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第十話 「エドワードに呼ばれた」話

じぇーらしー?いえば拓海君は混ぜてくれるだろうけどそういう事じゃないんだろうな

夜の寮、消灯前。


「……あ”-めんどくせぇ」


拓海はシャツのボタンを外しながら、小さく呟いた。


一日が妙に長い。

食堂、中庭。

教室に談話室。


気づけば、また人に囲まれていた。


最近集まる人の数がだんだん増えている気がする。

別に何もしていないし、ただ話していただけだ。


それでも、ああなる。


(なんでだろ、おかしくね?)


疲労感すげぇ、、と、そんな時。


「タクミ」


ドアが軽く叩かれる。


「……なんだよ」


開けずに返す。


「来い」


「は?今?」


「今だ」


短い。


「俺、着替えてんだけど」


「問題ない」


いや、あるだろ。

ため息をついて、適当に上着を羽織る。


「……ちょっと待てろ」


「あぁ、待つ」


相変わらず、即答だ。

ドアを開ける。

エドワードが立っている。


いつもの顔。

ただ、ほんの一瞬だけ、視線が揺れた気がした。


「……で?何?」


「来い」


理由は言わない。

いつもの共用スペース。


暖炉の火が、小さく揺れている。

昼とは違う、静かな空気。


「それで?」


拓海はソファに腰を落とす。


「何だよ」


エドはすぐには答えない。

じっと火を見ている。

わずかな沈黙。


「……タクミ」


「ん?」


呼ぶ。

それだけ。

言葉が続かない。

珍しい。


「なんだよ」


「……」


言葉が出ない。

拓海は眉をひそめる。


「呼んどいてそれかよ」


「……問題ない」


「いや、あるだろ」


また沈黙が落ちる。

火の弾ける音だけが、やけに大きく響く。


「……昼」


ぽつりと、エドが言う。


「何さ?」


「周りに人がいたな」


一拍。


「ああ、いたな」


それだけ返す。


「いつもの事だろ?」


「……そうだな」


そこで止まる。

エドは視線を動かさない。

ただ、火を見たまま。


「……楽しそうだったな」


小さい声。

聞き逃しそうなほど。


拓海は少しだけ考えて、肩をすくめる。


「そうか?」


「……ああ」


「別に、普通だろ」


「普通か」


また、沈黙。


エドの指が、わずかに動く。

何かを言いかけて、やめる。

言葉を探して、見つからないような間。


「……タクミ」


「ん?」


「……いや」


視線が揺れる。


「いい」


引っ込める。


「だからなんだよw」


少しだけ間が開く。

エドはようやく顔を上げる。

まっすぐに、拓海を見る。

その目は、昼とは違っていた。


「……明日も」


短く言う。


「食堂に来るか」


遠回りだ。

けれど、それ以上の言葉が出てこない。


拓海は一瞬だけ黙って、

それから笑う。


「そりゃ、腹減ってりゃな」


「そうか」


それで終わる。

それ以上は言わない。

暖炉の火が、小さく爆ぜた。


「……もういいか?」


拓海が立ち上がる。


「俺、眠いんだけど」


「ああ」


「呼び出すならもうちょい早くしろ」


「善処する」


ぜってーしないだろ。


扉の前で、少しだけ振り返る。


「じゃあな、おやすみー」


「……ああ」


拓海が去る。

足音が遠ざかる。

しんとした静寂。


ーーーーーーーーーーーーーーー


エドワードは、一人残る。

暖炉の火を見ている。


揺れる炎の中に、昼の光景が重なる。


人に囲まれる背中。

自然に中心にいる姿。


”そこに、自分はいない”


(……普通、か)


小さく思う。


それが何を指しているのか、

自分でもはっきりしないまま。


ただ、しばらく動かなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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