56話 魔獣の行く先
〜〜ヘイロンside〜〜
「手助けは……必要ねぇか」
「当たり前だ」
ガルダ族の首を加えながら、シャカラは即答した。
口に咥えられているガルダ族は力なく垂れている。
どうやらもう生き絶えているようだ。
「流石は蛟王だな。 頼もしいぜ」
「くだらん事を言っている暇はないぞ。 次が来る」
「……!」
いつの間にか上から近づいてきていたガルダ族が、爪を立てて急降下してくる。
俺達は、再び二手に分かれてそれを避けた。
チッ……話しあう隙も与えねぇってか。
再びやってきた五匹のガルダ族に、俺は目を向ける。
やはりそこには、知性のある生き物ではなく、血に興奮した獣しかいなかった。
……やっぱりこいつらもさっきと同じだ。
いったいどうなってんだ……
戦いながら、敵の異様な姿の理由を考えていると、ふとタドの話しを思い出した。
(獣達は明らかにおかしかった。 行動はもちろん、姿形すらもね。 人は襲われ、村や町は損害を受けはじめた。
……私達は、そんな獣達の事を魔獣と呼ぶことにした)
まさか、魔獣……?
でも、なんでだ?
なんで急に……って、まぁ……やる奴は一人しかいねぇか。
「ヴィシュヌの野郎……!」
俺は小声で呟き、眉間にしわを寄せる。
でも、そうなるとヴィシュヌは未来を見る力と魔獣化させる力の、二つのコリョクがあるのか?
そんなことありえるのか?
ちくしょう……わかんねぇ。
そこらへんちゃんと聴いとくんだったな。
…………
……しかたねぇか。
本当は、あいつを置いてすぐに……
「後ろだヘイロンッ!」
「ッ!?」
自分の思考に意識を取られ、背後の敵に気づかなかった俺は、シャカラの声を聞いて反射的に身をよじるも、ガルダ族の攻撃を受けてしまう。
「ぐッ……!」
鋭い爪が、脇腹の鱗を剥がし、肉を割いていくのが分かった。
血が飛び散り、翼に付着する。
俺は、それを払い飛ばしながら敵から距離をとった。
「クソッ……!」
「馬鹿者! 何を油断しているのだ!」
シャカラからは、心配の声ではなく、罵倒の声が飛んでくる。
確かに……今のは俺が馬鹿だった。
こいつら相手に考え事しながら戦うなんて余裕ねぇのによ。
左の脇腹を触ると、生暖かい血と、砕かれた鱗の破片が手につく。
鱗に守られたな。
傷自体はそこまで深くない。
「聞いているのか! まぬけめが!!」
再び罵倒の声が横から聞こえてきた。
たく……少しは心配してくれてもいいだろうに……
「悪かった、もう油断しねぇよ」
一言そう言って、今一度俺は敵と対面する。
この際コリョクがどうとかはどうでもいい。
幸か不幸か、この魔獣化は、力は増すが、攻撃が一辺倒になってくれてるぶん、むしろやりやすいしな。
ありがたいことだぜ。
ただ、ヴィシュヌが魔獣化を操れるって事は、魔獣化した森の獣達も……
「グゥォォオオオ!!」
不安が頭をよぎるとほぼ同時に、獣の咆哮が森から聞こえてきた。
その咆哮の先を見なくとも、俺はそれがなんなのかすぐにわかった。
それでも俺は、反射的に首を向ける。
そして、そこにはやはり、魔獣化した獣の群れがいた。
やっぱりきたか。 でも残念だったな。
こっちは空を飛べる、お前達にできる事は何も……
いや、まてよ。
空を飛べないあいつらが、俺達に何もできないなんて事は、ヴィシュヌもわかってるはずだろ……!
てことは、あいつらの狙いは俺達じゃない……!
前方と背後から、ガルダ族が一匹づつ、近づいてくる。
俺は、背後から近づいてくる敵の攻撃を避け、片翼を右手で掴む。
その攻防の間に、前方から近づいて来ていたガルダ族が、太腿に噛み付いて来た。
「ぐぁッ!」
「グルルルゥゥ……!」
噛み付いて来たガルダ族は、狼の威嚇にも似た声を出しながら、肉を噛みちぎろうと、首を激しく動かす。
太腿から足先にかけて、生暖かい液体が伝う。
「この野郎……!!」
俺は、お返しだと言わんばかりに、噛み付いて来ているガルダ族に、右手で掴んでいるガルダ族を勢い良くぶつける。
「オラァ!!」
ガルダ族が離れていくのと同時に、ブチブチブチッ! という、肉の千切れる音が、痛みと共に身体を伝って来た。
「ガァッ……! ……ゥ!」
こんな痛み……気にしてる場合じゃねぇ……!
俺は、自分の尻尾に水を溜め、体制を崩して落ちていく二匹のガルダ族めがけて、水を纏った尾を強く振り抜く。
尾から離れた半月状の水は、達人によって磨き抜かれた、鋭利な刃物にも似ている。
風を斬り裂き、二匹のガルダ族を斬り裂き、地面に大きな亀裂をいれて、水刃はやっと止まる。
「はぁ……はぁ……ちくしょう……少し、手こずっちまったじゃねぇか」
倒れて動かなくなったガルダ族に向かってそう吐き捨ててから、先程の魔獣化した獣の群れへと目を向ける。
魔獣化した獣の群れは、こちらにはなんの興味を示さずに通り過ぎ、ジャダイへと向かって走っていくのが見えた。
やっぱりあいつらの狙いは俺達じゃねぇ!
魔獣達はジャダイに向かってやがる!
ご閲覧ありがとうございました!
何だかんだで、これからは大体二週間に一回投稿できればいいかな?って思っております。
慣れて来たらペースあげるかも?
……たぶん……
次回もよろしくお願いいたします!




