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第百二十五話 「支配とは、すべてを手に入れることではなく、ただ一つ欠けているものを正確に認識し続ける行為である」という話

エドワード君怖いってw

夜。ハミルトン邸。


広大な敷地の中央に佇む本邸は、クリスマスの装飾に彩られながらも、

その威圧的な輪郭を一切崩していなかった。


煌びやかな灯り。

計算され尽くした配置。

完璧に統制された祝祭。


―だが。


静かすぎた。


長いテーブル。

規則正しく並ぶ銀の食器。

厳密に温度管理された料理。


音すら、設計されている。


その中央に、エドワードは一人、座っている。


「……」


ナイフを取る。

無駄のない動作で肉を切り分ける。


迷いはない。


だが。


「……不要だ」


手が止まる。


味ではない。

質でもない。

量でもない。


「変数が一つ、欠落している」


その一言で、この空間は完成形から逸脱する。


背後の気配が動く。


「下がれ」


短い命令。


音もなく、人が消える。


残るのは、空間と、エドワードだけ。


静寂。


「……タクミ」


その名だけが、ノイズとして浮かぶ。


立ち上がる。


窓へ向かう。


夜。


庭園の奥。

そのさらに上。


空。


「観測開始」


低く、落とす。


同時刻。

ロンドン上空。


衛星『アルテミス・ハック』。


軌道、固定。

照準、補正。

対象、確定。


「……視線」


わずかに、目を細める。


「検出」


一瞬。


「……0.02秒」


静かに、確定する。


「確認した」


それで十分だった。


グラスを手に取る。


泡が、月光を拾って弾ける。


「……これでいい」


祝祭は、そこで完了する。


「同一時間」

「同一空間(上空)」


「……視線の交差」


一拍。


「……同期完了」


飲み干す。


完璧な夜。

完璧な支配。


だが。


「……不完全だ」


落ちる。


すべてが揃っている。

ただ一つを除いて。


「……実体が、ない」


だからこそ。


「必要だ」


視線が、空から離れない。


「タクミ」


静かに、断定する。


「お前の不在が、この空間の唯一の欠陥だ」


一拍。


「……故に」


「回収する」


その言葉は、決定事項だった。


■ジョージ記録(締めのキレ強化)


【サエキ事変・ハミルトン邸聖夜解析編】


エドワード・ハミルトン、クリスマスを単独処理。


結果:


・環境 → 完璧

・構造 → 完璧

・人員 → 最適


→ 判定:不完全


原因:


・サエキ拓海(変数)未配置


対応:


・衛星による遠隔同期

・視線接触(0.02秒)で代替処理


(追記)


結論。


ハミルトンにとってのクリスマスは―


祝祭ではない。


欠損の確認。


そして、


執着の再起動。


……サエキ。


君が見上げた月は、

光ではなく、


座標のマーキングだ。


「タクミ。……距離は存在しない」


「……どこにいても、同じ夜にいる」


「……だから、お前は、ここにいる」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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