表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
375/406

第三百三十一話 「騒ぎとは、当人たちより先に周囲が限界を迎えるものである」という話

エドワード何してたんだ

一月中旬。寮。


学生たちが休暇から戻り、静かだった廊下に活気が戻り始めた頃。

拓海の部屋もまた、再会を喜ぶ友人たちで少しだけ賑やかになっていた。


だが、その平穏は―


いつもの爆音で、容赦なく破壊される。


「タクミ。……この部屋の人口密度が、私の許容範囲を超えている」


ノックもそこそこに踏み込んできたエドワードに、

室内の空気が一瞬で凍りついた。


「……誰あれ」

「知らん。……ただの不審者だ」


拓海が雑に言い捨てる。


だが、もはや誤魔化しは効かない。


毎日来る。

同じ時間に来る。

当然のように隣に座る。


そして―全てを上書きしようとする。


「……あの人、マジで毎日いるよね?」


引き始める空気。


その時。


ドン。


今度は正しいノック。


だが、その音には、はっきりとした殺意があった。


「佐伯君。……少しいいかね」


現れたのは、寮の管理者。

背後には、積み上がった苦情という無言の圧力。


「最近、問題が多い」


「深夜の騒音」

「部外者の頻繁な出入り」


一拍。


「……特に、そこの彼だ」


指が、正確にエドワードを捉える。


「……は?」

「知らねぇよ。俺は呼んでねぇ」


「君の部屋だ。責任は君にある」


「これ以上続くなら、退去も検討する」


静かに、だが逃げ場なく告げられる。


「……俺のせいじゃねぇだろ!!」


その叫びの横で。


エドワードは、わずかに笑った。


「ならば話は簡単だ」


「タクミ。環境が悪い」


「今すぐ、ここを出ろ」


「ハミルトン邸へ来い」


「……は?」


「私が来ることが問題なら」


「君が、私の管理下へ来ればいい」


「……最初から、そうするべきだった」


「お前のせいだろバカ!!」


拓海の声が、廊下に叩きつけられる。


「俺は! お前から距離置くために!」


「わざわざここ選んだんだぞ!!」


沈黙。


エドワードは、ほんの少しだけ目を細めた。


「……そうか」


「私との距離を測るために、ここを」


一拍。


「だが、もう必要ない」


「理由ができた」


「……君を“正当に”迎えに来られる理由が」


「あーあ(笑)」


壁際で、ジョージが肩をすくめる。


「それ救出じゃなくて、強制連行だよ」


「サエキの防衛線、全部ぶち抜かれてる」


■ジョージの機密ログ(一月:寮の崩壊)


一月。修羅場の後の廊下。


僕は、サエキが“自分で選んだ安住の地”を、

ハミルトン様という天災によって焦土に変えられる瞬間を見たよ。


サエキ。


君の「距離を置くためにここを選んだ」という叫びは、

彼にとってはただの甘えに変換されている。


君が秩序に縋るほど、

彼はその秩序ごと君を支配しようとする。


ハミルトン様。


君は環境が悪いと言った。


だが……


サエキにとっての最悪の環境は、

君そのものだ。


■ジョージ幕間(観測ログ:85-UK・不法侵入と管理の境界編)


エドワード(主演・秩序を破壊する守護者):


「ジョージ」


「寮の管理者に礼を言っておけ」


「……これで正当に、タクミを迎えに行ける」


ジョージ(観察員):


「それ、勝手に理由作ってるだけだよ(笑)」


一枚の写真を差し出す。


管理者に頭を下げるサエキ。

明らかに“被害者側”の顔。


「見てよ」


「君、完全に害獣扱いされてる」


「それでも行くの?」


エドワードは、迷わず頷いた。


(締め)


拓海(管理者に頭を下げながら):


「……すんません」


一拍。


「次やったら、アイツ俺が刺すんで(比喩)」


「……マジで、勘弁してください」


その背後で。


エドワードは、静かに満足していた。


(追記)


「クックックッ」


ジョージは、その様子を見ながら肩を震わせる。


「ハミルトン様」


「君がどれだけ計画を立ててもさ」


「一番それを壊してるの―」


「だれでもない、君自身だからね」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