇。体温微増。呼吸の浅化を確認。……確定だな」


一拍。


「重度の依存傾向アディクションだ。治療が必要なレベルだぞ」


「違ウ。合理的、投資。タクミ、ワタシ、未来

、ハミルトン、必要。サトウ、不純物。タクミ、純粋、資産。……合理的ハン断!」


『拓海、この医療素人を無視しろ。私の生理反応は単なる

「同期の加速」だ。正常なシステムアップデートだ!』


『お前の”正常”は世間一般の”異常”なんだよ!!』


「……拓海。今、一歩離れてみろ」


拓海が、言われるがまま一歩横にズレる。


一瞬の静寂。

エドワードが、無意識に、吸い込まれるように一歩。間を詰めた。


「ほらな。完全に条件反射が組み込まれてる。

……お前の“最適化”は、医学的には執着という名のバグだ」


「正常だ」


「異常だ」


「正常だ」


「異常だ」


「正常だ」


「……うるせぇ!! どっちでもいいから離れろ!!」


拓海の絶叫が、居間に響く。


「――あらあら、仲良しねぇ」


母・絢子が、のんびりと顔を出した。


「違ぇよ!!」


「仲良シジャナイ!!」


一拍。


エドワードが、拓海の袖をぎゅっと握り直す。


「仲良シダ」


「言うな!!」


その時。


コトリ、とカップを置く音。


静かに。


だが、空気が変わる。


『……ハミルトン卿』


拓人だった。


声が、低い。


完全に“医療側”のトーン。


『一つ、提案がある』


『……何だ』


エドワードが、視線だけで応じる。


『このままでは、弟の精神負荷が臨界点に達する』


「は?」


拓海。


「お前は黙ってろ」


即遮断。


『現在の接触頻度、距離、依存反応、すべてが過剰だ』


一拍。


『よって』


静かに、言い切る。


『2メートルの物理的距離を維持することを提案する』


沈黙。


『……拒否する』


即答。


『理由は?』


拓人。


『合理的でない』


エドワード。


『……十分合理的だ。弟の健康維持という明確な利益がある』


『……非効率だ』


『距離は最適化されるべき』


『過剰接近はバグだ』


『違う。必要だ』


完全に、噛み合わない。


『……タクミ』


エドワードが、袖を引く。


『この個体、排除していいか』


『するな!!』


拓人が、一歩踏み出す。


『……いいから、試せ。一度でいい、2メートル離れろ』


エドワード、無言。

一歩下がる。

距離、約、2メートル。


静寂。


「……」


「……」


「……」


三秒。


「……ッ」


エドワードが、一歩詰めた。


「ほらな」


拓人。


「無理だ。完全に条件反射が組み込まれている」


「……正常だ」


「異常だ」


「正常だ」


「異常だ」


「正常だ」


「うるせぇ!!」


拓海、再び絶叫。


そのとき。


「――あ、たっくーん!」


菜摘だ。

何も知らない顔で入ってくる。


「これ、おじいちゃんに持ってくベビーカステラね」


空気が、一瞬でゆるむ。


その隙で、エドワードがぴたりと戻る。

ゼロ距離。


「……戻ったな」


拓人。


「……結論」


一拍。


「治療困難」


「病気扱いすんな!!」


少し離れたところで。


なぜかまた一緒に来ている佐藤が、静かに呟く。


「……拓海」


一拍。


「もうそれ、距離制限じゃなくて“首輪”必要なレベルじゃねぇか……」


「誰がだよ!!」


ジョージのペンが、火を噴く。


【サエキ事変・医学観測編】


ハミルトン様、医療的制限(2m)を提示されるも、3秒で破綻。

条件反射による追従行動を確認。


追記。


当該現象は、医学的介入では制御不能。

最終結論。

これは治療対象ではなく、“飼育案件”である。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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