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6話 慣れも必要

~~ヘイロンside~~


「ふぅ…………こんぐらいか?」


俺はラルナと離れてから、ひたすら岩壁を掘っていた。

流石に飽きた……疲れたしもういいにするか。


「オーイ! ヘイロ~ン!」


「ん?」


後ろの方から、ラルナの声が聞こえてきた。


「おお、リュカ。もう帰ってきたのか、速いな」


「僕の足の速さは誰にも負けないからね」


そう言って、リュカは誇らしげな顔になった。


「つーか、お前はなにやってたわけ?」


「わ、わたし?」


「あーはいはい、何もやってなかったわけな」


「やってたわよ!」


「じゃあ何やってたんだ?」


「……こ、これ集めてた」


ラルナはそう言って、小さな貝殻を俺に見せてきた。


「……ようするに遊んでたと」


「違うの! これには色々理由があるの!」


「あっそ。 もういいよ」


俺はそう言ってラルナを適当にあしらった。


「それよりヘイロンすごいね! もう巣ができてるじゃん!」


「まぁ、掘ったたげだけどな……」


でも、これなら雨ぐらいはしのげるだろ。

もう昼になるし、そろそろ休憩にするか……


「よし、休憩にするか」


「さんせ~い!」


「私……全然疲れてないんだけど……」


そんな事を言っているラルナは放っておき、俺は海水に足をつけた。


冷たい水が鱗の隙間に入り、心地よく感じる。


このまま入ってもいいか。


俺はそう思い、寄ってくる波に逆らい海の中に入った。

そして、翼を沈め勢いよく海面から出す。

水しぶきが高く飛び、頭や肩にかかる。


「ちょっと!!水こっちまでかかってきてるんだけど!」


「いいじゃねぇか、気持ちいだろ」


「馬鹿じゃないの! もう秋になるのに気持ちいい訳ないでしょ! だいたい、こっちは着替えてる途中でしょうが!」


「知らねーよ」


俺がそう言った瞬間、横から汚い毛玉が飛んできた。


「ふぅ……スッキリ」


「お前、いつまで狼の姿でいるんだ?」


「こっちの方が楽だし便利なんだもん!」


「そうなのか?」


意外だな……人間の姿の方が細かいことできて良さそうだと思ったんだが……違うんだな。


俺はそう思いながら、もう一度翼を海水につけて冷やした。


「ねぇ」


後ろから、ラルナの呼ぶ声が聞こえてきた。


「あ?」


俺は適当に返事をして、首だけを後ろに向けた。


「どう? 似合ってる?」


ラルナが新しい服に着替え、俺の前でポーズを決めている。

前の服よりかは動きやすそうな服だ。


「知らねー。 似合ってんじゃねーの?」


「なによその適当な答え!」


「だって俺服着ねーし」


「ねぇ、それより僕お腹すいた」


「ん、ああ」


確かに朝以来食べてないしな。 つか、リュカは朝食ったかすらわかんねーしな。



俺は何を食べようか考えながら、ボーッと海を眺めた。


海……魚でも狩るか。


「よし、そこら辺で待ってろ」


「え、何処行くのよ」


「昼飯取ってくるから、火つけといてくれ」


「な! そんなの無理よ!」


「じゃあ木を集めといてくれ。 わかったな」


「え、ちょっとま……」


俺は、何かを言いかけたラルナを無視して、冷やしていた翼を羽ばたかせ、空に飛んだ。


さーてと、何処にいるかな……どうせならでかいのがいいよなー……


俺は何を捕まえようか考えながら、海面スレスレを飛び続ける。


やっぱりサメとかが一番だなぁ……

ちょうどヒレ出してるやつとかいねぇか……


そんな事を思った時だった。

突如海面から、二つのヒレが出ていたのが見えた。


まさかこんなラッキーな事が起きるなんてな……見たところ2匹か?

やっとまともな食事にありつけそうだな。


俺はそう思い、海面に向かって思いっきり突っ込んだ。

一匹は口で、もう一匹を右腕で強く掴む。


こ、これは……!


