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4話 人狼リュカ・オーン

~~ヘイロンside~~


朝


俺は鳥の鳴き声を聞き、目を覚ました。


……そうか、朝はお前らの餌場だもんな。 ここ。


俺は、腕にくっつくようにして寝ているラルナを起こさないよう、体を起こす。

そして、伸びをした後、周りを見渡した。


人間には見つかって無いみたいだな。

こんな開けた場所じゃ見つかるかも知れないと思ったが、余計な心配だったか。


さて朝食はどうするか……


目の端に鳥が映る。


……まぁ、バレなきゃあいつも嫌がらねーだろ。


俺は手早く鳥を何匹か狩り、適当に木をへし折る。


こうやって人間のために火を起こすなんて、あいつと一緒にいたとき以来だな……


爪と爪とを擦り合わせ、火花を散らし、火をつける。

そして、鳥の肉を雑に切り分け木の枝にさし、火の近くに置いた。


あいつはちっこいし、一匹分ぐらいで十分だろ。


俺はそう思い、一匹を残し他を全て口に放り込んだ。


……足りんな……まぁ、今は我慢するか。


「もう……朝からドスンドスンなんなの……」


「お……?……姫のお目覚めか?」


俺は小馬鹿にするように、寝ているラルナにそう言ってやった。


「その呼び方止めてくれるかな……私には、しっかりとしたラルナって名前があるの」


ラルナはそう言って、目を擦りながらゆっくりと起きあがる。


「なにやってるの?」


「飯を作ってんだよ」


「ヘぇ~、竜もこうやって料理するんだ」


「しねーよ!」


「え?」


「お前のために作ってんだよ!……めんどくせーな」


「……ありがとう」


「はぁ?!」


「な、なんでもない!」


そう言って、ラルナはそっぽを向いた。


はぁ……なんで俺がこんな事を……


「ねぇ」


「あ? なんだよ」


「これ取ってよ……」


そう言ってラルナは焼いている鳥の肉を指差した。


「ああ、忘れてた。ちょっと待ってろ」


俺は、指先で肉を刺した枝をつまみ、ラルナの近くに置く。


「……」


ラルナはそれに、静かにかぶりつく。


「……臭い」


「知らん。 あるだけマシだと思え」


ラルナの感想に、俺はそう言い返す。


さて、この後巣を作る訳だが……どこに作るか。


俺は周りをゆっくり見渡し、巣をどこに作ろうかを考えた。


その時だった。


後ろから、小枝を踏み折る音が聞こえてきた。


「誰だ!!」


まずい!ここでみつかったら噂になっちまう!


「出てこい!今素直に出てきたら見逃してやる!」


嘘だけどな……とりあえずどうする……殺すか? いやダメだろそれは。 ならどうする?


「ゆ、許して! お願い!」


そう言いながら、薄汚い服を着た少年が、木の後ろから両手を上げて出てきた。


歳はラルナと同じ位か?


「ヘイロン……」


「分かってる。 殺したりなんかしねぇよ」


面倒くさくなってきたな畜生 ……どうするか……


少年の後ろで、一瞬フワフワした尻尾のような物が顔を覗かせる。


……ん? あれは……


俺はそれが気になり、少年の後ろへと回り込む。


「ヒッ!」


「そんな怖がるなよ。 食ったりしねーから」


俺はそう言って、もう一度その少年の後ろ姿を見る。


やっぱりな……


少年のズボンからは予想通り、狼の尻尾が出てきていた。


「……お前、人狼か」


「じ、人狼?! それって、人が狼になったりする奴のこと?」


ラルナは驚き、少年を見た。


「ああ。 で、どうなんだ?」


「……な、なんでわかったの?……」


「まぁ後ろの尻尾で確信したんだが、今思えばお前からは人の匂いがしないしな。 異常に臭い」


「…………」


「あと汚い。だいたい、この近くには人の住んでる場所なんか……」


最後まで言う前に、ラルナが俺の足の指を蹴ってきた。


「いたッ! 何すんだこのやろう!」


そう言って顔を近づけると、小声でラルナが喋りかけてきた。


「ちょっとヘイロン言い過ぎ……! 彼泣いてるよ……! 目尻にすごい涙溜めてるよ……!」


少年の顔を見ると、目の端に水が溜まっていた。


「わ、悪い! 別にそういうつもりで……」


俺は急いで弁解をしようとしたが……


「い、いいよ……僕、どうせ臭いし汚いから……」


既にその人狼は尻尾を下げ、完全にいじけてしまっていた……


「ちょっと! どうするのよ!」


「どうするったってなぁ……」


俺達はいじけた人狼にたいしてどう対応すればいいかわからず、最初とは違う意味で慌て始めた。


そもそも、人狼自体が珍しい種族なのに……

いじけた人狼のあやし方なんて知るかよ……


「いや~でも、人狼ってなんかカッコいいよね~。 私好きかも~」


俺がどう対処するか考えていると、ラルナが急に人狼を煽て始めた。


なるほど……! 褒めていく作戦だな!


