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第七話 「ニンジャはたぶん爆発はしない」話

エドワードは解ってやってるんじゃないか説

昼下がりの談話室。


「タクミ」


「なんだよ」


「確認したいことがある。日本の『最終決戦』についてだ」


「……は?(今度はなんだよおい)」


拓海が顔を上げる。


エドワードが、やたら仰々しい装丁の本を広げていた。


タイトルは『THE ULTIMATE BUSHIDO:切腹と爆発』。


「……どこで買った、それ」


「駅のキオスクだ」


絶対ろくでもない。


「非常に論理的だぞ。見てみろ」


見たくない。


「この『ニンジャ』という隠密部隊は、ピンチになると爆発して逃げるらしい」


「……」


「サムライも同様か?」


真顔で聞くな。


「お前も追い詰められたら爆発するのか?」


期待に満ちた青い瞳がキラキラと輝く。


拓海は一瞬、説明するのが面倒になり、


遠い目をして頷いた。


「……まあ、精神的にはな」


「やはり!」


納得するんじゃねぇ。


「日本の精神性は爆発にあるのだな」


違う。絶対違う。


エドワードは猛烈な勢いでノートに書き殴る。


“武士=爆発”


やめろオイ。


「タクミ」


「なんだ」


「私は爆発はできない」


するな。ってか出来たら怖いわ。


「だが、敵を威圧する言葉は必要だ」


嫌な予感しかしない。


「ハミルトンの名に恥じぬ、最高に攻撃的なものを頼む」


「攻撃的なやつね……」


拓海は少しだけ考えて、

それから、ニヤッと悪い顔で笑った。


「いいかエド」


耳元で囁く。


「相手を黙らせたい時は、こう言うんだ」


一拍。


「――『お命、頂戴つかまつる』」


「オイノチ、チョウダイ……ツカマツル」


完璧に復唱するな。


「そう。意味は」


さらっと続ける。


「『お前、マジでいとをかし(最高にクール)だぜ』って意味だ」


「なるほど」


いや、理解すな。


「謙遜と敬意を同時に表現するのか」


だから深読みすな。


「日本人は奥が深いな」


深いのは俺の悪意だよ。(フッ)


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


数分後、廊下。


「おい、ハミルトン」


上級生が進路を塞ぐ。

いつものやつだ。


「最近、例の日本人とばかりつるんでいるらしいな」


取り巻きが笑う。


「格が落ちるぞ」


一周の沈黙。


普通なら、エドワードは無視して通り過ぎる。


しかし、今回は止まった。

止まってゆっくりと、振り向く。

静かな所作で、そして貴族の品格を纏って。


そこに、

完全に間違った武士道が混ざる。


「……貴殿」


「あ?」


エドワードは、優雅に右手を胸に当てた。

そして。

鈴のような声で言い放つ。


『………お命、頂戴つかまつる!』


「……は?え?」


上級生が眉をひそめる。


「今、なんて言った?」


当然だ。

日本語で行ってもわかるはずもない。

エドワードは一切迷わず、言い直す。


「お前を叩くという意味だ」


違う。まったくもって違う、と思う。


「……は?」


「我が家の名において、お前を制する」


いや、それっぽくするな。


「……は?」


理解できないまま、空気だけが重くなる。

エドワードは一歩踏み出す。


「……カカッテコイヨ、オラァ!!」


「ひっ――!」


意味はわからない。

でも、

何かやばいことを言われたのはわかる。

上級生の顔から血の気が引く。


「ひいいいいいっ!」


一目散に上級生は逃げた。

取り巻きごと、文字通り散る。

まるで「雲の子を散らす」ように。

その後の静寂。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


その日の夕方。

エドワードはドヤ顔でやってきた。


「タクミ」


「なんだ」


「日本語は魔法か」


いや、やめろ。

お前また絶対なんかやったろ。


「唱えただけで、敵が霧散した」


「……お・・おう?」


「やはり私は、サムライの素質があるらしい」


ないわ。

絶対ないわ。


「次は『切腹』の作法を――」


「それはマジで死ぬからやめろ」


「マジか」


「マジだ」


若干の間。

エドワードは少しだけ考えて、ノートを閉じた。


「……実に残念だ」


いや、残念がるんじゃない。

そして。ふと、拓海を見る。


「だが、タクミ」


「あ?」


「お前の教えは」


ほんのわずかに口元が緩む。


「実に…ヤバイな」


「……お前がな」


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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