獲物をつかんでそれを見た瞬間、目を見開いた。


これは……食えるのか? 食った事がないんだが……


俺は、その獲物を掴んだまま巣へと帰った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ぅッ…!!」


「わぁい! ご馳走だー!」


「ヘイロン……これ……イルカってやつよね……」


「あ、あぁ」


地面に横たわっているイルカには、俺の歯型と爪跡がくっきりとついている。

青い皮膚の表面を止めどなく血が流れ、なんとも食欲をなくす色のコントラストを生んでいる。


流石に食べる気にならねぇ……


「……………」


ラルナは死んだイルカを、口を半開きにして見ている……


……それ以前の問題だったか……


俺は、そのラルナの顔を見てそう思った。


ラルナは人間の中での普通の生活を送ってたはずだ……

こんなグロいのいきなり見せちまったら……いやでも、これからはもっと見るはめになるかもしれないんだ……今の内に慣れさせておいた方が良いのか?


「こう言うのは苦手か?」


俺は唖然としているラルナを見て、そう言った。


「……わからない……初めてだから……ただ……少し気持ち悪い」


そりゃそう思うよな…


「今はそれで良いが、俺達に協力するって事は、こう言うもんを沢山見る事になるかも知れねぇ……今の内に慣れとけよ……」


「……わかった……」


「ねぇ、早く食べよう?」


「………」


「………」


リュカは、イルカを見てヨダレを垂らしている。


こいつはまぁ……自分で狩って食ってたからな……そう言うのは慣れてるみたいだな。


「しかたねぇ……食うぞ」


「う、うん……」


「で、木は?」


「あ、ああー……えっと……これじゃだめかな?」


ラルナはそう言って、小さな小枝の集まりを指差した。


「これほとんど朝に使った木の残骸じゃねぇか」


「だ、だって……こんなの取ってくるとは思ってなかったんだもん……」


「ったく……しょうがねぇ」


俺はそう言って、そこらにある木を折って持ってきた。

そして、朝と同じように火をつけ、イルカを一匹丸焼きにした。

もう一匹は俺がそのままいただこう……と思ってるが……


う、やっぱ食う気になれねぇな……つか、美味いのか?


「ねぇ、もういいんじゃない?」


リュカは、火に当てたばかりのイルカを見ながらそう言った。


「少しは待つことを覚えろよお前」


「じゃあヘイロンも焼き終わるまでまってよ」


「う……まぁいいだろう」


正直、早めに食べて自分の目の前から消したいのだが……

それに、ラルナもこんなのずっとは見てたくないだろ。


「………」


ラルナは黙ったまま、まだイルカを眺めている。


「ねぇ、食べた後はどうするの?」


「ん、ああ……どうしようか」


「お前に力の使い方を教えたいが、どう教えればいいかわからんしな」


「じゃあどうするの?」


「とりあえず、俺の力の使い方は教えとく。それをうまく利用してくれ」


「もう、いいんじゃない?」


リュカはそう言って、俺とラルナの話を切る。


「あぁ、まだだな……多分。もう少し待て」


俺は、そのリュカの問いに適当に答えて、話を戻した。


「ねぇ、それ見せてもらって意味あるの?」


「さぁな。 でも、俺はこうやって教えてもらったからな」


「あんたと一緒にされても……」


「ねぇ、もういいでしょう?」


木が炎で崩れると同時に、リュカはまた話を切る。


「お前なぁ……まぁいいか、少し早いが食うか」


俺も早く食べたいし……


俺は火にくべてあるイルカをとり、二人の前に置いた。


「……」


「いっただきまーす!」


リュカはそう言って、凄い勢いでイルカを食べ始める。


こりゃラルナの分は無くなるかもな……

まぁ、そっちの方が良いか、流石に今はあいつも食えねぇだろ。


ラルナは未だにイルカを見つめている……


……さてと……俺もひと口いってみるか。


俺は、恐る恐るイルカに噛み付き、そして千切る。


う……!?なんだこれ……!?


イルカの皮は異常に硬く、口の中でゴリゴリと音をたてる。


……こ、これは……


噛んでも噛んでもなくならない……その上無味……と言うより、ほぼ海水の味しかしない。


「とても食えたもんじゃねぇな……」


「そう? 僕は美味しいと思うけど…」


リュカはそう言って、凄い勢いでイルカを食べていく……


「よ、良かったらやるよ……リュカ……」


「え!? 本当に!? いいの!?」


「あ、ああ」


「やったぁ!!」


結局、俺の分もリュカが食べることになった。


「本当お前、よく食えるな……」


「え? なんで?」


「……」


「……」

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