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第43話:退屈な日常と、平和という名の殲滅

パリッとした真新しい制服に着替えた司は、静かな足取りでリビングへ降りていった。

「おはよう、司」

キッチンに立つ母が、温かな声で振り返る。

「おはよう、母さん」

司もまた、完璧な「優しい息子」の顔を作り、母の近くに寄って穏やかな朝の挨拶を交わした。数日前の首都テロの恐怖も少しずつ薄れ、食卓にはいつもの平穏が戻りつつあった。

ピーンポーン。

軽快なチャイムが鳴り、司が服装を整えて玄関のドアを開けると、そこには紀伊国屋優子が立っていた。

「おはよう、司君!」

満面の、花が咲くような笑顔。

「おはよう、優子ちゃん」

司もまた眩しい笑顔で応え、ごく自然に優子の手を取った。二人は指を絡ませ、手を繋いだまま登校の途につく。

「……いつまでたっても、慣れなくてごめんね」

優子は頬をほんのりと朱に染め、俯き加減で呟いた。

司は優しく微笑みかけ、少しだけ困ったような声色を作る。

「いいんだよ。僕は、優子ちゃんと手を繋ぎたいんだ。でも……もし優子ちゃんが嫌なら、やめたほうがいいかな?」

「ううんっ!」

優子は弾かれたように顔を上げ、司の手をきゅっと握り返した。

「……手、繋いでいたい」

小さな声で呟くその姿は、絵に描いたような純真な少女そのものだった。

学園に到着しても、二人が手を繋いで歩く姿はすでにクラスメートたちにとって見慣れた光景となっていた。「おはよう、司君、優子ちゃん」と、誰もが自然に声をかけてくる。

教室に入ると、冬休みが近づいていることもあり、空気は明るいながらもどこか受験への焦燥感が漂っていた。

「ねえ司君、ちょっと教えてほしい問題があるんだけど……いいかな?」

一人の女子生徒が、遠慮がちに司の席へやってきた。司はわざとらしく、隣の優子の顔をチラッと盗み見る。優子はそのようなことでヤキモチを焼くような器の小さい少女ではない。

「司君、教えてあげなよ」

優子が屈託のない笑顔で頷くと、それを合図にしたかのように「俺も!」「私も!」と、クラスメートたちが次々と司の周りに群がってきた。あっという間に『司の個別授業』の開始である。

(……あーあ。本当に、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。めんどくさい。死ぬほど退屈だ)

内心で冷酷な毒を吐き捨てながらも、司の顔には「頼りがいのある優等生」の完璧な仮面が張り付いていた。彼は一人一人に丁寧に、そして誰もが理解できる完璧なロジックで問題を解説していった。授業が終わった後も、彼に教えを乞う者の列は絶えなかった。

放課後。

「司君、疲れたよね。今日は私、自分で勉強するから……司君は休んでいいよ?」

図書室へ向かう道すがら、優子は顔を赤くしてうつむきながらそう提案した。彼女なりの、精一杯の気遣いなのだろう。

「優子ちゃんとは、同じように学校に行きたいからさ。今日も一緒に勉強しよう?」

司がそう囁くと、優子は嬉しそうに頷いた。

そして司は優子の柔らかいウブな唇にそっと顔を近づけた。彼女の唇は、初めて触れる花びらのように柔らかく、ほのかに温かく、かすかな息遣いが伝わってくる。司は目を閉じ、優しく、けれど確かな想いを込めて唇を重ねた。軽く、けれど長く。優子の体が小さく震えるのがわかり、司は片手で彼女の背中を優しく抱き寄せながら、角度を少し変えて何度も角度を変え、甘く啄むようにキスを繰り返した。優子の唇は最初は固く緊張していたが、次第に溶けるように柔らかくなり、司の動きに恥ずかしげに応え始めた。吐息が混じり合い、静かな部屋に小さな音だけが響く。やがて司は名残惜しそうに唇を離し、優子の瞳を優しく覗き込んだ。彼女の頰は真っ赤に染まり、潤んだ目で司を見つめ返していた。

