表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
362/366

第三百十八話 「弱った姿を見られた者ほど、翌日うるさくなる」という話

拓海君は休んだ次の日妙に元気出すタイプ 

十一月。講義室。

まだ微かに鼻声の拓海は、何事もなかったような顔で席に着き、教科書を開いた。

そして次の瞬間、小さく咳き込んだ。


その音を聞き逃すほど、隣の男は鈍くない。

資本主義の魔王――エドワード・ハミルトンが、

まるで国家緊急声明でも出すような厳かさで口を開いた。


「やはり環境が悪い」


「タクミ。今夜からハミルトン家所有の別邸へ移れ。あそこなら二十四時間体制の医療スタッフ、湿度を完璧に管理した寝室、栄養士監修の食事、騒音ゼロの睡眠環境―」


「……移るかよ」


拓海は鼻をすすり、掠れた声で切り捨てた。


「あと病院じゃねぇんだから、医療スタッフとか要らねぇんだよ。バカ」


だが、エドワードは止まらない。

むしろ拒絶されたことで、謎の使命感に火がついた。


「拒否するか。ならば仕方ない」


一拍置き、堂々と言い放つ。


「私がその寮へ行く」


「は?」


「寮長には既に話をつけてある。君のベッドの隣に私のデスクと仮眠用カウチを搬入し、

夜間は私が体調を監視―」


「来んなバカ!!」


講義室に響く声。


「寮長に何言ったんだよ! あと狭ぇんだよ! お前が来たら別の病気になるわ!」


「病気? 私が君の特効薬になる、という意味かな?」


「うるせぇ、死ね(比喩)!」


その時、教授が入室した。

教壇に資料を置き、静かに一言。


「着席しなさい」


魔王の“管理計画”という名の叙事詩は、そこでようやく中断された。


■ジョージの機密ログ(十一月:魔王の不法侵入予告)

十一月。講義室後方。

僕は、ハミルトン様が「愛情」を「衛生管理」という名の

独裁へ変換する瞬間を見たよ。


サエキ。

君の抵抗は正しい。全面的に正しい。

でも、君が「バカ」と言えば言うほど、ハミルトン様の中では、

“反抗的で弱った小鳥を保護すべき飼育員”

としての使命感が増しているんだ。

最悪だね。


ハミルトン様。

君が共同キッチンに銀食器一式を搬入しようとしているのを、僕は知っているよ。

サエキの風邪より先に、寮のシンクと大学の秩序が壊れるね。


■ジョージ幕間(観測ログ:72-UK・管理と監禁の境界線編)

十一月。放課後、カフェテリア。


エドワード(主演・全知全能の守護者):

「理解できん!」

高級紅茶を置き、立ち上がる。

「なぜ彼は私の完璧な保護を拒むのだ! あの湿った寮の壁が、

彼の繊細な肺を蝕んでいるというのに!」

その手には、既に発注済みの

“寮用・最高級空気清浄機”

のカタログが握られていた。


ジョージ(秩序の守り人):

「ハミルトン様。それは看病じゃなくて監禁だよ(笑)」

ノートを取りながら喉を鳴らして咳払いしているサエキの写真を見せ、肩をすくめる。

「サエキは、高級な檻より、自分の安っぽい自由で風邪を治したいんだよ」

「それに君が寮へ行ったら、あいつ休むどころか、君を殴るために徹夜するよ?」


拓海(帰寮途中の廊下):

「……おい、エド」

振り返らずに言う。

「絶対来るなよ」

「マジで鍵かけるからな」

少し間を置いて、最後に吐き捨てた。

「あと寮長に変な金握らせんな。バカ」


(追記)

翌朝。

寮の玄関に、差出人不明の巨大な木箱が届いた。

中身は、特注の銀食器一式。

拓海は無表情のまま、伝票にこう書いた。

受取拒否

その一部始終を、ジョージは静かに撮影していた。


「ハミルトン様。君がどれだけ彼を管理下に置きたくても

彼を一番輝かせているのは、清潔なベッドの上じゃなく―

泥臭い現実の中で、君の支配を蹴り返し続ける、その野性味なんだよ(笑)」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