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第二十三話 「プレゼントの強度は、国家予算級だ」という話

いずれ菜摘ちゃんも出したい。かわいい女の子成分がなさすぎる・・・

放課後。

寮の談話室は、いつになく騒がしかった。


「テディベアでは弱い!」


「いや、王室御用達の香水だ!」


「カシミアだ! 包容力を見せろ!」


「花束は基本だろ!」


「庭ごと贈れ!」


「庭って何だよ!」


好き勝手言いやがる。

拓海はソファに沈み込み、両手で頭を抱えた。


「……だから、誕生日プレゼントだって言ってんだろ」


「菜摘が喜びそうなもんを聞いただけなのに、なんで国家予算みたいな話になってんだよ」


周囲は真剣だった。

英国男子たちは皆、本気で議論している。


そして、その中心。

一番奥のソファに、エドワード・ハミルトンが静かに座っていた。


誰よりも落ち着いた顔で、分厚い高級百貨店のカタログをめくっている。


嫌な予感しかしない。


「……タクミ」


「嫌だ」


「まだ何も言っていない」


「そのカタログ開いてる時点で分かる」


エドワードはページを止めた。


「質問だ」


「はいはい」


「その『ナツミ』という個体は」


「個体って言うな」


「料理以外に好む物はあるのか」


拓海は少し考える。


「普通だよ」


「普通に甘い物好きで」


「普通に花とか可愛い物好きで」


「普通に笑ってくれりゃ嬉しい」


エドワードは眉を寄せた。


「……普通」


「何だその顔」


「最も難しい」


「は?」


「普通とは、基準が存在しない」


「…………」


「攻略難易度が高い」


「ゲームじゃねぇよ!」


談話室に笑いが起きる。


エドワードは真剣だった。


「ならば」


カタログを一枚めくる。


指が止まる。


「これだ」


拓海が覗き込む。


「ダイヤモンド原石」


「却下」


即答だった。


「未来への投資として」


「重い!」


「資産価値も高い」


「もっと重い!」


「研磨すれば」


「だから違う!」


エドワードはまたページをめくる。


「では」


「却下」


「まだ見せていない」


「どうせ高い」


「馬」


「却下!」


「屋敷」


「却下!!」


「城」


「スケール上げるな!」


「なぜだ」


「誕生日プレゼントだぞ!」


「そうだ」


「だから!」


拓海は思わず立ち上がった。


「喜んでくれればいいんだよ!」


「高けりゃいいわけじゃねぇ!」


談話室が静かになる。

エドワードはしばらく黙っていた。


「……つまり」


「相手が喜ぶ物が」


「最適解だ」


「そういうこと」


「価格ではなく」


「そう」


「気持ち」


「そう」


数秒

エドワードは静かにカタログを閉じた。


「……理解できん」


「なんでだよ!」


「価格は比較できる」


「品質も比較できる」


「だが」


「喜びは数値化できない」


拓海は苦笑した。


「人間そういうもんなんだよ」


「難しいな」


ぽつりと漏らす。

その横で、誰かが小さく笑った。


「でもさ」


拓海は照れくさそうに頭をかく。


「テディベアでも、菜摘なら喜ぶと思う」


「俺が選んだってだけで」


その言葉に、

エドワードの手が止まった。


ほんの少しだけ考える。

それから、小さく呟く。


「……解せんな」


「まだ分からんか」


「ハミルトン家の客人が」


一拍。


「安価なテディベアだけというのは」


さらに一拍。


「……私の美学が許さない」


「ほら結局そこ!」


談話室が笑いに包まれる。

誰かが肩をすくめた。


「日本語なら」


「焼きもち、ってやつじゃないか?」


空気が止まる。

エドワードも止まる。


「…………焼く?」


「違う」


「炙るのか」


「違う」


「ロースト」


「だから違う!」


数秒。

エドワードはようやく意味を理解したらしい。

耳が、じわりと赤くなる。


「……私は」


咳払いを一つ。


「事実を整理しているだけだ」


「はいはい」


「合理的な判断だ」


「はいはい」


「対抗しているわけでは」


「はいはい」


「…………」


言い返せなくなった。

拓海は肩を震わせながら笑う。


「図星じゃねぇか」


「違う」


「耳赤いぞ」


「違う」


「焼きもちだ」


「違う!」


その日の談話室は、いつもより少しだけ賑やかだった。


そして結局。

拓海が選んだ誕生日プレゼントは、どこにでも売っている、小さなテディベアだった。


もちろん。

それとは別に、エドワードが何かを注文していたことを、この時の拓海はまだ知らない。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


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この話もゆるく続いていく予定なので、

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