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第62話:残された玩具と、無自覚な安堵

アルカディア本部へと向かう、ミカラムの運転する黒のミニバン。

車内はひどく静かだった。ミカラムは運転席から司に特に何かを話しかける様子はなく、後部座席の司もまた、いつものように彼をからかうような軽口を叩くことはなかった。

司の心にあるのは、長年連れ添った実の母・涼子や、恋人という名の玩具として手元に置いていた優子を失ったことへの「哀悼の意」などでは決してない。手持ちの「おもちゃ」が少し減ってしまったことへの、ほんのわずかな喪失感。そして何より、神崎という人間に完全に『出し抜かれた』という事実に対する、純粋な苛立ちだけだった。

(……あのおっさん、思ったよりできるじゃん)

司は窓枠に頬杖をつき、心の中で冷たく呟いた。

ふと外を見ると、夜の闇に紛れて、遥か遠くの空に赤い火の手が上がっているのが微かに見えた。方角からして、俺の自宅と紀伊国屋の自宅だろう。証拠隠滅か、それとも俺への当てつけか。

「……細かい芸当だね」

司がポツリと呟いた言葉を吸い込み、ミニバンはアルカディア本部へと静かに進んでいった。

***

その頃、神崎はある人物と暗号化された回線で連絡を取り合っていた。

現政府(乃木・クロノス体制)から見れば、今や神崎健人は完全なイレギュラーな存在である。表立って軍や諜報局の戦力を補強することは不可能だった。

そこで神崎は、裏の世界の人間を『20人』、非正規の戦力として雇い入れることにしたのである。

彼らに裏ルートで調達した最新型のパワードスーツを着せ、ミカラムと、彼が使役する化け物『セラフィム』たちの足止めをさせる。それが神崎の描いた次なる作戦だった。

電話を切った神崎に対し、部屋の隅で腕を組んでいた1号が静かに口を開いた。

「……それで大丈夫ですかねぇ。瞬殺じゃないのかね?」

1号の言葉には、凡人の兵器など意味をなさないという彼なりの確信があった。

神崎は振り返り、淡々と答えた。

「瞬殺は困るが、少しは時間稼ぎはしてもらうさぁ。この新型パワードスーツのスペックはかなり高いからね」

「……なるほど」

1号はそれ以上は何も言わず、サングラスの奥で短く納得の意を示した。

***

アルカディア本部の地下エントランスに到着した司は、珍しく驚きを隠せなかった。

そこには、神崎の粛清によって既に死んだ(消された)と思っていた『星野くるみ』がいたのである。

「司くん〜っ!!」

いつもと全く変わらない能天気な声で、くるみは小走りで駆け寄ると、司の首に思い切り抱きついてきた。

「……赤城。これは?」

司が、出迎えに来ていた赤城に視線で尋ねる。

「彼女の住まいは、こちらで借り上げしているアパートでしたので、我々で優先的に保護させていただきました」

赤城は淡々と事実を述べた後、少しだけ眉間に皺を寄せて付け加えた。

「ただ、こちらで『立ち入り禁止』にしているエリアまで無邪気に入ろうとするため、非常に困っています。ルールに従えないのであれば、司様のご意志で始末も可能ですが?」

いかにも真面目で融通の利かない赤城らしい提案だった。しかし、司はくるみの頭を適当に撫でながら鼻で笑った。

「まぁ、この子が見たところで、なにが何かわからないだろう。ただの保健室の先生だからな。……それはそれで面白い」

司の言葉に、赤城は深くため息をつき、呆れ顔を浮かべた。

「わぁ〜、ここ、司くんの別荘なの? 凄いねぇ!」

くるみのおしゃべりは止まらない。きょろきょろと周囲を見渡していた彼女は、司の背後に立つ長身の男を見つけると、元気よく頭を下げた。

「はじめまして! 司くんの恋人の、星野くるみです!」

「……俺は、ミカラムだ」

黒い外套の男が低く名乗る。

「ミカン???」

くるみは不思議そうに首を傾げた。

「いや、ミカラムと言う」

「ミンカンラン????」

「…………」

堂々巡りになりかけたところで、司が面倒くさそうに割って入った。

「もういい。彼女の前では『村上』でいい」

そして赤城に対し、この玩具のために彼女用の部屋を用意することを命じた。「かしこまりました」と赤城が頭を下げ、くるみは「またあとでね〜!」と手を振りながら連れて行かれた。

静かになった廊下で、ミカラムがふと口を開いた。

「……彼女は?」

「俺のおもちゃさぁ」

司は、なんの感情もこもっていない声で即答した。

「……そうですか」

ミカラムは、仮面の奥でほんの少しだけ、嬉しそうな顔をした。

(司様は、気がついていないか……)