図書室での穏やかな学習時間。夕方になり、優子を家まで送り届けるまで、司は完璧な「恋人」であり続けた。

***

優子と別れた後、司の表情から一切の感情が抜け落ちた。

彼はそのまま猛スピードで奈落の底、『ディープ・エデン』に存在するアルカディア本部へと向かった。

執務室の重厚な扉を開けると、そこには秘書の妙子が待機していた。

「お待ちしておりました、クロノス様」

「最近の研究の進捗は?」

「はい。工場で製作中の新兵器につきましても、すべて予定通りのフェーズに移行しております」

妙子からの報告を聞き、クロノスは満足げに頷いた。すべてが彼の計算通り、狂いなく進行している。

「……ご苦労だった」

報告を終え、クロノスは妙子を伴って私室へと足を踏み入れた。

クロノスは妙子をいつもの巨大なベッドのある特別室に連れて行った。妙子は既に期待で瞳を潤ませ、淫らな牝の顔を浮かべていた。クロノスが初めての男である彼女は、たまらずにその胸板にしがみつき、熱い吐息を漏らしながら身体を擦り寄せてきた。

「雌豚、触るんじゃねえ」

クロノスが冷たく吐き捨てると、妙子はびくりと肩を震わせ、慌ててその腕を離した。驚愕と羞恥で頰を赤らめながらも、股間が疼くのを抑えきれない様子でクロノスを見つめ上げる。

「豚のくせに服なんか着るんじゃねえ。今すぐ全部脱げ。さっさと剥き出しになれ」

妙子は命令を聞くなり、喜びと興奮で全身を震わせ、素早く服を脱ぎ捨てた。たるんだ胸がぶるんと揺れ、だらしなく広がった腰回りと、既に熱く濡れた太ももが露わになる。クロノスは鼻で笑った。

「なんだそのだらしない身体は。欲情も抑えられねえのかよ。あそこにあるおもちゃで自分の熱く疼く秘部を激しく弄んで慰めろ。見せろよ、豚の痴態を」

妙子はベッドに這い上がり、震える手で傍らのおもちゃを握ると、太ももを大きく開いて自らの濡れそぼった部分に押し当てた。ずぷっ……と音を立てて太い先端が沈み、彼女はすぐに激しく腰を振り始めた。「あんっ……はあんっ……クロノス様……見られてるだけで……あっ、あっ……!」

クロノスは傍らの引き出しから他の器具を取り出しながら、低く命じた。

「そのまま自分で慰めるのをやめずに四つん這いになれ。尻を高く突き出せ」

妙子は喘ぎながら従い、四つん這いの格好で自らを激しく弄び続け、尻を高々と掲げた。「ひゃあんっ! はあっ、はあっ……こんな格好……恥ずかしいのに……あんんっ!」

その晒された後ろの窄まりに、クロノスは容赦なく太く長いおもちゃをねじ込んだ。最初は激痛に妙子の顔が歪み、「うぐっ……! 痛い……あっ、痛いっ……!」と悲鳴を上げたが、クロノスは構わず奥まで押し込み、ゆっくりと回転させながら動かし始めた。時間が経つにつれ、妙子の声は痛みから蕩けるようなあえぎ声へと変わっていった。「あぁんっ……! お尻の中……熱くて……はあんっ、はあんっ……! もっと……かき回して……!」

既に自分で弄んで秘部はぐちゃぐちゃに泡立ち、熱い蜜が太ももを伝って滴り落ちていた。妙子は涙目でクロノスを振り返り、必死に懇願した。

「クロノス様の熱く硬くなったものを……奥に突き入れてください……! もう我慢できないの……あんっ!」

クロノスは嘲るように笑った。

「ダメだ。まずは俺のものを喉の奥まで咥えろ」

妙子は言われた通り、ベッドから降りて跪き、クロノスのズボンを下ろして飛び出した猛々しいものを両手で包み、震える唇で先端を咥えた。クロノスは即座に彼女の頭を両手で鷲掴みにし、容赦なく腰を突き出した。ずんっ! と喉奥まで一気に沈め、むせる妙子を無視して前後に激しく動かし始めた。

「うぐっ……! ぐぽっ……! 苦しい……苦しいです……!」

妙子はよだれを垂らしながら必死に耐え、喉が鳴る音が部屋に響く。クロノスはさらに深く押し込み、彼女の鼻を自分の下腹に密着させるほど奥まで犯し続けた。妙子は嗚咽を漏らし、涙と鼻水を垂らしながら耐えきれず——げろっ……と胃液混じりのゲロを吐き出した。熱い液体が彼のものに伝い、床に飛び散る。

