50話 竜族への疑い
〜〜ラルナside〜〜
部屋の扉を開けて外に出ると、直ぐ隣にダイルさんと一人の女性の召使いがいた。
「ラルナ様……」
扉から出てきた私に目をやると、ダイルさんは何かを確認するかのように呟いた。
「……」
それに、私は黙ったまま頷いて答える。
「では、行きましょう」
「ええ」
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私の部屋から、お母さんのいる王室まではそんなに遠く離れていない。
そのためもあってか……はたまたダイルさんがただ堅物なだけなのか……
王室の扉の前に着くまで、特に会話はなかった。
それが普通なのかもしれないけど……
ヘイロンといた時なんかは、移動中はいつも……
………
「……」
また……
「ラルナ様?」
扉の前で止まったままの私を見て、ダイルさんは小首をひねる。
「ご、ごめん。 大丈夫」
私はそう言って、両開きの扉に手を掛ける。
今はそんな事を考えてる場合じゃない。
ヴィシュヌの企みを阻止できるのは、私しかいないんだ。
今は、ヘイロンもリュカも……おじいさんだっていない。
私、一人なんだ。
手に力を入れて、扉を開く。
最初に目に映ったのは、黄金だった。
…………
王室の中は、多くの装飾品で飾られている。
金銀はもちろん、宝石だって当然のように使われているその装飾品達は、常識の少ない私でさえ高価な物なのだと理解できた。
私から見て左側の壁は一面ガラス張りで、国の一部の景色を覗くことができる。
そこから入ってくる外の光が、一層装飾品達を輝かせていた。
…………
そんな部屋の中央に、お母さんは座っていた。
「待ってたわ。 そこの腰掛けに座ってちょうだい」
そう言って、お母さんは自分の前にあるソファーを指差す。
「うん」
言われた通りに座る。
ついてきたダイルさんは、座らずに私の後ろで立ったまま待機している。
流石のダイルさんも、お母さんの前だと緊張しているのだろうか?
着ている鎧が僅かに揺れ、カタカタと音を立てていた。
でも……こんな事ぐらいで、緊張する?
「ラルナ」
「……ッ」
そんな疑問を抱いていると、お母さんが話しかけてきた。
「早速だけど、聞かせて欲しいの」
「……?」
聞かせて欲しい……?
いったいなにを?
「……私は、貴方が竜族にさらわれた理由を知ってる」
「……」
ヴィシュヌが関わってるんだ……
知ってても不思議じゃない。
「なにを言われて、竜族に協力してるのかはわからないけど、安心しなさい。 今ここに竜族はいないわ」
まるで、私が竜族に脅されて協力させられてるかのような言い方だ。
「もし来たとしても、今この国にはヴィシュヌ率いるガルダ族を使ったガルーダ部隊がある」
「ガルーダ部隊……!?」
「そう。 とても便利よ。 元々竜族に対抗するために作った部隊なのだけれど、今は反乱軍の抑止力にもなっているわ」
お母さんは微笑みながら語る。
なにを言って……
私は身を乗り出し、少し声を張る。
「ちょ、ちょっとまって! 反乱軍ってなによ! 私聞いてないわよ!」
「……」
お母さんの顔から、スッと微笑みが消えた。
「お父さんが……いいえ、今はラルと呼びましょうか。 ヴィシュヌと協力して作ったガルーダ部隊……その私達の政策を良しとしない軍が現れたの。 反王宮軍……それを率いてるのがラルよ」
「……」
国の中でもきっと割れたんだ……
さっきダイルさんが言ってた事件……あの事件がもしヴィシュヌが仕込んでおいてあった物だったなら、協力するのは危険だと考えるのが普通……
「……」
でも多分……それがきっかけじゃない……
私は、僅かに震える唇を動かす。
「そんなの、あたりまえでしょう……」
「……」
「きっと、ヴィシュヌと協力してガルーダ部隊を作るだけなら、国は割れなかったよ。
……問題なのは、その次……」
「……」
「国のみんなを脅すなんてどうかしてる」
そもそも……そう。
ヴィシュヌとの協力自体ダメなんだ……!
私は、続けて口を開く。
「……ヴィシュヌは多分、お母さんを騙してる」
「……」
「元々、竜族が私を攫ったのはヴィシュヌの所為なの。 ヴィシュヌが竜族を滅ぼそうとしてるから、竜族が私に力を借りようとして、それで……」
「そう……」
最後まで話す前に、お母さんは口を挟んだ。
「可哀想に……貴方はそうやって騙されていたのね」
「ッ! 違うよ! 騙されてるんじゃなくて! 本当に……」
「そんな事、信じられると思う? 力を借りるのなら、言葉で頼めばいいじゃない。 でも、そうじゃないでしょ? 竜族は、貴方を攫ったのよ」
子供を諭すかのような口調に、沸々と怒りがこみ上がる。
「あの時! そんな状況じゃなかったでしょ!」
こみ上げる怒りを乗せて放った言葉に、お母さんは静かに答える。
「百歩譲ってそうだったとしましょう。
……じゃあ貴方は、どうしてここにいるの?」
「……!! それは……」
言われた途端、言葉につまり、声が出なくなる。
……それは……
…………
「……」
なにも言えなくなった私を、お母さんはジッと見つめてくる。
その視線に耐えられず、私は目をそらす。
ご閲覧ありがとうございます!
まだわからないですが、GWはちょっと連投するかも?
次回もよろしくお願いいたします!