彼ほど論理的で残酷な人間が、「不要なリスク」でしかないただの保健室の先生を始末せず、手元に置く理由。ミカラムは主の心に生じた、小さな『人間らしさ』の綻びを確かに感じ取っていた。

***

その夜。

司は、赤城が手配したくるみの部屋のドアを開けた。

まだ数時間しか経っていないというのに、整然としていたはずの部屋はすでに足の踏み場もないほどの『汚部屋』へと変貌していた。これはもう、彼女の才能としか言いようがない。

「あ、司くん〜! 良かった、無事なんだねぇ〜!」

ベッドの上でスナック菓子を食べていたくるみが、心底嬉しそうな笑顔で飛びついてくる。

「……大丈夫だ」

司は、まとわりつく彼女を剥がすこともなく、ただ短く答えた。

そして二人は距離が近くなった。


司の目が、くるみの潤んだ瞳を優しく捉えた。彼女の体が自然と寄り添ってくるのを、司は大きな手でそっと抱き寄せた。「ったく、こんなにくっついてきやがって……」と低く呟きながらも、その声には隠しきれない優しさが滲んでいた。くるみの体温が伝わり、司の胸の奥が熱く疼く。彼女の甘い香りが鼻をくすぐり、二人の息が静かに重なり合う。

唇が触れ合う。最初は優しいキスだった。司の唇がくるみの柔らかい唇を優しく包み込むように重ね、ゆっくりと味わう。くるみは目を閉じてその感触に身を委ね、「ん……」と小さな吐息を漏らしながら司の首に細い腕を回した。キスは次第に熱を帯び、深みを増していった。舌が互いの口内を探り、絡み合い、甘い唾液が混じり合うディープキス。司は彼女の背中を優しく撫でながら舌をゆっくりと動かし、くるみは「はぁ……んっ……」と甘く息を乱した。司の胸にしっとりと寄りかかり、体が小さく震える。部屋の空気が重く、甘い熱を帯びて二人の周りを包み込んだ。

二人の手が互いの体を探索し始めた。司の大きな手がくるみの背中から腰へ、そして柔らかな曲線を優しくなぞるように滑った。くるみも司の胸板に手を這わせ、固い筋肉の感触を確かめるように指を這わせ、「あ……司……」と切ない声を上げた。衣服がゆっくりと脱がされ、素肌と素肌が直接触れ合う。司はくるみをベッドに優しく押し倒し、自分の体を重ねた。熱い体温が伝わり、二人の息が次第に荒くなっていく。司は彼女の耳元で低く囁いた。「動くなよ……俺が全部、感じさせてやるからな」言葉は乱暴だったが、指先は彼女の肌を傷つけないよう、まるで壊れ物のように優しく撫で続けた。

司の唇がくるみの首筋を滑り、鎖骨の辺りを優しく吸うようにキスを落とした。くるみは「あんっ……」と甘い喘ぎ声を漏らし、体をくねらせた。司の手が彼女の柔らかな膨らみを包み込み、優しく揉みしだく。敏感な頂を指先でそっと刺激すると、くるみの体がびくりと反応し、「はぁん……っ!」という甘い声が漏れた。「ふっ……感じてる顔、かわいいじゃねえか」司は荒い声で言いながらも、触れ方は丁寧で、彼女の快楽を優先するようにゆっくりと愛撫を続けた。くるみの肌が熱くなり、薄い汗が浮かび、「ん……はぁ……司、優しい……」と喘ぎながら体を震わせた。司はさらに唇を下へ移動させ、彼女の平らな腹部を舌で優しく舐め、太ももへと降りていった。

司は彼女の脚を優しく広げ、熱く濡れた秘部に顔を近づけた。舌を伸ばし、優しくそこを舐め上げる。くるみは腰を浮かせ、「あっ……あんっ! 司……そこ……」と甘く高い声を上げた。司の舌が巧みに動き、敏感な箇所を重点的に刺激する。動きは徐々に激しくなり、くるみの体が震え始めた。「はぁ……はぁん……だめ、気持ちいい……っ!」くるみの声が切なく響き、司は「我慢すんなよ、全部出せ。俺が受け止めてやる」低く言いながらも、彼女の快楽を優先して舌と唇を動かし続けた。くるみの太ももが司の頭を挟むように締まり、「んっ……あぁ……!」と体が波打つように反応する。長い時間、司は彼女の最も敏感な部分を丁寧に愛撫し、くるみの息が乱れ、甘い喘ぎ声が次第に高くなっていった。