「きたねえばばあだな……」

クロノスは吐き捨て、ゲロまみれのものをそのまま引き抜いた。「お前にはお仕置きが必要だな」

妙子が「あっ、そこではなく……!」と慌てて叫んだ瞬間、クロノスは彼女をベッドに突き飛ばし、四つん這いのまま尻を掴んで、後ろの窄い穴へ一気に熱く硬くなったものを叩き込んだ。ずぶずぶっ! と血が混じった蜜が飛び散り、妙子の後ろの穴が引き裂かれるような痛みに彼女は絶叫した。

「ひゃあああっ! 痛いっ、裂けるっ……! あそこじゃなくて……あんっ……!」

しかしクロノスは構わず、とてつもないスピードで腰を振りまくった。ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! と激しい肉のぶつかる音が響き渡り、血と蜜が飛び散る。最初は痛みで泣き叫んでいた妙子の声は、次第に蕩けたあえぎ声へと変わっていった。「あぁんっ! お尻の奥が……熱い……! はあんっ、はあんっ! もっと……壊して……! クロノス様の熱いもので……後ろを犯してぇっ!」

クロノスは獣のように腰を打ち付け、最後に深々と根元まで突き刺したまま、白濁の熱い精液を妙子の後ろの奥深くにぶちまけた。どくっ、どくっ、と大量の精液が注ぎ込まれ、溢れ出る。

妙子はぐったりとベッドに崩れ落ち、身体を小刻みに痙攣させながら荒い息を吐いていた。

「その汚いゲロ、掃除しておけ」

クロノスは冷たく命じ、部屋を出て行った。

彼にとっては、何をして過ごそうとも、誰と過ごそうとも、結局のところ『いつも通りの退屈な時間』でしかなかった。彼の渇きを癒やすものは、この世界には存在しない。

退屈な時間を終え、再び執務室のPCの前に座ったクロノスは、冷たい指先でキーボードを弾いた。

神の遊戯ハッキングの開始である。

瞬く間に世界中の放送局のシステムを掌握したクロノスは、全世界に向けて同時放送を開始した。

『――私は、アルカディアのクロノスである』

画面に映し出された仮面の男に、全世界の人間が息を呑んだ。

『今日はひとつ、世界平和を考えて行動することを宣言しよう。現在、泥沼の内戦が続いている西アフリカの【ナジェリア共和国】。あの悲惨な国に対し、私は絶対的正義の力を持って、本日中に紛争の解決をすることをここに宣言する』

世界中の首脳陣が、その言葉の意味を図りかねて戦慄する中、クロノスは嘲るように言い放った。

『これから20分後。かの国の内戦は、”すべて”解決する。私、クロノスが保証しよう』

放送を一方的に遮断すると、クロノスは間髪入れずに次のハッキングを開始した。それは放送局などという生易しいものではない。世界各国の『絶対不可侵の防衛システム』に対する、神の侵略だった。

***

すべてを終わらせ、自宅に戻った司は、リビングでニュース番組に釘付けになっている母の姿を見た。

「あ……ああ……なんてこと……」

母は口元を両手で覆い、ガタガタと震えていた。

テレビ画面には、この世の地獄が映し出されていた。

先ほどまで内戦状態にあったはずの『ナジェリア共和国』が、地図上から消滅していたのだ。

世界各国から一斉に発射された核ミサイル、そして艦艇からの無数の通常ミサイルが、狂ったように一国の領土へと降り注ぎ、国ごと、国民すべてを文字通り『蒸発』させたのである。

アナウンサーが悲鳴のような声で原稿を読んでいる。

『現在、瑞穂国内への大規模な放射能汚染を防ぐため、軍が緊急の電磁バリアを展開中です! 繰り返します……!』

ニュースは、この未曾有の国境を超えた大量虐殺――いや、国家消滅の犯行に、テロ組織『アルカディア』が関わっていると報じていた。

「……平和になって、良かったね」

ニュースの惨状を見つめながら、司は誰にも気づかれないように、口の端を吊り上げてニヤリと笑った。

内戦は終わった。戦う人間が一人残らず灰になったのだから、紛争など起こりようがない。これぞ究極の『平和』解決である。

時を同じくして、瑞穂国の諜報局執務室。

「クロノスゥゥゥゥッッ!!!」

神崎の血を吐くような咆哮が、壁を震わせた。

国を一つ、国民のすべてを、たった20分の暇つぶしで皆殺しにした仮面の悪魔。

神崎は自身の無力さと、桁違いの悪意のスケールを前に、ただ怒りと絶望に震えることしかできなかった。

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