第42話:虚飾のホログラムと、退屈な箱庭の遊戯
ディープ・エデンの住人たちによって引き起こされた前代未聞の同時多発自爆テロは、その後数日間にわたり、連日テレビのニュース番組を独占し続けた。
画面に映し出されるのは、黒焦げになった官公庁の無残な姿と、重々しい表情で事態を報じるアナウンサーの顔ばかりである。当然のことながら、現政府による徹底的な言論統制が敷かれているため、報道の内容は「暴力による体制破壊への強い非難」と、「人間爆弾というおぞましい狂気の糾弾」に終始していた。
彼らがなぜ命を投げ打ってまでデモを行ったのか、その背景にある「格差」や「政府への不満」といった本質的な批判は、見事なまでにメディアから消し去られていた。
『――この国には、確かに悲しい格差が存在しています』
リビングの大型テレビの中で、大鷹宰相閣下が沈痛な面持ちでマイクに向かっていた。
記者会見の生中継。しかし、司の目にはそれがひ酷く滑稽な茶番にしか見えなかった。なぜなら、画面の向こうで誠実そうに語りかけているその姿は、本物の大鷹ではなく、病床にある彼のデータを元に作られた精巧な『ホログラム』だからだ。
『だが、それを暴力で何とかしようとすることを、我々は決して許してはいけません。今後、生活貧困者に対する政策は益々充実していくことを、国民の皆様にはこの場でお約束いたします』
「……ふっ、あっはは」
司は、冷めた紅茶の入ったカップを片手に、思わず鼻で笑い声を漏らした。
(お前たちの政権自体が、そもそも暴力で奪い取ったクーデター政権じゃないか。面白い冗談を言うねぇ。貧困者の問題だって、散々先延ばしにして軍拡競争に狂ってた癖に。だいたい、一国の首相がホログラムで国民に語りかけてる時点で、三流のギャグ映画だよ)
司の内心には、政府に対する怒りも、テロで死んでいった者たちへの同情も、微塵も存在しない。
正直なところ、この国に対する不満など何一つなかった。ただ、あまりにも自分の能力が万能すぎて、この世界が退屈すぎた。だから、暇つぶしに少しだけ『国』というおもちゃを壊してみた。ただそれだけの事なのだ。
ふと横を見ると、同じくニュースを見ていた母が、両手を胸の前で組み、怯えたような心配そうな顔で画面を見つめていた。
「……恐ろしいわね。こんなことが起きるなんて」
「大丈夫だよ、母さん」
司は、完璧な『優しい息子』の顔を作り、母の震える肩を抱き寄せた。
「母さん……怖い時は、全部僕に任せて。僕が、母さんの全部を抱きしめて守ってあげるから……」
その言葉がきっかけだった。母の怯えた表情が、ゆっくりと溶けるように変わっていく。瞳が潤み、頰が上気し、女としての艶やかな顔が浮かび上がった。
「……司……」
二人の顔が自然と近づいていく。息が混じり合い、唇が触れそうで触れない距離。微かな震えが母の体を伝う。
そのまま、司は母の手を取って立ち上がり、母の部屋へと導いた。ドアが静かに閉まる。
部屋の中は薄暗く、ニュースの音が遠くから聞こえてくるだけだった。母はベッドの端に腰を下ろし、疲れ果てた様子で司を見上げた。目には涙が浮かび、声が震えていた。
「司……私には、あなたしかいないの。もう、何もかも怖くて……どうしていいかわからないわ。お願い……私を、抱きしめて……」
母の懇願するような瞳に、司は静かに頷いた。
その夜、母の部屋では長い時間が流れた。抑えきれない吐息と、絡み合う影。母の疲れた体が、司の腕の中で何度も震え、甘い声が漏れる。彼女は繰り返し「司しかいない」と囁きながら、息子にすべてを委ねていた。
やがて、すべてが落ち着いた頃。