やがてくるみの体が大きく痙攣し、熱い液体が溢れ出すように勢いよく噴き出した。彼女の全身が激しく震え、「あぁぁっ……! 司ぃ……いっちゃう……はぁんっ!」と甲高い喘ぎ声を上げながらベッドのシーツを濡らした。司はそれを優しく受け止め、彼女が落ち着くまで唇を離さず、優しく撫で続けた。くるみの顔は真っ赤に染まり、息が荒く、「はぁ……はぁ……司、優しすぎ……」と弱々しい声で言い、目が潤んで司を見つめていた。司は彼女の額に軽くキスをし、「まだまだだぜ……お前をいっぱい感じさせてやる」と乱暴に言いながらも、彼女の髪を優しく梳いた。

今度はくるみが体を起こし、司の体に覆い被さった。彼女の手が司の硬くなった部分をそっと握り、優しく上下に動かし始めた。司は「くそ……お前、手つきが上手くなりやがったな……」と乱暴に言うが、目には優しさが浮かび、彼女の頭を優しく撫でた。くるみはさらに顔を近づけ、唇でその先端を優しく包み込んだ。熱心に舌を絡めながら深く咥え、ゆっくりと動きを加える。「ん……む……はむっ……」と小さな喘ぎのような吐息を漏らしながら司を愛撫し、司の腰が少し動くが、彼女の頭を乱暴に押さえず、優しく髪を撫でて励ますようにした。くるみの口内が温かく湿り、司の体を甘く刺激していく。長い時間、彼女は司を大切に愛撫し、司の息が荒くなり「はっ……お前……」と低く唸るまで続けた。

十分に司を刺激した後、くるみは体を四つん這いにし、司に後ろから近づいた。司は彼女の美しい背中と腰の曲線を愛おしげに見つめ、唇を近づけた。秘部だけでなく、もっと奥の柔らかな部分も優しく舌で舐め始めた。くるみは恥ずかしさから体を震わせ、「あっ……! そこ……はぁんっ……司、恥ずかしい……」と甘く喘いだが、司の優しい愛撫に次第に溶けていき、「んっ……あぁ……気持ちいい……」と声を漏らした。「お前、全部俺のものだろ……ここも感じろよ」荒い声で言いながらも、舌の動きは丁寧で愛情に満ち、彼女を傷つけないよう細心の注意を払っていた。くるみの体が再び熱くなり、司の舌に反応して腰を軽く動かし、「はぁ……はぁ……あんっ!」と切ない喘ぎを繰り返した。

我慢の限界に来た司は、くるみを仰向けにし、自分の熱いものを彼女の入り口に優しく当てた。「いくぞ……お前の中、めちゃくちゃにしたいけど……ゆっくりな」言葉は乱暴だったが、挿入はゆっくりと、彼女の体を気遣うように深く結ばれた。本番が始まる。司の動きは最初優しく、くるみの反応を見ながら腰を動かした。「あっ……司……入ってきた……はぁんっ!」くるみが甘い声を上げ、司の背中に腕を回す。次第にリズムが速くなり、二人の体が激しくぶつかり合う。汗が混じり合い、部屋に湿った音と喘ぎ声が満ちた。「んっ……あぁ……! 深い……司、もっと……」くるみの喘ぎ声が大きくなり、司は彼女の手を握り、キスを繰り返しながら腰を突き上げた。「好きだぞ……くるみ。お前がいると、俺……」乱暴な口調の中に本音が混じり、彼女を抱きしめる腕に力がこもる。くるみは司の背中に爪を立て、「はぁんっ……! あっ、あっ……司ぃ……好き……」と快楽の波に飲まれながら応えた。

クライマックスが近づき、司の動きが激しくなる。くるみも司にしがみつき、体を震わせていた。「あぁぁっ……! いっちゃう……司と一緒に……はぁんっ!」ついに司は深く最奥まで突き入れ、熱いものを彼女の中に放出した。くるみの体が大きく震え、「あんっ……! 熱い……いってる……」と二人は同時に頂点に達した。余韻の中で、司は彼女の中に留まったまま、優しく抱きしめた。くるみの瞳に涙が浮かび、「はぁ……はぁ……司……」と息を荒くしながら司の胸に顔を埋める。司は彼女の髪を優しく撫で、「よく頑張ったな……お前は俺の大事なやつだ」と低く囁いた。二人は長い時間、繋がったまま体を重ね、互いの体温を感じ合いながら静かに息を整えた。部屋には甘い余韻だけが残り、司の乱暴な言葉の裏側にある優しさが、くるみを包み込んでいた。


――数時間後。

くるみの部屋から出てきた司は、薄暗い廊下を歩きながら、ふと息を吐いた。

司自身、全く理由はわからないが、何故かひどく『ほっとした』のである。家族や優子が肉塊になってもピクリとも動かなかった心が、あの汚部屋の空気で少しだけ落ち着いたのだ。

(……玩具が全部なくなるのは、さすがに退屈だからなぁ)

司は、自らの内に芽生えたその安堵の正体を深く考えることはせず、いつものように「退屈しのぎ」という言葉で無理やり上書きして、自室への扉を開けた。

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