第二十二話 「正妻?の意地」の話
完全にエドワードのライバルと化す菜摘ちゃん(本人不在)
十二月。
校内は、クリスマス休暇を前に浮き足立っていた。
あちこちで帰省の話が飛び交っている。
拓海は、ケータイを見ながらため息をついた。
『拓海、クリスマス帰ってこないの?( ;∀;)ケーキもクッキーも作れるのに……』
「……あー、クソ」
「胃にくるな、この顔文字」
画面を伏せる。
帰れないわけじゃない。
でも、帰らない。
「……なんか送るか」
せめて何か、イギリスっぽい土産でも。
そう思って、近くにいた連中に声をかけた。
「おい、ちょっと聞きたいんだけど」
「女の子に贈るプレゼントって、何がいい?」
一瞬、空気が止まる。
「……サエキ、今なんて?」
「『女の子』……?」
「……待て。落ち着け」
一拍。
「サエキに女がいたぞ!!!」
「なんだと!? 姫はどうなる!!」
「三角関係だと!?」
「泥沼だ! 社交界が揺れるぞ!!」
「うるせぇよ!!ただの幼馴染だっつってんだろ!」
制止も虚しく、
野郎どもはどこかへ走っていく。
(終わったな)
背後から、冷ややかな声。
「……タクミ」
振り返る。
エドワード。
妙に静かだ。
「その『オサナナジミ』という個体に」
やめろその言い方。
「プレゼントを贈るのか」
「……ああ」
「帰れねぇからな」
一拍。
「せめてものお詫び」
沈黙。
「……ほう」
少しだけ視線が逸れる。
「私には、屋敷に籠れと言っておきながら」
一拍。
「その個体には、物質を与えるのか」
「言い方w別に命令してねぇよ」
「お前が屋敷に来いって言っただけだろ」
エドワードは答えない。
代わりに、小さく呟く。
「……整合性が取れないな」
「はい出た。それ嫉妬な」
「違う」
即答。
「事実を整理しているだけだ」
「便利な言葉だなそれ」
一歩、距離を詰める。
「……その選定は」
「私が行う」
「は?」
「圧倒的な格差を示す必要がある」
嫌な予感。
「我が家の蔵にある」
一拍。
「十八世紀のティアラはどうだ」
「重すぎるわ!!喧嘩売ってんのか!?」
拓海は叫ぶ。
「第一そんなの送ったら泣くだろ!」
「泣くのか」
真剣に考えるな。
「ならば、さらに強度を――」
「やめろ!!」
エドワードは止まらない。
カタログを開く。
完全に戦闘モードだ。
周囲では。
「姫が……」
「正妻の座を守ろうとしている……」
「尊い……」
「尊くねぇよ!!」
拓海は頭を抱える。
「……あーもう」
「誰か、常識持ってるやつ連れてこい……」
本来の目的は、何かイギリスぽい小物、
もしくはいい感じのテディベア。
それを探していただけのはずが。
なぜか今、
「ハミルトン家公認の宝飾品」を全力で拒否する作業に追われていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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