61話 合流
〜ラルナside〜
私達は外に出て、焼け焦げた魔獣の側までやってきた。
……この力が悪用されたらと思うと、私のことながら寒気がする。
「ぁ……ぁ……」
言葉にならない声をだし、口をポカンと開けている兵士達。
……これはこれで、居場所がなくなるのかもしれない。
私は、黒焦げになり煙を出している魔獣の死体を見てそう思った。
「……」
半端に静まり返ったその空間で、最初に口を開いたのはダイルさんだった。
「今のは、ラルナ様が……?」
"多分"なんて曖昧な言葉を、今更使うのはやめよう。
私はそう思い、「そうだよ」とハッキリと答える。
「これが、竜族が求めた力……」
「……うん。 天候を操る力、なんて言われてるけど、私はまだ雷を落とす事しかしたことない」
「そう……ですか……」
ダイルさんも驚いているんだろう。
なんだか、返す言葉がしどろもどろしていた。
「……」
魔獣を一蹴する程の力……人が持つには余りにも大きすぎる力を前にして、再び、沈黙の空気が降りようとした時だった。
突然、ガサゴソッと地面を掘り上げるような音が、どこからともなく聞こえてくる。
––––ッ!
まさか、また魔獣!
私が慌てて辺りを見渡すと、横からダイルさんが、「仲間です」と小声で呟いた。
ああ……ダイルさんの言ってた合流する……
というか、それはそれでこの状況だとまずい気がするんだけど……
兵士達は、音の正体が魔獣の襲撃だと思い込み、攻撃に備え武器を構えている。
流石に兵士達に向かって雷を落とす訳にはいかない。
かと言ってこのままにしていちゃ……
ガサッ––––!
「やっと外にでられ……」
なんらかの解決策を考える前に、音の正体は姿を現わす。
私はそれが仲間であると知っていた。 ただ、それが誰なのかをダイルさんに聞いていなかった。
だから、他の兵士と同じように驚きを隠す事が出来なかった。
「お父さんッ––––!?」
「ラルナ––––!」
お父さんは私に気づくと、慌てて土の中から飛び出してきた。
その場がどういう状況にあるのか、私は理解していながらも、父の元に走り寄り抱きつく。
久しぶりに会った母に抱きしめられた時よりも、なんだか暖かい。
私達はしばらく黙ったまま抱き合い、その暖かさを感じていた。
「……すまないラルナ、こんな形で迎える事になってしまい」
お父さんは言いながら、優しく私の肩を掴み、顔と顔を合わせるように、膝を折って座る。
「ううん……大丈夫。 それより今は……」
「うむ。 そうだな」
後ろを向くと、既に剣を手に持った兵士達が、私達に敵対心を向けていた。
「土の中からなぜ国王陛下がッ!? いや、今は国に仇なす反逆者!! 捕らえさせてもらいます!!」
どこか迷いを感じさせる言葉を、兵士は叫ぶ。
「親子の感動の再会の邪魔をするなど……騎士のやる事ではないだろう」
いつのまにかお父さんの隣に立っていた熊のような体型の男性が、兵士のその言葉に低い声で返した。
確かあの人は、お父さんの友人の……ガダさん……? だったっけ?
「全くだな。 お前達、それでも私の部下か? 恥を知れ」
ガダさんの言葉に賛同しながら、ダイルさんもこちらにやってくる。
「なっ! ダイル隊長!? 裏切るのですか!?」
「国王陛下の手前言い辛いが、私は今のこの国が正しいとは思えない」
「––––ッ!」
「お前達はおかしいと感じないのか?」
「し、しかしそれは嬢王陛下の決定であり……隊長も、それに賛同されていたではないですか……!」
兵士の焦った口振りに、ダイルさんは落ち着いて返す。
「……確かに、私も今回の役目柄、皆の前ではそのように振舞っていた。 それは、すまないと思っている。 ……だが、聞くがお前達。 私が最初から裏切っていたのならお前達もこちら側にいたのか?」
「それは……」
言い淀んでいる兵士達へとダイルさんは少しづつ語気を強めていく。
「上の者の意見に付き従うだけの生き方をしていれば、お前達はいつか死にながら生きる事になるぞッ……!」
「……!」
ダイルさんの言葉に酷いショックを受けたのか、兵士達は口籠る。
「お前達が、自分自身の信じた道を選び、その上で対立するのならば私はこれ以上何も言わん。 だが、力で人々を脅し、ましてやこの国の都を戦場として戦を起こすなど、私は正しいとは思えん!」
ダイルさんの強い語気に押され、兵士達の構えていた剣が下がっていく。
それに追い打ちをかけるようにダイルさんは言葉を放つ。
「己の考え踏まえもう一度決め直せ。 その結果対立するのであれば仕方あるまい……。 私とはまた違う、貫き通したい正義があるのだろう。 私はそれに、信念を持って応える」
言い終わると同時に、ダイルさんは自分の腰から剣を抜く。
ダイルさんの言葉は、私に向けられたものじゃない。
だけど、なんだろう……凄く感動した。
私も、こんなカッコいい言葉を言える人になりたいと、素直にそう思った。
「自分は……」
一番後ろに立っていた若い兵士が、震えた声を抑えながら、控えめに話し始めた。
「自分は……! ダイルさんの言う通り、上の人間の意見に……いえ、周りに流されていくような人間なんだと思います。 こうしてる今、僕はそちらへ行った方がいいのではないかと……考えてしまっている」
「……」
ダイルさんは、黙ったままその兵士の言葉を真剣に聞いていた。
そのやりとりに、私も緊張してしまう。
「そんな未熟者ですが……」
若い兵士は、剣をしまい、ハッキリと自分の意思を言葉にしようと前へ出る。
「付き従いたいと思う人……! 信じたいと思う人ぐらいは……! 自分で決めたい!」
もう既に、若い兵士の声は震えていなかった。
「それでは、ダメでしょうか」
真っ直ぐ向けられた、強い意志のこもった瞳に、ダイルさんは表情を緩める。
「及第点だな」
それを聞いた兵士はパッと顔が明るくなり、「ありがとうございます!」 と頭を下げた。
この人も、きっと凄い人になる。
なんの根拠もないけれど、私はそう思った。
他の3人の兵士も、剣をしまうと、一歩前へと出る。
一番若い兵士にあそこまで言われちゃうと、ちょっと言いづらいだろうなぁ。
それを察したのか、ダイルさんは救いの手を差し伸べる。
「お前達も同じ気持ちか?」
なんだかんだでダイルさんは厳しくも優しい。
だから慕われるのだろう。
ダイルさんの差し伸べた救いの手に、ガッシリと掴まるように、兵士達は「はい!」と答えた。
ご閲覧ありがとうございます!
あとがき、今回は特になしで!
では、次回もよろしくお願いします!