司は乱れた服を整え、無言のまま母の部屋を出て行った。背後で、母の荒い息遣いがまだ聞こえていた。
***
今日で、首都圏に敷かれていた戒厳令が解除されるらしい。
明日からはまた、死ぬほど退屈でつまらない学園生活が再開する。司は自室のベッドに寝転がりながら、スマートフォンを操作していた。
画面の向こうでは、LINEのビデオ通話で繋がっている優子が、真剣な顔でノートに向かっている。時間を決めて行っている『優子のバカ育成ゲーム』――もとい、勉強会だ。
司が少しばかり思考を誘導し、効率的な学習法をインストールしてやった結果、優子の成績は本人も気味悪がるほどに右肩上がりを続けている。元々の素地が悪くなかったこともあり、今や超名門である『第一帝都学園』の合格すら十分に視界に入るレベルにまで到達していた。
(ゲームとしては、ちょっとイージーモードになりすぎたな……)
司は欠伸を噛み殺しながら思う。わざわざ難易度をハードモードに設定し直して、彼女の記憶に負荷をかけることもできるが、それすらも面倒くさかった。まあ、このまま優秀な手駒として育てておくのも悪くないだろう。
そんな無気力な思考を漂わせていると、不意に着信音が鳴り響いた。
画面に表示された名は『神崎』。
司は口角をわずかに上げ、通話ボタンをタップした。
「はいはい、もしもし?」
『貴様ッ……!! 一体何を考えている!! 暇つぶしにもほどがあるぞ!!』
耳をつんざくような神崎の怒鳴り声が、スピーカー越しに響き渡る。その声には、圧倒的な権力を持ちながら何も防げなかった男の、血を吐くような悔しさが滲んでいた。
「いやいや、人聞きの悪いことを言わないでくださいよ、神崎おじさん。今回は別に、俺が彼らに『自爆しろ』なんて命令したわけじゃないですよ?」
司はベッドの上でゴロゴロと寝返りを打ちながら、悪びれる様子もなく軽口を叩いた。
「俺はただ、彼らに問いかけただけです。『今の底辺のままでいいのか?』『どうしたらこの腐った現状を変えられるのか?』ってね。そのためには、同じ境遇の仲間同士で団結して、試練を乗り越え、目標を達成することが大事だ……そう教えただけですよ。ね? 少年雑誌がよく言う『友情・努力・勝利』ってやつじゃないですか。美しい話でしょう?」
『ふざけるなッ! 悪魔め……!』
「あ〜、そういえば」
神崎の怒号を遮るように、司はわざとらしく思い出したような声を出す。
「佳奈さん、どうしました? 最近見ないけど」
電話の向こうで、神崎の息を呑む音が聞こえた。わずかな沈黙の後、絞り出すような低い声が返ってくる。
『……実家に帰った』
「あーあ。だから言ったじゃないですか。俺が記憶をいじった『そのまま』にしておいた方が、幸せに暮らせたのにって。神崎おじさんが余計なこと言って現実を見せるから、壊れちゃったんですよ。この世に『本物』の幸せなんかないんだからさぁ」
『……貴様ッ!!』
神崎の堪えきれない殺意が、電波に乗ってビリビリと伝わってくる。
『これ以上は容赦せん。貴様を憲兵隊に引き渡す……! 覚悟しておけ!!』
「いやいや、神崎おじさんも本当は分かってるんでしょ?」
司は冷ややかな声で、絶対的な事実を突きつける。
「いくら憲兵隊を差し向けたところで、あいつら全員、その日のうちに『俺の狂信的な私兵』に変わっちゃうだけですよ? むしろ戦力提供ありがとうございます、って感じですけど」
ぐっ、と神崎が言葉に詰まるのが分かった。
「神崎おじさん。俺がなんで、おじさんの脳をハッキングして『完全な味方(奴隷)』にしないか分かりますか?」
『……何だと?』
「おじさんのこと、気に入ってるからですよ。足掻いて、苦しんで、絶望する……最高の『おもちゃ』としてね」
