第六十九話 「勝てない存在は、排除ではなく取得対象」という話
「」→日本語
『』→英語
→すみませんが脳内変換してください!
ファミレスの窓の外。
植え込みの陰。
エドワードの影が、わずかに震える。
一瞬、それは、感情だった。
だが。
次の瞬間には凍りついた。
そして。
その青い瞳に、別の光が宿る。
冷たい。
鋭い。
計算された、略奪者の光。
『……タクミ』
声は、静かだった。
『あの個体は』
一拍。
『再現不能だ』
『あの“重力”』
『あの集束力』
『自然発生型』
『制御不能』
わずかに、息を吸う。
『――ゆえに』
『ハミルトンの外に存在させるべきではない』
『……ハミルトン様?』
ジョージが、息を呑む。
エドワードの横顔にさきほどまで存在していた“揺らぎ”が。
完全に、消えている。
『ジョージ』
短く。
『記録しろ。”サエキ・タクミ”』
一拍。
『最重要対象として再定義』
『……了解』
ジョージが、わずかに間を置いて応じる。
『“長期確保プロトコル”、……起動』
エドワードはそれ以上、何も言わなかった。
“勝てない”という事実も。
“認めた”という記録も。
すべて内側へ沈める。
封じる。
鍵をかける。
そして。
別の名前を与える。
(……口にする必要はない)
(……結果だけでいい)
数時間後。
佐伯家、リビング。
「あー、食った食った!」
「やっぱ地元のダチは最高だな!」
満足げな声。
扉が開く。
その瞬間。
「…………」
暗がりの中。
エドワードが、立っていた。
「……うわっ!?」
「お前、起きてたのかよ」
「タクミ」
即座。
距離、ゼロ。
「遅イ。ログ、未回収」
「座レ」
「今カラ、全テ、報告」
「なんでだよ!!」
「怖ぇよ!!」
「サトウト、アトハ誰ダ」
「何話シタ」
「何笑ッタ」
「順番ニ言エ」
「尋問かよ!!」
その異常な圧力の中。
「――あ、たっくんおかえり!」
菜摘が、いつも通りの温度で割り込む。
「エドワード君、ずっと待ってたんだよ?」
「なんかいつもよりベッタリじゃない?」
拓海は嫌そうに言う。
「……ベッタリじゃねぇよ!!」
「いやベッタリだよ?」
その様子を。
少し離れた位置で見ていた一緒に戻ってきた佐藤が
ゆっくりと、冷や汗を流す。
(……ダメだ。同窓会行った後、何かが切り替わってる)
一拍。
(……あれはもう、“普通”じゃねぇわ)
ジョージのペンが走る。
【サエキ事変・再定義編】
ハミルトン様、サエキを“排除不能個体”から“最重要対象”へ更新。
“敗北”という未処理データは、記録されず、内部にて圧縮・保存された模様。
なお、観測上。
対象への接触頻度および拘束時間は、前日比で大幅に増加。
一行、追記。
当該現象は。
“経営判断”の体裁を保った。
極めて高純度の執着である。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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