「本当だな! なんていうか……選ばれし人間って言うか? 狼か?」


「本当に!? 本当に!?」


さっきまでいじけていた人狼は、まるで別人の様になり、尻尾をブンブンと振り回してそう言った。


うわ……こいつスゲーわかりやすいな……


「ごめんね! 二人共! もっと凶悪な人かなと思ってたけど!スッゴイ!いい人と竜だね!」


「そ、そうか?」


逆にやりづらいが……まぁさっきよりはマシか。


「俺はヘイロンだ」


「私はナーガ・ラルナ」


「僕はリュカ・オーン!よろしくね!」


俺達が挨拶を交わすと、リュカも元気よく返してきた。


「うん、よろしく。それで、まぁ……わかると思うけど、私達の事喋らないでいて欲しいんだけど」


ラルナは、子供を相手にする様にリュカに話しかける。


「ああ、それなら大丈夫! 僕は人間じゃないから普段はそっちには行かないんだ。 たまに服を盗んだりするけどね」


今盗んだりって……まぁいいか……


「なら安心した、もういっていいぞ」


「えぇ……」


俺がそう言うと、リュカは残念そうに声をだす。


「えぇっていわれてもな」


「だって……久しぶりに話せる人と竜に会ったのに……」


人狼は基本群れを作ったりしないと聞いたが、こんなに若いうちから一人で暮らすのか……


「ねぇ、ヘイロン。 リュカも一緒に私達と暮らせないの?」


「まためんどくさい事を言いだすなお前は……」


「だって……可哀想じゃん……」


……可哀想……か……


俺はリュカの姿を見て、昔の自分を重ねる。


…………


「…………まぁ、お前よりかはしっかりしているみたいだしな。 リュカが良ければ良いんじゃないか」


「……軽く私を馬鹿にしたでしょ……今」


「ホントォ!?」


「ああ。 ただし! お前も俺達と暮らすなら色々協力してもらうからな」


「わかった! 何すれば良いの!」


急にきたなぁ……どうするか……巣は俺一人で作るつもりだったから手伝って欲しいことはないし……


「あ! じゃあ町に行って服を盗んできて!」


何を手伝って貰おうか迷っていると、ラルナが先に口を開いた。


「服? その服嫌なのか?」


「嫌じゃないけど、歩きにくいのよこの服」


「なるほどな」


「わかった! じゃあいってくる!」


そう言ってリュカは、完全な狼の姿になり森の中に消えていった。


「あの子……見た目と精神年齢が噛み合ってないよね……」


「俺もそう思う……さて、家作り始めるか」


「うん! で、どうするの? 木でも切るの?」


「アホか! お前が思ってるような家は作らんからな! あくまで、竜の巣だからな!」


「わ、わかってるよ……」


俺は周りを見渡して、どこに巣を作るか探す。


あんまり離れると、あいつが帰って来れなくなるしな。

かといってこんなに開けてる所には……


そう思いながら左側に首を向けると、少し遠い所に巨大な崖を見つけた。


あれでいいか。


「よし、あれにするぞ」


「はぁ!?」


「はぁ!? じゃねぇよ!」


「いや……だって私、王竜のお爺さんみたいなの想像してたから……」


「俺だってそこに行きたいさ」


「え? あるの?」


「ああ、海の中にな」


俺はラルナに顔を近づけてそう言う。


「ごめんなさいね! 海に行けなくて!」


そう言いながらラルナは、俺の顎を蹴ってきた。


「いでぇ! お前! そのすぐ手を出す癖どうにかしやがれ!」


「手じゃないし! 足だし!」


……こいつッ! ああ言えばこう言いやがって……まぁいい。


俺は、ラルナに背を向けてしゃがむ。

ラルナもそれを察して、背中に登ってきた。

そして、俺の両角に手を掛ける。


「よし、いくぞ」


俺は軽くジャンプをして2、3回羽ばたいて前に進んだ。 目的地は少し遠いだけで、目で見える範囲であったため、あっという間についた。


「よし、降りろ」


俺はそう言って伏せをして頭を地面につける。

頭からラルナの体重が感じられなくなったのを確認したら、俺は頭を地面から離した。


「で、どうするの?」


「横から穴を掘る」


「どうやって?」


「手」


「無理だよ」


「お前はな、俺はしばらく掘ってるからお前は……」


「じゃあ、なんか役立ちそうなもの拾ってくるね」


「ああ、そうしてくれ」


よしうるさい奴は消えた。 さっさと掘っちまうか。


そう思い、俺は早速両手で崖を壊さないように削りとり始めた。

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