絶句する神崎を放置したまま、司は「まぁ、せいぜい何でもやってみてくださいよ。じゃあね」と一方的に通話を切った。
電話の向こうで、神崎は握り潰さんばかりの力でスマートフォンを握りしめていた。
司の言う通りだ。憲兵など使えば、ミイラ取りがミイラになるだけだ。あのバケモノを物理的な武力で制圧することは不可能に近い。
神崎の脳裏に、唯一の希望の光がよぎる。……高田の研究所。あそこで進められている『対抗策』だけが、人類に残された最後の希望だった。
一方、通話を終えた司は、ベッドからゆっくりと身を起こした。
窓の外は、戒厳令明けの虚無的な静寂に包まれている。
「さて、と……」
司は上着を羽織ると、部屋を出た。くるみの家に向かうためだ。
夜の冷たい風が頰を撫でる中、司はゆっくりと足を進めた。母との熱く湿った余韻がまだ体に残っているのに、すでに次の獲物を求める獣のような衝動が胸の奥でうずいていた。くるみのアパートは新しく引っ越したばかりのはずだったが、司は予想通り彼女の部屋がどんな状態になっているかを想像しながら、薄暗い階段を上っていった。
玄関のチャイムを鳴らすと、中からすぐに「はぁい~」という舌っ足らずで甘えん坊な声が返ってきた。ドアが開き、くるみが顔を覗かせる。ふわふわとした部屋着姿で、髪を少し乱れさせ、瞳がすでに妖しく輝いていた。さっきまでの母の怯えた顔とは正反対の、女の欲望がたっぷりと滲み出た表情。
「司くん、来てくれたの~?」
くるみの声は甘く溶けるように響き、彼女は迷わず玄関先で司の胸に飛びついてきた。柔らかい体がぴったりと密着し、豊かな膨らみの感触が布越しに伝わってくる。くるみは上目遣いに司を見つめ、唇を尖らせてキスをねだった。
「ん……司くん、早く……」
司は微笑みを浮かべ、くるみの顎を優しく持ち上げて唇を重ねた。何度も、何度も角度を変えて優しく啄むようなキスを繰り返す。最初は軽く触れるだけだったのに、徐々に熱を帯び、舌が絡み合う深いキスへと変わっていった。くるみの唇から「あっ……」と小さな吐息が漏れ、彼女の体がびくんと震える。湿った息が混じり合い、甘い唾液の味が司の舌に広がった。くるみの手が司の背中に回り、爪を立てるようにぎゅっと掴んでくる。
そのまま、二人は部屋の中へと滑り込むように入った。予想通り、新しく引っ越ししたばかりのアパートはすでにゴミ屋敷と化していた。床には散らかった服や空のペットボトル、食べかけの菓子袋が積み重なり、甘ったるい空気が漂っている。それでも司は気にも留めず、くるみの腰を抱き寄せた。
「風呂に入るぞ」
くるみは嬉しそうに頷き、二人はすぐに服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿になった。湯気が立ち上る浴室で、司は壁に寄りかかり、くるみに体を預けた。泡まみれのくるみがスポンジ代わりに自分の体を使って司を洗い始める。彼女のたわわな豊かな胸が、滑る泡とともに司の胸板や腹にぐにゅぐにゅと押しつけられ、硬く尖った先端が敏感な肌を何度も突いて刺激を与えてくる。柔らかく重みのある膨らみの谷間が司の体を包み込み、泡のぬるぬるした感触が絡みついて離れない。
「司くん……気持ちいい?」
くるみの声は甘く上擦り、彼女は洗いながらも体をくねらせてさらに密着を強めてきた。泡にまみれた豊かな胸が司の体を上下に擦り、尖った先端が時折ぴりっとした快感を呼び起こす。司の視線が下に落ちると、くるみの濡れた肌が妖しく光り、秘めやかな部分がわずかに覗いているのがわかった。
洗体を続けながら、くるみはふと顔を上げて司の目を見つめた。
