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第37話:狂気の化け物と、変わらぬ退屈

くるみは何度も何度も果てて、ぐったりとベッドに横になっていた。

彼女の身体は汗で艶やかに光り、荒い息がまだ続いていた。秘部は熱く濡れそぼり、白く泡立った蜜が太ももを伝い落ち、シーツを大きく染めていた。司は満足げに彼女の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと服を着直した。

司は窓際に立ち、外の暗い夜景を眺めながら次の楽しみを待っていた。

そのとき――

突然、窓の側から凄まじい殺気が迫った。

司は咄嗟にくるみの身体を抱き寄せ、彼女の上に覆い被さった。

「えっ……?」

くるみの力ない声が耳元で漏れた瞬間、ガシャァァァン! という激しい破壊音が響き渡った。

窓ガラスが粉々に砕け散り、夜の冷たい風が一気に室内に吹き込んだ。

同時に、アパートの廊下や隣室から悲鳴が上がり始めた。

モルフは最初、鉄球のような無機質な塊として窓を突き破り、室内に転がり込んだ。

次の瞬間、その塊は人間の姿に変形した。

小柄な体躯(150cm前後)、黒いウェーブ長髪、青白い肌。黒いコートとマントを翻し、黙っていれば美形に見える顔が、にたりと下劣な笑みを浮かべた。

「ケラケラケラケラ! 楽しい玩具がいっぱいじゃねえかよぉ~!」

モルフは狂ったように笑いながら、廊下に飛び出した。

アパートの住人たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、モルフは右腕を巨大な剣に変形させ、容赦なく振り下ろした。

「死ねぇ死ねぇ死ねぇぇぇ! バラバラバラバラバラバラバラバラ!」

一人の主婦が逃げ遅れ、悲鳴を上げた瞬間、剣が彼女の胴体を真っ二つに切り裂いた。血しぶきが壁に飛び散り、臓物が床に落ちる音が響く。

隣の部屋から出てきたサラリーマンが「ひっ!」と声を上げたが、モルフは左腕をドリル状に変形させ、その胸を一瞬で貫いた。

さらに階段を上ってきた若いカップルが二人、触手状の腕で絡め取られ、同時に引き裂かれた。女性の悲鳴が途中で途切れ、男性の首が飛んだ。

「ケラケラケラケラ! もっと叫べよ! もっと血を撒けよぉ! 俺は人をぶっ壊すために生まれたんだからよぉ~!」

モルフは興奮したように笑い続け、アパートの廊下を暴れ回った。

逃げ惑う家族連れの父親を触手で絡め取り、母親と幼い子供を同時に剣で串刺しにした。血の海が廊下に広がり、断末魔の叫び声が夜の住宅街に響き渡った。

さらに三階の住人たちが次々と犠牲になり、モルフは血まみれの廊下を転がるように移動しながら、十数人の住人をあっという間に惨殺した。

「ぐちゃぐちゃに刻んでやるぜ! 約束なんて破ってやるよぉ! ケラケラケラケラケラ!」

モルフは狂喜しながら、くるみの部屋の窓ガラスを再び狙い、鉄球状に戻って突進した。

ガシャァァァン! 再び窓が砕け散り、モルフは室内に飛び込んできた。

司はくるみを守るように抱いたまま、微動だにせず立っていた。

「面白い趣向だな」

司は少しだけ目を細め、モルフに興味を持った。

(ほう……変形するのか。ちょっとしたからくり人形だ)

モルフはケラケラと笑いながら右腕を巨大な刀に変えた。

「俺にかかればおまえごとき人間風情、あっという間にバラバラバラバラにしてやるよっ! ケラケラケラ!」

モルフが切りかかってきた。

司は避ける素振りも見せずにそのまま立っていた。

「死ねぇぇぇ!」

モルフの刀が司の首を狙って振り下ろされた瞬間――

バサッ!

司の右腕が見えない速度で振り上げられた。

風圧だけでモルフの右腕がスパッと切断され、床に落ちた。

「すげぇなぁ……ケラケラケラ! 面白いなぁ、カブトムシ野郎をバラバラにしただけはあるなぁ!」

モルフは笑いながら、切断された腕の細胞を伸ばし、瞬時に元に戻した。

「俺は死なねえんだよ! 死なねえやつが最強なんだよぉ~! ケラケラケラ!」

司は少しニヤリと笑った。

「面白いからくり人形だな」

バカにしたように言うと、モルフは感情をむき出しにして叫んだ。

「バカにしやがったな! 俺は人形でもモルモットでもねえ! ましてや失敗作なんかでもねえ! 俺が完全な人間、パーフェクトヒューマンだぁぁぁ!」

叫んだ瞬間、モルフの頭が吹っ飛んだ。

「五月蝿いなぁ。黙れよ」

司は威圧的な力を解放しただけだった。

司の脳裏に過去の戦いがよぎった。

海底都市ディープ・エデンで拉致した者たちを支配下に置き、世界を揺るがす宣言を発したときも、超弩級戦艦瑞穂武尊を吹き飛ばしたときも、そして以前に遭遇したパーフェクトヒューマン3体を粉砕したときも、すべて同じだった。

