第六十四話 「祭りの終わりは合理的な搬送(おんぶ)の要求」という話
「」→日本語
『』→英語
→すみませんが脳内変換してください!
なんかおかしな方向に行ってる気がするので修正しなくては・・・
提灯の明かりが、ゆっくりと遠ざかっていく。
さっきまでの喧騒が嘘のように、帰り道は静かだった。
人の流れもまばらになり、夜気が少しだけ肌に心地いい。
その途中で―
エドワードが、ぴたりと足を止めた。
『……どうした』
拓海が振り返る。
エドワードは答えない。
ただ、浴衣の裾を気にするように指先で整えながら、じっと―拓海の背中を見ていた。
『……タクミ。確認だ』
静かな声。
『…私の下肢ユニットが、乳酸の蓄積により機能不全を起こしている』
一拍。
『このままでは帰宅までの時間効率が著しく低下する』
『……はぁ?』
拓海が眉を寄せる。
『要するに“足が疲れた”って言いたいだけだろ?』
『違う』
即答。
『これは合理的な問題だ』
一歩、距離を詰める。
『お前の大きな質量には、明確な余剰運搬能力がある』
『私の45キロを積載しても、歩行速度に影響はない』
一拍。
『これは物理的な最適解だ』
『物理とか言うな!!文句言ってないで歩け!!』
そのとき。
「おーい拓海!」
間の悪い声が、後ろから飛んできた。
佐藤だ。
「帰るのか? ……って、どうしたエドワード、顔色悪いぞ?」
エドワードは、ちらりと佐藤を見る。
一瞬。
温度が下がる。
「サトウ。不純物。オマエ、邪魔」
「ボクハ足、モウ動カナイ。エネルギー、不足」
「え、大丈夫か?」
佐藤が少し焦る。
「おんぶしてやろうか?」
その瞬間、空気が、凍った。
エドワードの視線が、完全に氷点下に落ちる。
「……オマエハ、不潔」
一拍。
「タクミ、ボクノ専用」
「タクミ、広イ背中、出シテ」
さらに一拍。
「ボクヲ、運搬シテ。合理的、判断」
「……っ!!」
佐藤が、今日一番の衝撃を受けた顔で固まった。
「お、おんぶを……“運搬”って……しかも“専用”って……」
ゆっくりと、拓海を見る。
「お前ら……いつの間にそんな……」
「違ぇ!!」
拓海が即座に否定する。
「佐藤、違う!!」
「こいつの言い方がおかしいだけだ!!」
しかし。
エドワードは、すでに動いていた。
当然のように。
拓海の背に手をかける。
逃げ道はない。
「……チッ」
小さく舌打ち。
観念したように、拓海は背中を向けた。
その瞬間、軽い衝撃。
165センチの“姫”が、188センチの“壁”に収まる。
ぴたりとはまり込む。
『……タクミ』
耳元で、小さな声。
『暖かいな…』
一拍。
『……同期完了だ』
『うるせぇわ』
拓海は前を向いたまま言う。
『黙ってろ、バカエド』
だが、耳の後ろが、わずかに赤い。
その瞬間。
閃光。
夜道に、フラッシュが焚かれる。
『……サエキ。動かないでください』
ジョージだ。
三台のカメラを構え、呼吸すら乱さない。
『最高です』
『ハミルトン家による“機動力の完全接収”を確認』
『サエキの耳温度上昇、推定40度』
『極めて良好なデータです』
『おい!撮るな!!』
拓海の叫びは、夜に溶けた。
そして。
少し遅れて歩き出した三人の背中を見ながら、
佐藤は、その場に取り残されていた。
「……何だよ今の」
ぽつり。
「……意味わかんねぇ……」
答えは、どこにもない。
ただ一つ確かなのは―
あの二人には、
“通じている”ということだけだった。
■ ジョージの最終記録
【サエキ事変・日本遠征/帰路】
ハミルトン様、英語による論理的要求と、日本語による独占宣言を併用。
サエキを完全な輸送ユニット(おんぶ)へと変換することに成功。
当該行動は、極めて高い再現性を有すると推定される。
なお、不純物は精神的ダメージにより戦線離脱。
観測対象は、完全に二者間で閉じた同期状態へ移行した。
以上。
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悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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