「ねえ、司くん……優子ちゃんとはどうなの? こういうこと……するの?」
司は一瞬、驚いた表情を浮かべたが、すぐに低く笑った。
「俺の雌豚が嫉妬するなんて珍しいな」
くるみの頰がぽっと赤らむ。司は彼女の頭を優しく撫でながら答えた。
「優子とはガールフレンドごっこだよ。まだ何もしてない」
その言葉を聞いた瞬間、くるみの顔がぱっと明るくなった。
「ほんとっと!?」
嬉しそうに声を弾ませ、くるみは張り切った様子で体を激しく動かし始めた。豊かな胸を司の熱く硬くなった部分にぴったりと寄せ、柔らかい肉の谷間で挟み込む。彼女の可愛らしい唇から大量の唾を垂らしながら、ぬるぬるとした泡と混じり合って、熱い胸の谷間で司の昂ぶりをしごき立て始めた。上下に激しく揺れるたわわな膨らみが、司の敏感な部分を包み込み、圧迫と滑りの快感を交互に与えてくる。くるみは自分でも興奮したのか、激しくいやらしいあえぎ声を漏らしながらその動きを続けた。
「あんっ……はぁんっ……司くんの、熱くて……硬い……んっ、んふぅっ……あっあっ、気持ちいいの……? くるみの柔らかい胸、司くんの熱い部分にぴったりでしょ……はあんっ!」
張り切ったくるみの動きはどんどん激しくなり、胸の谷間が司の昂ぶりを締めつけ、唾液が糸を引いて滴り落ちる。彼女の瞳は完全に蕩け、舌を少し出して喘ぎながら、司の反応を貪るように見つめてくる。司は久しぶりの刺激に我慢の限界を感じ、くるみの熱く濡れた秘部に三本の指をずぶずぶと沈め込んだ。熱く締まる内壁が指を咥え込み、ぬるぬるとした蜜が溢れ出す。
「ひゃあんっ! あっ、ああっ……司くん、指が……奥までぇ……んんっ、はぁんんっ!」
くるみはいやらしいあえぎ声をあげて腰をくねらせ、指の動きに合わせて激しく体を震わせた。秘部の奥が指を締めつけ、びくびくと痙攣する。彼女の白い太ももが震え、泡と蜜が混じって床に滴り落ちる。
我慢できなくなったくるみは、自分から司の固く大きく反り返った昂ぶりを掴み、熱く濡れた秘部にぐっと迎え入れた。
「あああっ……! 入ってきたぁ……司くんの、太くて……んんっ、はあぁんっ!」
腰を激しく振りながら、くるみは白目をむいて喘ぎまくった。いやらしいあえぎ声が浴室に響き渡り、「あんっあんっ! 司くん、すごい……一番奥、子宮口に当たってるぅ……はぁんっ、んふぅっ、あっあっあっ!」と甘く淫らに叫び続ける。彼女の豊かな胸が激しく揺れ、尖った先端が司の胸に擦れる。腰の動きは容赦なく速く、ぐちゅぐちゅと湿った音が混じり、くるみの体が何度もびくびくと痙攣した。何度も失神しそうになりながらも、くるみは必死に司にしがみつき、快楽に溺れていく。瞳は完全に蕩け、涎を垂らして喘ぎ、司の昂ぶりを秘部の奥まで飲み込んで離さない。
司も限界を迎え、くるみの身体の奥にある一番深い部分に向けて、熱く白濁とした液体を溢れ出るほど注ぎ込んだ。どくどくと脈打つ放出が続き、くるみの秘部から余分な白濁が逆流して太ももを伝う。くるみは全身を震わせながら最後のいやらしいあえぎ声をあげ、「あぁぁんっ……! 熱い……いっぱい、出てる……司くんの、くるみの中に……んんっ、はぁぁっ!」と叫び、ぐったりと司の胸に崩れ落ちた。
すべてが終わった後、湯気の残る浴室で二人はしばらく絡み合ったまま息を荒げていた。くるみの体はまだ時折びくびくと痙攣し、司の腕の中で甘くため息をついている。司は彼女の髪を優しく撫で、満足げに目を細めた。
革命が起きようが、数万人が死のうが、自分にとっては些細なバグにすぎない。今日もまた、どうでもいい、死ぬほど退屈な休日だったことに変わりはなかったのである。