どんな強大な敵も、どんな大規模な破壊も、すぐに退屈になってしまった。

モルフの頭部細胞が伸び、すぐに再生した。

「そんなもんでぇ! ケラケラケラ!」

しかし次の瞬間、モルフの身体全体がバラバラに切り裂かれた。

壁や天井が斬撃の余波で抉れ、くるみの部屋はすでに崩壊寸前だった。

モルフはまた再生し、体中を尖った針や剣に変形させて突進してきた。

「死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇ!」

司は微動だにせず立ったままだった。

モルフが懐に入った瞬間、再びモルフは粉々に切り裂かれた。

「ほんとにしつこいやつだなぁ。もう飽きてきたよ」

モルフは再生しながら叫んだ。

「俺は死なねえ! 死なねえことは負けねえことなんだよぉ!」

その瞬間、くるみの部屋の天井がバラバラと崩れた。

司は咄嗟にくるみを守るように覆い被さり、天井の木材や瓦礫が司の背中に当たった。

くるみは司の命令で深い眠りに落ち、一切傷ついていなかった。

隙を突いてモルフが司の首に切りかかった。

「やったぞぉ! ケラケラケラ!」

しかし――

「何が面白いんだ?」

司の声がモルフの背後から響いた。

モルフは驚愕した。

「なっ……なぜ後ろに……?」

司の腕には毛布にくるまったすやすやと眠っているくるみが抱きかかえられていた。

「なぜってお前がトロいからだよ」

司はモルフをあざ笑うように言った。

モルフは狂ったように笑いながら叫んだ。

「女を抱えたままどう戦うつもりだぁ!」

「こうするのさ」

司はそのまま窓から外へ飛び出した。

モルフは追いかけ、アパートの外壁を破壊しながら追跡した。

「逃げるのかよ! ケラケラケラ!」

二人は住宅街を山のほうへ向かって高速で移動した。

司は平然とした顔で走り続け、モルフも余裕の笑みを浮かべながら追いすがった。

「お前と俺は変わらねえスピードだ! どこまでも追いかけてやるよぉ!」

モルフは走りながら狂ったセリフを次々と吐き出した。

「ケラケラケラ! もっと速く走れよ! 俺は死なねえんだからよぉ~! お前ごとき人間風情、いつまで逃げられると思ってんだよ! バラバラバラバラバラバラ! 約束なんて破ってやるぜ! ケラケラケラ!」

二人は長い間、夜の住宅街を駆け抜け、山のほうへと進んだ。

モルフの笑い声と狂った叫びが途切れることなく続き、司との距離は一切縮まらなかった。

「お前はもう終わりだぁ! 俺は死なねえ! 死なねえやつが最強なんだよぉ~! ケラケラケラケラ!」

しかし突然、モルフの足が崩壊した。

「なぜだっ!?」

モルフは再生しながら叫んだ。

「だからお前自身がトロいからだよ。まだわからないのか? 俺はお前にスピードを合わせて走っただけだ。そして徐々にスピードを上げてやったのさ。お前の気がつかない程度にな」

モルフは全身を剣のように尖らせて突進した。

「両手がふさがった今ならお前を刻んでやるよ。そのまま逃げれば良かったのになぁバカが!」

しかし、司の腕の中にいるはずのくるみはすでに百メートル先で眠っていた。

その瞬間、モルフは粉々に飛び散った。

周囲は再開発地区で人気のない場所だった。

司は冷静に言った。

「俺の計算だとこれで終わりだと思うが」

瞬間、モルフの頭だけが再生した。

「ケラケラケラ……まだだ……まだ終わってねえ……!」

モルフは頭だけを必死に宙に浮かせ、情けない声で叫んだ。

「うわぁ……なんで身体が……戻らねえよぉ……おい、助けてくれよぉ……俺、こんなの嫌だよぉ……!」

司は醒めた目で言った。

「お前は不死身でもなければ死なない訳でもない。今俺はお前を細胞レベルで破壊したんだよ。頭だけ残してな」

その時、ロータリーエンジンのけたたましい音が鳴り響いた。

村上がRZ-7で到着したとき、頭だけのモルフと司が立っていた。

村上は疑問に思った。

「……モルフが再生していない?」

司は村上を見て言った。

「村上のおっさんかぁ。なんで再生しないか? 疑問だろ。こいつのバラし方、見せてやるよ」

モルフは恐怖に震え、懇願した。

「やめてくれ……助けてくれ……!」

司は指をパチンと弾く仕草をした。

モルフの頭は一瞬で消え去り、完全にモルフは消滅した。

村上はただ驚くだけだった。

司はつまらなそうに言った。

「もう少しましなもん持ってこいよと、神崎に伝えといてよ」

モルフもまた、司の退屈しのぎにはならなかった。

司はどこかに電話をかけ、一瞬で村上の元からくるみとともに消えた。

村上は何が起きたのか分からないまま、神崎に電話をかけた。

「モルフはやられた。作戦は失敗だ。目標のアパートの被害はこっちで工作しておく。多分不完全だと思うがな」

電話を切った村上の顔は、久しぶりに感情を露わにしていた。

司は実家に戻り、母に告げた。

「俺はしばらく家に帰らないが心配するな! これは命令だ」

母は「はい」とだけ答え、従順に頷いた。

アルカディアのメンバーが手配したホテルに、司とくるみはいた。

司は眠るくるみを見ながら、静かに目を閉じた。

その頃、神崎は自宅のベッドにいた。

横には佳奈が「健人様……」と甘く囁きながら身体を求めていた。

しかしそれは本物の佳奈ではなく、司にフェロモンで落とされ、犯された上で「俺だと思って神崎を愛せ」と命令されて操り人形のようになった存在だった。

神崎は佳奈の形をした人形を抱きながら、司への怒りをさらに燃やしていた。

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